本誌6月22日号で受賞者を紹介した「第6回情報活用授業コンクール」(主催=公社・全国学校図書館協議会)の受賞者発表会と表彰式が8月25日、東京・千代田区の日本出版クラブで開催された。受賞した群馬県・ぐんま国際アカデミー初等部(優秀賞・キハラ賞)、東京都杉並区立松渓中学校(優秀賞)の受賞者発表を紹介する。

受賞者の皆さん。写真右のブックトラックはキハラ賞受賞校に贈られる

受賞者発表会は今回初めて一般向けに公開された。写真はぐんま国際アカデミー初等部の渡邉学校司書の発表
ぐんま国際アカデミー初等部は2005年に開校。英語イマージョン教育が大きな特徴だ。
渡邉佳代学校司書は優秀賞を受賞した小学校5年生の実践「国語科-終戦記念日の新聞を活用した情報の読み比べ」を紹介した。戦後80年を迎えた2025年、終戦記念日の8月15日に発行された新聞を収集し、学校図書館から教科学習へとつなげるNIEの取組だ。
同校では学校図書館と図書の利用が活発であるものの、多様な情報源を比較する経験が不足しているという課題があった。
そこで同一日(8月15日)に発行された複数の新聞を比較することで、発信主体や地域性による報道内容の違いに気づき、情報を比較・解釈しながら自分の考えを形成する「情報活用能力」の育成を目指した。渡邉学校司書が日本新聞協会(ニュースパーク)の研修会に参加し、同協会が提供する教材(新博キット)からこの実践の着想を得たという。
新聞の収集に際しては図書館だよりではなく家庭への一斉メールで保護者に呼びかけたこともあり、全学年の児童・保護者、さらに教職員も協力。全国19都道府県から全国紙90紙、32都道府県から地方紙131紙、7か国から海外紙17紙の計238紙が集まった。
9月には小学校5年生の国語科で「新聞を読もう」「たずねびと」の単元と関連付け、全国紙と地方紙を読み比べる授業を実施。児童は見出しや写真等の違いに気づき、地域に根差した戦争の記憶を知ることで、知識としてだけでなく実感を持って受け止めていた。
また新聞の収集をきっかけに、他の学年でも家庭で新聞や戦争について話す機会が生まれるなど、さまざまな成果が見られた。外国籍の教員からは戦争当時の話を祖父母が話してくれた、といった声も。学校図書館が本だけでなく多様な情報を扱う「学びの場」であることも共有できたという。一方、社会科で戦争の歴史を学ぶのは6年生のため、終戦記念日の記事は難しい、という課題も分かり「読解を支える資料や問いの工夫が必要」と話す。
集まった新聞は学校図書館内に展示した。児童が自分が提供した新聞を見つけて喜ぶなど、大きな反響があったという。

河原井学校司書
杉並区立松渓中学校は、1年の国語科と社会科の2つの実践で優秀賞を受賞した。今回河原井一紗学校司書が紹介したのは、社会科「武士政権のもとでどのような文化が誕生したか(鎌倉文化レポート)」全4時間の授業で、12月~1月に行った。
事前に授業者である社会科教員の水谷陽子氏と河原井学校司書がそれぞれ持っている生徒の実態と課題を共有し、今回は資料を極力「図書資料」だけとし、情報の信頼性、参考文献記述の定着、複数資料活用のメリットに気づくことを重点とした。
第1、2時には学校図書館で生徒はテーマ設定、情報収集・整理、参考文献の記述やまとめ方に取り組み、冬休み期間に追加調査し、レポート(パワーポイント)を作成。冬休み明けの第3時にクラス内で生徒が互いにレポートを鑑賞し、良い点などをワークシートにまとめ、ロイロノートで共有した。
このタイミングで授業者と学校司書は全レポートを鑑賞。生徒のレポートの完成度が高かったことから‘生徒個々に探究プロセスのコツがあるのではないか’と考えたという。そこで特に情報活用能力が定着していると思われる生徒(推薦者)を選出。推薦者に対し、授業者はワークシートを考案し①テーマの決め方、②参考文献の探し方、③計画の立て方の3点について、生徒自身が探究のプロセスを振り返り、探究のコツを可視化・言語化できるようにした。
第4時の発表会では推薦者がレポートの解説に加え、ワークシートに基づき自分の「探究のコツ」をクラス全体に共有した。他の生徒からは、「自分と比較することで、課題が見つかった」などの反響があった。
同校では「学校図書館運営委員会」など組織体制が整えられており、普段から授業者と学校司書のコミュニケーションが図られている。河原井学校司書は本実践の背景として、常に授業者から学校司書に密な情報提供があったことで「学校司書は必要な支援を必要なタイミングで的確に提供できたのではないか」と話す。今後は「探究のコツの可視化と共有」の仕組みを他教科や他学年に拡大することを目指す。
<コンクール情報>
次回の「第7回情報活用授業コンクール」の応募期間は2027年2月1日~4月5日(当日消印有効)。
全国SLAは募集要項と「授業実践ヒント集」をWebで公開中。
▼応募要項
https://www.j-sla.or.jp/contest/jouhoukatsuyou/jouhoukatsuyoujugyou7.html
▼授業実践ヒント集
https://www.j-sla.or.jp/material/achievement/post-262.html
<新博キットを提供中>「戦後80年」も
ニュースパーク(日本新聞博物館)は、小・中・高等学校向けの授業で使える貸出用の新聞記事などのセットを作成、「新聞博物館学習キット<新博(しんぱく)キット>」として無償提供している(申込者は送料のみ負担)。キットは「全国の新聞各紙」「防災」など様々なテーマがある。昨年「戦後80年」に関連する新聞記事のセットを新たに作成した。
問合せ=045・661・2040
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年9月28日号掲載