内田洋行は12月5日、ルクセンブルクに本社を置くOpen Assessment Technologies S.A.(以下、OAT)と共同で開発する 次世代版CBTプラットフォーム「TAO(タオ)」のフルラインナップを世界に先駆けて日本で発表すると発表した。
データを活用した教育や学習方法が求められるなか、学力調査や各種アセスメントでは、紙からタブレットやPCを活用したCBT(Computer Based Testing)への移行が急速に進んでいる。ただし円滑な活用のためには、多様な受検者が参加でき、大量の端末からのアクセスに耐え、収集したデータの活用を図るクラウドプラットフォームが不可欠。このような背景から、両者は共同で開発を進め、最新のCBT基盤を目指してきた。

世界標準の教育評価システム次世代版「TAO」の全体構成
「TAO」は、オープンスタンダードな技術を採用し、CBTシステムをネットワーク上で実現することを目指して、2002年から開発が進み、研究と活用が続けられてきたシステム。フランスやイタリア、英国、米国などの主要国の学力調査で採用され、現在、年間延べ3,000万人以上が利用している。
日本では、内田洋行がOAT社と2016年から連携して日本国内でのCBT環境整備を進めてきた。2020年には文部科学省CBTシステム「MEXCBT(メクビット)」で「TAO」が採用され、内田洋行とOAT社が中心となって開発と運用を担い、教育現場のCBT化を支えるシステムとして活用が進んでいる。
次世代版「TAO」は、これまで世界中で培われた「TAO」の理念と信頼性を継承し、あらゆる国や地域の学習者が、場所や言語、環境を越えて同じ基準で学びを評価できるプラットフォームとして新たに構築を進めている。一方、近年のクラウドの発展とIT端末の高機能化に伴い、CBTプラットフォームには、より大規模なテストを安定して実施できる性能、柔軟にデータがつながり合う教育デジタルエコシステム、多様な受検者に対応できるアクセシビリティ機能など、より開かれた高度な機能が求められるようになった。その対応のため共同で次世代版の開発を推進する体制を整えることから、2023年にOAT社は内田洋行グループに合流している。2025年に実施されたOECD「生徒の学習到達度調査(PISA(ピザ))」では、プラットフォームとして次世代版が採用され、106の国と地域で運用された。
次世代版「TAO」では、教育現場の多様化に対応し、誰もが公平に同じテストを受検できるアクセシビリティの強化と、世界的なCBT受検者数の増加を見据えた大規模・高負荷に耐えるシステム構造の全面的な見直しを行った。新たなシステム構造では、従来は、一つのアプリケーションにまとまっていたモノリシックアーキテクチャーから、機能ごとに独立して動作するモジュール型プラットフォームへと刷新。問題作成、テスト管理、受検、採点、結果提供、ポータルまでの機能を独立したモジュールとして提供することで、利用者は目的や規模に応じて必要な機能を柔軟に選択・拡張できる。
また、次世代TAOの理念である「すべての人が、どんな環境でも公平に同じテストに参加できる」の実現のため、アクセシビリティも大幅に強化した。
国際的なウェブアクセシビリティ基準「WCAG 2.1 AA」に準拠するとともに各国政府のウェブアクセシビリティ規格にも対応。視覚・聴覚・肢体・認知・言語など、さまざまな特性を持つ受検者に配慮したユーザーインターフェースを取り入れている。タブレットPCやモバイル端末でも、画面に応じたレスポンシブデザインによりレイアウトが最適化され、タッチ操作にも対応している。

世界各地の受検者を想定した多言語UIを搭載。文化や言語に合わせて右から左の表記や日本語の縦書きにも対応し、出題ポリシーに応じて各地域仕様で表示できる。
フォントサイズの変更、画面の配色やコントラストの変更、音声読み上げ対応、画面の拡大表示、スクリーンリーダーへの対応、外部の点字ディスプレイとの対応など。
問題作成時に設定することで、字幕の挿入、テキストの添付、再生回数の制御や音量ゼロ設定にも対応。
長時間姿勢が難しい方のための一時保存・中断再開を標準化。キーボードだけで全操作完結(タブ・矢印・Enter)、OS標準の外部スイッチや視線入力など支援技術と連携。
文字サイズ・文字間・行間の変更、ラインリーダー、読み上げとハイライト同期、時間制限非表示設定など。
次世代版「TAO」は、システムをクラウドネイティブ構造に刷新。これにより、アクセス集中時でも自動的にリソースを拡張し、百万人規模が受検しても安定した稼働を実現する。多様なネットワークや端末を通じて、国家規模の学力調査から、資格試験まで、様々な試験を安定して実施できます。セキュリティは各国政府の要件に合わせて厳格に構築できる。
TAOは、教育のデジタル基盤を支える「オープンスタンダード」に準拠し、最新の国際技術標準に対応した設計を採用。これにより、学習管理システム(LMS)や教育ツールと安全・柔軟に連携できる。また、教育機関や試験団体などの独自の分析・レポートシステムとも連携できるように、APIも利用できる。利用者は、自らのシステムにTAOを柔軟に“組み込む”ことが可能。
学習管理システムとの連携(LTI1.3):LTIに準拠した学習管理システム (LMS)から直接TAOを起動でき、ログイン情報などを自動連携。受検後の結果などを安全にLMSに戻すことが可能。
テスト問題の共有(QTI3.0):TAO上で作成した問題は、QTI対応の他システムでも利用できる。また他社ツールで作成した問題もTAO上で利用可能となり、テスト問題の相互利用を促進する。
CBT試験は、音声や動画などを活用することで、思考力・判断力・表現力など、多面的な力を評価できる新しい試験方式。実際の音声を聞いたり映像で状況を確認したりと、紙の試験では困難だった多様な表現を使った出題も可能になる。TAOでは、視覚的なUIから問題タイプを選び、テキスト・画像・動画などのパーツをドラッグ&ドロップするだけで直感的に問題を作成可能。次世代版の問題作成環境「TAO Studio」では、問題・テストを体系的に蓄積し、タグ付け・検索等のライブラリ機能を強化し、過去問題の再利用や改訂を容易に行える。※次世代版の問題作成環境「TAO Studio」は、2026年9月提供を計画中。
国家資格試験など高いセキュリティが求められるオンライン試験にも対応できるよう、試験の不正監視機能の拡張を予定している。受検者の画面や状況のモニタリングについては、外部監視・認証サービスとの連携や自社機能の開発を組み合わせ、より厳格な試験運営の実現を目指す。
問題の分類やキーワードなどの必要な情報(メタデータ)をAIが補完し、問題文の構成を自動で提案し、より分かりやすい問題作成をサポート。この中でジェンダーバイアスをチェックするなど問題文の表現を補正する機能なども計画されている。
「TAO Portal(ポータルサイト兼テスト管理)」、「TAO Advance(テスト受検)」、「TAO Studio(新・問題作成環境)」、「TAO Grader(採点)・「TAO Insights(結果分析)」といったモジュールで構成されている。これらを組み合わせることで、教育機関や試験主催者は目的に合わせた最適なアセスメント環境を柔軟に構築できる。※「TAO Studio(問題作成環境)」は、2026年9月提供を計画中。
SaaSにより次世代版「TAO」の利用環境を提供する。モジュール構成とライセンス体系により、TAOはあらゆる国・教育機関・試験組織に適用できるグローバルスケールの教育インフラに柔軟に対応する。
インフラ構築やサーバ管理が不要。ライセンス利用や受験回数に応じて柔軟に対応が可能。受検者とコンテンツを登録するだけで即座にデジタルアセスメントを開始できる。導入・運用コストを抑えながら、安全な個別学習に応じた環境を提供する。学校や自治体は技術要員を増やさずに運用可能。予算や実施テストの要件にあわせてマルチテナント・シングルテナントから選択が可能。※年間利用料金:トライアルプラン 約60万円(税別・テスト回数:約2,400回)~から。
次世代版「TAO」は、2026年1月5日にオープンソースも公開され、世界中の開発者や研究者が参加するオープンソースコミュニティとともに進化を続ける。ユーザーから寄せられる提案や改善を取り入れ、常に最新の技術・機能を取り入れる。また、世界規模の利用者ネットワークと連携し、継続的な更新を通じて、長期的な価値向上を目指す。
▶︎TAO Community Forum会員限定メンバーズサイト
世界の研究者が利用、改良できるようオープンソースライセンス「AGPLv3」に基づき公開。GitHubでのソースコード公開のほか、Docker版でも提供する。