ライオンは、トイレ空間内に存在し、トイレのニオイの原因になっている「ニオイ菌」、Micrococcus luteus(以下、M. luteus)とKocuria marina(以下、K. marina)が、尿汚れだけでなく、トイレットペーパー使用時に生じるホコリ(以下、ペーパーホコリ)も栄養源として増殖することを確認した。また、これら2種の菌は、尿汚れやペーパーホコリがない条件では1日も生存できないのに対し、汚れ共存下では、2週間から1カ月間にわたり生育することがわかった。本研究内容は、2025年12に開催された「2025年室内環境学会学術大会」にて発表し、大会長奨励賞(技術部門)を受賞している。

トイレットペーパー使用時に飛散するペーパーホコリの分布
トイレは住居設備の進化により、近年ますます快適な空間へと変化しているが、一方で、同社調べによると、生活者はこまめに掃除をしているにも関わらず、なんとなく残るニオイに不満を抱いているという。
これまで同社ではトイレのニオイの原因となる菌としてM. luteusおよびK. marinaの2種を特定し、これら「ニオイ菌」が便器周辺だけでなく、床や壁、換気扇などトイレ空間全体に存在していることを見出した。
今回は、トイレ特有の「尿汚れ」と「ペーパーホコリ」が、「ニオイ菌」の生育に与える影響を調べた。また、これまで「尿汚れ」がトイレ空間の中で広範囲に飛び散ることを示してきたが、「ペーパーホコリ」については十分検証してなかったことから、「ペーパーホコリ」の分布や飛散状況についても、観察した。
トイレ特有の汚れとして尿あるいはペーパーホコリが存在する条件で、「ニオイ菌」2種(M. luteus、K. marina)の生育実態を調べました。その結果、汚れがない条件では、いずれの菌においても1日も生存できなかったのに対し、尿やペーパーホコリが存在する条件では、いずれの菌も数の増加が認められた。このことは、尿だけではなく、ペーパーホコリも菌にとって栄養源となり、増殖させる可能性を示している。
<尿/ペーパーホコリと共存した場合のニオイ菌数の推移>

汚れのない条件では1日も生存できなかったニオイ菌2種(M. luteus、K. marina)が、トイレの環境を模した温度・湿度条件において、尿やペーパーホコリと共存した場合、どの程度生存期間が延びるのかを調べた。
その結果、尿が存在する条件では、ニオイ菌2種(M. luteus、K. marina)ともに、少なくとも1カ月間生存することがわかった。一方、ペーパーホコリが存在する条件では、K. marinaは15日間、M. luteusは菌数を維持したまま少なくとも1カ月間生存することを確認した。
このことから、トイレ環境を模した条件においても尿やペーパーホコリが存在することで、「ニオイ菌」が生存する期間が長くなる可能性が示唆された。
<尿あるいはペーパーホコリと共存した際の各ニオイ菌の生存期間>

尿は小用によって飛び散り、便器内はもちろんのこと、床や壁にも存在することがわかっている。しかし、トイレットペーパー使用時にペーパーホコリがどのように生じ、トイレ空間内でどのように存在するかについては十分に明らかになっていない。そこで、モデルトイレ空間内で、ペーパーホコリが発生する様子や空間内での広がり方を調べた。
その結果、ペーパーを使用するたびにペーパーホコリが発生し、下方だけではなく、換気扇による空気の流れに乗って、上方にも舞い上がる様子を確認した。また、トイレットペーパーの使用に伴い、ペーパーホルダー周辺だけでなく、換気扇付近でもペーパーホコリ由来と考えられる粒子数の増加が確認された。このことから、ペーパーホコリは床だけではなく、天井や換気扇を含むトイレ空間全体に存在することが示唆された。
<トイレットペーパー使用時に飛散するペーパーホコリの様子>

<モデルトイレ空間内でトイレットペーパー使用時に観測された粒子数>

以上の結果から、ニオイ菌2種が尿やペーパーホコリを栄養に増殖し、2週間~1ヶ月程度生存することがわかりました。またニオイ菌に加え、ペーパーホコリは便器周辺、床だけではなく、換気扇など手が届きにくいトイレ空間全体に存在することがわかった。このことから、ニオイを抑えるためには、トイレ空間の手が届きにくい場所を含め、尿やホコリをなくし、ニオイ菌の生育を促進させないことが重要と考えられる。

ライオン株式会社リビングケアマイスター吉井和美氏。掃除用洗剤の製品開発を約15年、技術者向けの情報発信に約5年携わる
これまで、トイレのニオイ対策と言えば「尿ハネ汚れ」の掃除が中心でしたが、今回の研究で、「ホコリ」に着目した掃除やケアが大切であることが分かってきました。
もちろん、基本となるのは日々のこまめなお掃除です。便座の裏や便器のフチの上、床などは尿ハネによる汚れが発生しやすく、ニオイの原因になりやすいポイントです。こうした場所は、ふき掃除もできるトイレ用洗剤、例えば『ルックプラス トイレクレンジング』をスプレーし、トイレットペーパーなどで拭き取ってそのまま便器に流すだけで、簡単にお掃除ができます。
一方で今回の研究では、トイレットペーパー使用時に発生するホコリが空間中に広がり、「ニオイ菌」の栄養源となる可能性が明らかになりました。特に、換気扇や天井付近などは、手が届きにくく日常的なお掃除では見落とされがちで、ホコリがたまりやすい場所と言えます。
これからは、便器や床などの日頃のお掃除に加えて、換気扇や天井付近、壁や床奥(タンク裏)など、空間全体を意識したお手入れが大切です。ニオイの予防ができるトイレ用のくん煙剤などを活用し、手が届きにくい場所までまとめてケアする習慣で、ニオイの発生しにくい快適なトイレ環境をつくりましょう。