公財・スプリックス教育財団は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施。第6回報告となる今回は、保護者の『子供観』と『将来への期待』の国際比較に焦点を当てた。
「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問に対し、各国の保護者に表1の11の選択肢から、当てはまるものをすべて選んでもらった。
表1. 「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問の11の選択肢
日本の保護者にとって子供は「喜び」(90%)であるという回答が他国より多く、次いで「かすがい」(32%)「心配の種」(26%)と『感情的な関係』を強く認識する回答が続く。一方で、他国の保護者にとって子供は「喜び」(67%)に次いで「社会貢献」(45%)「自立」(44%)が多く、日本と比べて『社会的役割』への期待が強い傾向にある。
「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか。」という質問に対し、各国の保護者に表2の11の選択肢から、当てはまるものを３つまで選んでもらった。
表2. 「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」という質問の11の選択肢
日本の保護者は子供の将来に「自分の考えをしっかり持つ」（68%）を最も期待しており、次いで「家族を大切に」（58%）「他人に迷惑をかけない」（46%）「友人を大切に」(38%)といった『身近な人間関係』を重視する回答が続く。他国の保護者は「家族を大切にする人」(46%)を最も重視しているものの、「経済的に豊か」(41%)「社会のために尽くす」(35%)といった『社会的・経済的な成功』を期待する回答が多い傾向にある。
では、保護者の『子供観』と『将来への期待』はどのような関係にあるのか。調査対象11カ国で、『子供観』と『将来への期待』でそれぞれ回答が多かった上位２つを表3にまとめた。
日本は「親の喜び」や「家族のつながり」といった身近な幸せを認識することで、個人の考えや身近な人間関係を重視する傾向がある。一方の他国は「独立した存在」で「将来の社会の一員」といった役割期待を認識することで、経済的な成功や社会貢献を重視する傾向につながっていると考えられる。このように、『子供観』と『将来への期待』は明確に一貫性を持っていることが示された。
今回の調査により、11カ国調査においても国ごとに傾向が異なり、保護者の『子供観』と『将来への期待』が一貫性を持っていることが確認された。
例えば、日本の保護者にとっては、子供の存在の意味は「親の喜びであり、家族の絆であり、心配の種」である。このような『子供観』を持つ日本の保護者は、子供に将来「自分の考えをしっかり持ち、他人に迷惑をかけずに家族や友人を大切にする」ことを期待する。親子関係や友人関係といった『つながり』を大切にする価値観が両者に強く反映されている。対照的に他国10カ国の保護者は、子供を「親の喜びであるが、子供は独立した存在であり、将来の社会の担い手である」と認識する傾向が強く、それが「家族を大切にし、社会のために尽くして経済的に豊かになる」ことへの期待の高さにつながっていると考えられる。
こうした『子供観』と『将来への期待』の違いは、子供の学習動機づけにも影響を与えている可能性がある。例えば、日本では「友達が塾に通っているから行く」「友達がやめたから私もやめる」といった、身近な人間関係に基づく学習行動が見られることがあるが、これは保護者の価値観が反映された結果かもしれない。一方、他国では『家族の期待に応える』『社会的地位を獲得する』といった目標が学習の動機になりやすいと推察される。こうした違いを理解することは、各国の文脈に適した教育環境を考える上で重要な視点となるだろう。
▶︎調査の詳細はこちら。日本以外の各国の回答率も掲載している。
