ベネッセ教育総合研究所は12月18日、子供が幸せを実感できる環境をどのように築いていくかを考えるために、親子の幸せについて考えるデータをまとめ、公表した。
今回のデータは、小1～高3まで12学年の約2万組の親子の意識・行動の変化を、2015年から継続して追っている調査「子どもの生活と学びに関する親子調査」（東京大学社会科学研究所との共同プロジェクト）の調査結果を新たに分析したもの。結果からは、親子の「幸せ実感」が相互に関連していること、家族関係は子供にとって幸せの基盤であること、親が幸せを実感するためには親自身の生活の充実が重要であることなどがわかった。
親子の幸せ実感の状況を確認したところ、子供は「とても幸せ」が32.6%、「まあ幸せ」が52.5%、「幸せではない」が14.9%、保護者は「とても幸せ」が30.9%、「まあ幸せ」が58.3%、「幸せではない」が10.9%となり、いずれも3割が「とても幸せ」という実感をもっている。
次に親子の幸せ実感の関連をみたところ、「とても幸せ」と回答した保護者の子供は46.6%が「とても幸せ」と回答しており、「幸せではない」は10.0%しかいない。これに対して、「幸せではない」保護者の子供は「とても幸せ」が17.6%にとどまり、31.6%が「幸せではない」と回答した。親子の幸せ実感には関連がみられる。
同じ子供・保護者を6年間追跡した結果で見たところ、保護者の幸せ実感は3年後の子供の幸せ実感に、子供の幸せ実感は3年後の保護者の幸せ実感に影響していることがわかった。親子の幸せは相互に影響しあい循環する関係にある、と同研究所は分析している。
「自分の性格」「自分の成績」「家族との関係」「友だちとの関係」「学校の先生との関係」の中で、「家族との関係」に対する満足度は、子供の幸せ実感にもっとも相関が強かった。
満足度と幸せ実感の関連（相関係数）
学習場面で保護者がどのようにかかわっているかをたずねた結果では、「勉強の意味や大切さを教えてくれる」「結果が悪くても努力したことを認めてくれる」といったかかわりがあると、子供の幸せ実感が高い傾向がみられた。保護者の役割として、勉強の「意味づけ」や努力の「承認」が重要だと同研究所は指摘する。
保護者の幸せ実感が子供に影響することを考えると、保護者自身が幸せを実感できるような生活を送ることも大切だ。ふだんの生活の中で「趣味やスポーツを楽しむ」「自分の能力を高めるための勉強をする」「友人とすごす・話をする」「近所の人と話をする」といった機会があると回答する保護者ほど、幸せ実感が高い。
子供の幸せ実感を世帯年収別にみたところ、「とても幸せ」は「400万円未満」の世帯の子供は30.2%だったが、「800万円以上」の世帯の子供は34.2%。差はあるがとても大きいとまでは言えない。この結果から同研究所は、子供が幸せを感じられるかどうかは、経済的な要因が決定的な影響をもっているわけではないと分析している。
▶︎本調査の詳細はこちらで閲覧できる。
「子どもの生活と学びに関する親子調査」（東京大学社会科学研究所･ベネッセ教育総合研究所による共同調査）
