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視覚障害者が抱えるさまざまな課題を最新テクノロジーで解決~第1回「VISI-ONEアクセラレータープログラム」

2022年10月20日

MRやAIなどの最新テクノロジーを活用して、視覚障害に関わる様々な課題を解決する事業アイデアを募集する第1回「VISI-ONEアクセラレータープログラム」を参天製薬、日本ブラインドサッカー協会、インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーションの3者の主催で実施。10月14日(金)に行われたデモデイではプログラムに採択された6社による事業アイデアのプレゼンが行われた。

プレゼンを行った6社の代表(前列)と審査員(後列)


■視覚障害に関わる6つの壁を溶かす

VISIONEアクセラレータープログラムは「オンラインの壁」「オフラインの壁」「能力の壁」「働き方の壁」「つながりの壁」「思いがけない壁」の視覚障害に関わる6つの壁を溶かす新規事業を創出支援することが目的。20222月から4月にかけて企業や団体からアイデアを募集した。

 


■6社がプレゼンで実証の成果を発表

そこで採択されたAshiraseGATARI、クラスリー、コンピュータサイエンス研究所、MAMORIO、リンクスの6社が実証活動を行い、デモデイにおいてコンセプト実証の成果を発表した。今後、6社の製品は社会実装に向けて展開が図られる。各社がプレゼンで発表した内容は以下の通り。

 


【Ashirase/歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」】

視覚障害者の行動範囲拡大に向けて、靴に取り付けたデバイスを振動させることで単独歩行をサポートするシステム「あしらせ」を開発。視覚障害者が歩行する際は、安全面に最大限の注意を払っているが、道を外れて側溝に落ちるなどの事故が後を絶たない。そこでルートの確認を「あしらせ」が直感的に行うことで視覚障害者が安全面に集中できるようにした。

スマートフォンから目的地を音声入力すると、GPSなどを利用して経路を検索。曲がり角までの距離などを音声ではなく右折なら右足が振動して知らせてくれる。旅行前に「あしらせ」を貸し出し、帰還後に返却するサービスを実施するため、実証実験では視覚障害者が「あしらせ」を1人で使いこなすことができるかを確認。チュートリアルアプリと説明動画で使用方法を確認することで、数日間の練習で違和感なく使えることが実証された。

 


【GATARI/MRプラットフォーム「Auris(オーリス)」】

従来のアナログな看板は多言語対応にすると情報過多になるという課題があったが、MRを活用したデジタルな看板ならば、その人に限定した情報を提供することができる。MRプラットフォーム「Auris」はリアルな空間にさまざまなデジタル情報を保存して表示が可能。すでに博物館やテーマパークでの導入が進んでいる。

Auris」は事前にアプリに取り込まれた施設のデータを活用。施設内でスマートフォンのカメラを空中にかざすと自身の位置を高精度で測定。体の向きや対象物からの距離に応じて、あらかじめ空間に配置された音声コンテンツを聞くことができる。実証実験では都内の複合施設でフィールドワークを実施した。

当初は「安全に正しく目的地に着く」ための情報が最優先と捉えていたが、視覚障害者は移動の中で新しい情報との出会いを求めていることが分かった。そこで、商業施設などで初めての店でも不安を感じることなく入れるように「Auris」から音声情報を提供していく。

 


【クラスリー/音声読み上げソフト「Alterly(オルタリー)」】

AIを活用し、テキスト原稿を人間に近い精度で読み上げるソフト「Alterly」を開発。テレビ番組などのナレーションを制作する際は、多くの時間と手間を要するが、合成音声AI技術を活用すれば課題が解決できると考えた。

Alterly」はナレーターの収録音声を機械学習させて、テキストから声を再現できるAIオルターを生み出す。AIオルターは原稿を人の声と変わらない、自然な音声で読み上げ、音声ファイルを生成する。音声ファイルは管理画面から作成し、動画制作やアプリ開発に利用できる。

視覚障害者に向けた本の朗読ボランティアなどは音声化が進められているが人手不足という課題を抱えている。そこで「Alterly」の技術を活用することで音声化も急速に進むことが予測される。今後、「Alterly」はオーディオブックやAIアナウンサーなど音声を必要とする領域へ展開していく。

 


【コンピュータサイエンス研究所/視覚障害者歩行支援アプリ「EyeNavvi(アイナビ)】

視覚障害者歩行支援アプリ「EyeNavi」は歩行者用の経路情報をベースに、GPSを使って利用者の現在地を把握。右折や左折、交差点の場所などを音声で伝え、初めての道でも援助者無しで目的地に到着できるようガイドする。利用者はiPhoneを首から下げて使用。iPhoneのカメラが撮影した周囲の画像をAIで解析し、歩行者信号の色や点字ブロック、障害物などの情報をリアルタイムで知らせてくれる。

実証実験では「東京駅から丸の内エリアのビルに移動」、「ビルの入口から施設内の店舗に移動」、「店舗で商品を購入する」の3つのゴールを設定。屋内での移動はGPSに頼ることができないため、建物の出入口にビーコンを3つ設置することでクリアした。ただし、全ての施設にビーコンを設置するのは非現実的であるため、新たな方法を検討する必要がある。

 


【MAMMORIO/忘れ物防止タグを活用した自動販売機の場所探知&購入のナビゲート】

「忘れ物防止タグ」が発信する電波を検知する機能を活用することで、視覚障害者が自動販売機の場所を探知し、飲料を購入するまでをナビゲートするスマートフォンアプリを開発した。視覚障害者にとって自動販売機で飲料を購入することは、自動販売機の設置場所を見つけるだけでなく、どのような飲料が販売されているかも分からないため困難を極める。そのため視覚障害者は自動販売機での購入を諦め、スーパーやコンビニなどで飲料を買うことになる。

そこで自動販売機に電波発信機(ビーコン)を設置。近づくとアプリが連動し、近くに自動販売機があることを音声だけでなく、バイブレーションでも通知。さらに、自動販売機に近づくと、販売されている飲料をアプリが読み上げてくれるシステムとなっている。実証実験では日本コカ・コーラのCoke onという仕組みを活用。全国に約42万台設置されているCoke on対応自動販売機の電波をアプリが感知し、商品を購入できるようにした。今後は飲料メーカーの協力を得て、2023年までの商用化が目指される。

 


【リンクス/視覚障害者移動支援アプリ「shikAI(シカイ)」】

視覚障害者の移動のしにくさの解消に向けてiPhone用のアプリ「shikAI(シカイ)」を開発。点字ブロックとQRコードを組み合わせることで点字ブロックをDX化する。iPhoneのカメラで点字ブロックに貼られたQRコードを読み取ることで「右10メートル」「前方に下り階段です、15段降ります」などの音声が読み上げられ、道案内や駅構内情報を伝達。これにより利用者を安全に目的地まで誘導する。

視覚障害者からの「もっと気軽に一人歩きしたい」という声に応えるために開発。「shikAI」を使うことで音声が目的地まで案内してくれるので迷うことなくスムーズに移動が可能となる。現在、東京メトロの9駅の点字ブロックに「shikAI」に対応したQRコードを設置。また、豊島区の区役所や図書館でも利用できる。実証実験に協力した人からは「横にガイドかヘルパーにでも付き添ってもらっているような感じだった」との声も寄せられている。

 


<審査結果>


「Business Innovation Award」受賞企業

アイデアの独自性や新規性、短期間での成長性と社会実装への実現性を審査基準とする

受賞企業:Ashirase(栃木県宇都宮市)

代表者名:代表取締役 CEO 千野歩

事業案: 靴に挿入するデバイスで行き先を知らせる歩行ナビゲーションシステム。音声ではなく振動で情報を伝えるナビゲーション「あしらせ」を使用して充実した旅・移動ができる仕組みを発表。

受賞コメント: 今回の受賞は、「社会実装」の可能性を高く評価していただいた結果だと捉えています。「社会福祉」をテーマとした事業は、事業化が困難というイメージがありますが、Ashirase がその認識を打破するきっかけになれば嬉しいです。

 


「Social Innovation Award」受賞企業

視覚障害に関する課題への理解および、中長期的な視点からの共生社会の実現性を審査基準とする

受賞企業:GATARI(東京都千代田区)

代表者名:代表取締役 CEO 竹下俊一

事業案:MR(複合現実)技術を活用し、位置情報を自動で取得し音声が流れることで、音声と現実が融合しているかのような体験システムを発表。

受賞コメント:このプログラムを通じ、視覚障害者の方々との密なコミュニケーションの機会を得て、社会課題解決に向けて、新たな取り組みに挑むことができました。今回の挑戦がより社会をインクルーシブな形に進歩、加速させることにつながればと思います。

 

1回 「VISI-ONE(ビジワン)アクセラレータープログラム」 デモデイ

 

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