イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン(以下、EF)は、世界123か国・地域を対象に成人の英語力を比較した「EF英語能力指数」(以下、EF EPI)の第15回調査(2025年版)の結果を11月19日(水)に発表した。今回はAIによるスピーキング・ライティング自動評価が初めて導入された。それによると「日本人の国別英語力ランキング」は世界123か国中96位で「英語を理解できるが使いこなせない」という課題が浮き彫りとなった。

日本の英語力は前年に続き96位(スコア446)にとどまり、アジア平均(スコア477)を下回る結果となった。マレーシア24位(スコア581)、フィリピン28位(スコア569)など、英語教育の進む国々との差は依然として大きい結果となっている。スキル別では「読む・聞く」に対し「話す・書く」が著しく低く、“理解はできるが使いこなせない”という課題が明確になった。
EF EPI分析チーム責任者のケイト・ベル氏は「日本では読む・聞くと比べて、話す・書くのスコアが相対的に伸びにくい傾向があり、今回のAI評価によって、その差がより明確になった。英語力全体の停滞は世界共通の課題だが日本では4技能のバランス改善が鍵となる」と語った。
地域別では、関東(スコア478)が最も高く、中国地方(スコア436)が最も低い結果となり、都市部・地方での英語力の差が示された。首都圏を中心に留学ニーズなど英語を使う機会が高まる一方、すべての地域で同じように学習機会や必要性が高まっているとは限らないことがうかがえる。

18〜25歳の若年層のスコアが全世代で最も低いことも特徴で、本来は学校教育やオンライン学習などで英語に触れる機会が多い世代であるにもかかわらず、指数上は十分にスコアに結びついていない現状が示された。

デジタルネイティブ世代が「字幕やテキストで理解する英語」にとどまり、「自分の言葉として話す・書く経験」が相対的に少ない可能性も含め、EF EPI分析チームでは「AI時代に特有の英語との向き合い方」として、今後も継続的な検証が必要と考えている。
2025年版のEF EPIでは、オランダ、クロアチア、オーストリア、ドイツが上位を占めるなど、ヨーロッパ諸国が引き続き高い英語運用力を示した。これらの国々では、理科や社会などを英語で教える「CLIL教育」や、実演型評価(口頭試験・即時ディスカッション)が広く導入されている。教員自身の英語基準や研修制度の高さも、英語力向上に寄与している。
今回、AI によるスピーキング・ライティング評価を導入したことで、世界の半数以上の国でスピーキングが最も弱いスキルであることが初めて明らかになった。これは、読解や聴解中心の教育では限界があることを示している。
日本においてもAIを活用した発音・作文評価や、ビジネス現場での英語実務の標準化などを通じて、「理解する英語」から「使いこなす英語」へと転換していくことが期待される。
【完全版レポートのダウンロード】
世界各国・地域の詳細データおよび分析は以下のサイトから確認できる。
<調査概要>
調査名称:EF英語能力指数(EF English Proficiency Index)2025(第15回)
調査機関:イー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)
調査時期:2024年1月〜12月
調査対象:世界123の国と地域の成人(18歳以上)
調査方法:EFが開発したオンライン英語テスト「EF SET(Standard English Test)」
および「EF Placement Test」受験データを集計・分析(受験者数:約220万⼈/世界全体)
評価内容:リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4技能を
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に基づいてスコア化。2025年版よりAIによる
スピーキング・ライティング自動評価を新たに導入。
評価スケール:1〜800点のスコアを基準に「非常に高い」から「非常に低い」の
5段階で国別能力を分類
分析対象スキル:リーディング(454)、リスニング(437)、ライティング(394)、
スピーキング(393)
備考:EF SETはCEFR準拠の無料オンライン英語力テストでTOEFL®、TOEIC®、
IELTS®と換算が可能なスコア体系を採用。AIによる自動採点で一貫性・公平性を担保。