本年で30年目を迎える「NEW EDUCATION EXPO 2025」が6月5～7日に東京都内で、6月13・14日に大阪市内で、サテライト会場として札幌、仙台、名古屋、福岡で開催。本年のテーマは「学びの未来を、共に拓く。」。次期学習指導要領や新しい学びについてのセミナーが開催され、100社以上の教育関連企業が学習環境や教材を提案した。
東京会場初日は、フューチャークラスルームにおいて北海道初のZEB Ready認証（※）を受けた義務教育学校である中富良野町立なかふらの学園の新校舎設置に至る経緯と同校の環境について、北海道中富良野町教育委員会の三谷和生課長補佐と同企画課の高橋純参事が報告した。
なかふらの学園は2026年8月に開校。子供たちは2学期から新しい環境で学習する。
※ZEB Ready認証＝省エネ技術を活用して、設計段階での年間の一次エネルギー消費量を50％以上削減した非住宅建築物。本認証は環境省補助金事業の応募要件
省エネ効率を考慮した小中一貫校「なかふらの学園」を開校
中富良野町教育委員会では既存の小中学校が新耐震基準をクリアしていたこともあり、建築以来改築・改修なく40年間が経過。古く寒い校舎の改築は議会でも課題になっており2019年度、学校関係者やPTAが集まり協議がスタート。
2025年度までに建て替える方針で町議会に了承を得た。それに伴い、当時6校あった小学校のうち5校を閉校。
中学校のグラウンドに9年制の義務教育学校を新たに建設する「なかふらの構想」通称Nプロが始まった。
20年以上前からある教育理念「こころ豊かに学び明日のふるさとをともに創る人を育む」を引き継ぎ、Nプロの目標を「創る人」とした。
新校舎は、夏は涼しく冬は暖かい、かつランニングコスト低減に向けた環境に優しい校舎を目指し、高断熱高気密で建物そのものが蓄熱するようにする、太陽光発電パネルは南面と東面の壁に設置し冬季はグラウンドの積雪の反射を利用できるようにするなど工夫を凝らした。
小中学校それぞれを建設するのではなく1校分を中学校の現グラウンドに建設することで仮設校舎や小中学校2校分の建築が不要となりコスト減につながった。
さらに工期に着手する2023年度には「ZEB ready」及び「エコスクール」「BELS（建築物省エネルギー性能表示制度）」の認定を受け、環境省の補助金を利用。
本補助金では毎年計測データを提出する必要があることから、中央監視制御システム（内田洋行）も導入。
本システムにより空調・照明・太陽光発電など建物全体のエネルギーを最適に制御。スマートフォンによる遠隔管理やエネルギー使用状況を可視化でき、学習教材としても利用できる。
職員室をフリーアドレスに（イメージ）
このほかガラス張りの多目的ホールや北向きの優しい自然光の採光、幅広の階段はベンチとして利用でき、教室の大きさは可変しやすくするなど50年先を見据えた学校作りに取り組んだ。
黒板はホワイトボードとしてプロジェクターを直接投影できる。体育館や特別教室の中央にはプレイコートを設置。学習活動と組み合わせやすくした。
図書館は学校統合で図書が増えたことから公共図書館と同一のシステムで管理。書架を低くして開放的な空間とした。
教室に入ることに課題がある児童生徒のためのオープンスペースも確保。
職員室（校務センター）はフリーアドレスで現状の書類等の約8割程度が収納できる個人ロッカーを設置した。
50年前に保護者が植林した学校林を新校舎に利用。さらに50年後に思いを届けたいと考えて学校林の木材を用いたレリーフの製作などを進行中だ。
教育委員会は「固定概念にとらわれず未来を生きる児童生徒のために何が必要であるかを考え判断・実行していくことが重要」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号
