Classroom Adventureは、総務省「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」に採択された「偽・誤情報サンドボックスを活用した実践的ゲーム型プレバンキング技術の開発・実証」において、中間成果となる実証実験を実践女子学園中学校の3年生を対象に実施。生成AIを活用した「能動的プレバンキング」手法が、体験者の偽情報・誤情報に対する識別能力を有意に向上させることが定量的に確認されたと報告した。

生成AIの普及により、誰もが高度な偽・誤情報を作成可能となった現在、情報の真偽を目視で判定することは困難になりつつある。この状況下において、従来の「事後的なファクトチェック」に加え、偽情報に接触する前に認知的な抗体を形成する「プレバンキング(Prebunking)」の重要性が高まっている。本事業では、生成AIのフェイク情報を安全な環境で作り出すサンドボックスを中心とした技術開発・実証を行った。
【目的】
ユーザーが安全な仮想環境(サンドボックス)内で、生成AIを用いて擬似的な偽情報を作成・検証する体験を通じ、偽情報の生成プロセスや拡散のメカニズムを構造的に理解させる。
【技術的特徴】
「受動的」に知識を得るのではなく、自らが「作成者」の視点に立つ「能動的プレバンキング」を採用し、より強固な情報リテラシー(認知的免疫)の獲得を目指す。
開発したプロトタイプ(α版)を用い、教育現場における実証実験を行った。
【実施概要対象】
実践女子学園中学校 3年生 38人
【実施時期】
2025年11月28日(プログラム期間中)
【検証内容】
※信頼スコア:各情報に対して「どの程度本物だと思うか」を 1〜7 の7段階で評価した指標。1に近いほど「まったく信頼できない」、7に近いほど「とても信頼できる」と判断したことを意味する。フェイク情報では信頼スコアが低いほど「見抜けている」状態、本物の情報では高いほど望ましい状態として扱った。
今回の授業では、「偽・誤情報サンドボックス」を用いて、3パターンの“よくあるだまし方”を体験・分析した。
投資家や政治家などの著名人の顔を、AIの「FaceSwap(顔差し替え)」技術で広告画像に合成し、あたかも本人が商品や投資案件を宣伝しているように見せかける手口。
実際には本人や公式サービスとは一切関係がないにもかかわらず、「有名人が勧めているなら安心だ」と思わせて信頼を獲得し、投資詐欺や個人情報の取得につなげようとする仕組みを学んだ。
寄付サイトや有名ブランドの公式オンラインストアにそっくりな偽サイトを作り、ロゴやレイアウト、商品画像を真似して本物と誤認させる手口。URLのドメインの違い、問い合わせ先や日本語表現の不自然さ、公式サイトとのレイアウトの差などから「本物かどうか」を見極めるポイントを学んだ。
生成AIで作った災害写真や群衆写真など、一見もっともらしい画像を「実際のニュース写真」のように見せかける手口。建物や手足の形、光と影の向き、水面や看板の反射など、AI画像特有の不自然さに注目し、 他のニュースや公的機関の発表と照らし合わせて真偽を確かめる方法を学んだ。
参加者に対し、本物1件とフェイク3件(なりすまし、ものまねサイト、AI生成画像)を提示し、それぞれの「信頼度(1:全く信頼しない 〜 7:とても信頼できる)」を測定した。
【結果要旨】
体験後、すべてのカテゴリーにおいて信頼スコアの有意な低下(=見抜く力の向上)が確認された。特にAI生成画像に対する信頼スコアの変化が顕著となった。

個人レベルで見ると、フェイクニュースに対する信頼スコアが向上した生徒は全体の約55%。特に AI生成画像については、7割超(71.4%)の生徒で信頼スコアが改善した。(AI生成画像:信頼スコアが向上した生徒 25人/35人中)
アンケートでは、プログラムそのものの体験価値についても評価を行った。

サンドボックス型のフェイクニュース教材として、「楽しく学べる」「現実のSNS利用にも役立ちそうだ」と感じる生徒が多く、学習コンテンツとしての受容性・満足度が非常に高いことが分かった。
総務省「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」