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教育旅行

教育旅行視察会 北海道ならではの体験学習を

2019年10月29日
教育旅行

開拓史から学ぶ人権と防災 北海道観光振興機構

(公社)北海道観光振興機構は9月15日・16日の2日間で、首都圏の中学校・高等学校の教職員を対象とした「北海道(道央圏)教育旅行現地視察会」を実施。来年春に完成する白老町のウポポイ(民族共生象徴空間)のほか、一昨年に開園したNACアドベンチャーパークの樹上アクティビティ施設なども体験した。

【行程】

1日目: 羽田空港=新千歳空港=ノーザンホースパーク(苫小牧市)=民族共生象徴空間「ウポポイ」(白老町)=旧札幌通り~旧室蘭駅舎(室蘭市)※室蘭市内で宿泊

2日目: 室蘭市内=洞爺湖有珠山ジオパーク(壮瞥町)=NACアドベンチャーパーク(ニセコ町)=新千歳空港=羽田空港


樹上で安全に遊ぶ
NACアドベンチャーパーク(ニセコ町)

教員が挑戦した初心者コース。地上から5m以上の高さにあるつり橋を使って、樹上を渡り歩いていく

教員が挑戦した初心者コース。地上から5m以上の高さにあるつり橋を使って、樹上を渡り歩いていく

国際化が急速に進むニセコ町では、高さ5~13m、9265㎡の敷地にある難易度別の10コースで樹上アクティビティが体験できる。身長115㎝以上対象のノーマルコース6つ、身長140㎝以上対象のアドベンチャーコース2つのほか、今春に新設された初心者コース(身長制限なし)が2つある。最大収容人数は120人。

つり橋など、様々な難易度の「エレメント」をクリアしながら木から木へと移動する。コースの最後には必ず、木々の間に張られたワイヤーロープを滑車で滑り降りるジップラインがある。

遊ぶ前に装備する2つの安全装置(クリキット)はハーネスと直結しており、エレメントからエレメントへ移動する際に1つを外すともう片方は強力な磁石でロックされる。2つ同時に木の上で外れることはないので、命綱は常に1本以上用意されている設計だ。エレメントに挑戦している間は必ず、ロックされた2本の命綱で常に支えられるので、安心して目の前の課題に挑戦できる。

体験した教員からは地上からの高さに驚く声もあったが、最後には全員が怪我なくコースをクリアした。
HP=www.nacadventures.jp/summer/adventurepark

大自然を五感で実感
ノーザンホースパーク(苫小牧市)

ノーザンホースパークのレストランでは地元料理を大人数に提供できる

ノーザンホースパークのレストランでは地元料理を大人数に提供できる

一行が最初に訪れた「ノーザンホースパーク」は、引退した競走馬やポニー、馬車馬などを保有する広大なテーマパーク。今年で開園30周年を迎えた。

新千歳空港からバスで15分と近いため、初日や最終日の食事・体験学習などにも適している。旅行の導入として来訪する学校も多い。

80人を収容できる「K’sガーデン レストラン」のほか、500人まで受け入れ可能なバーベキューレストラン「Back Yard Grill(バックヤードグリル)」では、ジンギスカンなど地元の食材を使った料理をビュッフェ形式で提供している。

実際に馬を連れてきて馬の習性を紹介するだけでなく、馬と一緒に学級の集合写真を撮影することも可能。ポニーショーも1日2回行われており、体験内容は多岐にわたる。
HP=https://www.northern-horsepark.jp/

山頂で育む防災意識
洞爺湖有珠山ジオパーク(壮瞥町)

有珠山の噴火の予兆となる地震発生後の地域対応を解説する火山マイスター

有珠山の噴火の予兆となる地震発生後の地域対応を解説する火山マイスター

噴火が20~50年周期で「嘘をつかない山」とも呼ばれている有珠山は、噴火での人的被害がゼロなことで有名だ。山頂の展望台までは、片道6分のロープウェイが運行し、106人乗りのゴンドラ内ではDVD映像による解説も用意されている。

噴火によって生成された洞爺湖や昭和新山を眼下に眺めながら、地殻変動や防災について、当時の写真・イラストや質問を交えながら案内するのが「火山マイスター」だ。

火山マイスターは昭和新山の隆起前後の比較写真を見せながら、平地だった土地が農家の家屋ごと隆起し、たった2年で昭和新山が形成されたことなどを解説する。危険度別のエリアごとの対応や、地震の発生場所から、次の噴火ポイントを推測できることも紹介した。

子供たちは災害時にどう動けばいいのかを自分で考えながら、火山との共生・防災をアクティブ・ラーニングで学習できる。

噴火を予測し、前例のない事前避難を実現させた人々を紹介する「山頂防災シアター」もある。
HP=www.toya-usu-geopark.org/

まち歩きで学ぶ歴史
旧札幌通り~旧室蘭駅舎(室蘭市)

旧札幌通りを歩いて室蘭市の特徴を学ぶ

旧札幌通りを歩いて室蘭市の特徴を学ぶ

室蘭市内に到着後、一行は(一社)室蘭観光協会の職員の案内で市街をめぐった。

室蘭市は、小樽市や函館市のように坂が多い。現在の室蘭市につながる産業基盤についての解説を受けながら、市の中心にある「旧札幌通り」を歩いた。

札幌へと続いていた旧札幌通りから道を外れて坂を下ると、国の登録有形文化財である「旧室蘭駅舎」に到着する。

日本遺産「炭鉄港」の構成文化財でもあるこの駅舎は、現在では観光案内所としても使用されている。1912年に建築された明治期の洋風建築で、道内の駅舎の中では最古の木造建築物だ。

旧札幌通り~旧室蘭駅舎(室蘭市)

旧札幌通り~旧室蘭駅舎(室蘭市)

同駅舎では、当時の国家プロジェクトとして空知・小樽・室蘭をつないだ石炭輸送と産業発展の歴史を解説する映像も鑑賞できる。

北海道の炭鉄道は屯田兵の時代が始まりで、石炭の空知、鉄鋼の室蘭、港湾の小樽でつなぐ鉄道を舞台にした産業革命の歴史がある。北海道の近代化を推し進めたそれらの石炭・鉄鋼産業が、やがて苫小牧を中心とした石油産業に移り変わっていくまでの過程を学習できる。

同市は、これまで室蘭市青少年科学館の屋外で展示していた蒸気機関車(SL)「白鳥号(D51560号)」を今年8月に同駅舎の隣へと移設している。11月上旬には、同駅舎だけでなく、1974年まで石炭輸送を支えていたSLも見学できるようになる予定だ。

夜景も見どころが多く、白鳥大橋を渡ると、工場夜景を中心とした室蘭市の景色を一望できるなどの魅力もある。
TEL 0143・23・0102

アイヌ文化に触れる
民族共生象徴空間「ウポポイ」(白老町)

白老町の観光文化の歴史解説

白老町の観光文化の歴史解説

白老町は、函館・札幌間を結ぶ線路が早い段階で開通していたため、長年アイヌ文化を学ぶ観光地として講話活動などが盛んに行われてきた。戦後1964年には、同町への観光客が56万人にのぼった。

その経緯から、現在のポロト湖畔周辺がアイヌの観光地となっている。冬のポロト湖は凍結するため、スケートリンクにもなり、ワカサギ釣りなどもできる。

入場料金も決定
多種多様な体験学習を
建設中のウポポイを視察する教員

建設中のウポポイを視察する教員

来年4月24日のオープンに向けて建設が進む「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、同町にあるポロト湖畔を中心とした、先住民族との共生がテーマのフィールドミュージアム。国立アイヌ民族博物館、伝統工芸品の工房や体験学習館、体験交流ホール、伝統的コタン(家屋)などから構成される。

体験交流ホールは1日4回ほどの公演を予定。これまでの伝統的プログラムと、最新技術を使った最新演出プログラムの2本立てを計画している。最大収容人数は530人(座席430席、立見100席)。

伝統的コタンでは、今後もコタンを敷地内に建てていくので、すでに完成したものに限らず、建築途中のものも随時見られる。

「その人ができることをその人らしくやるという文化がアイヌにはあり、SDGsにもつながる」と同施設職員は語った。

入場料金も決定した。大人(一般)1200円、(団体)960円。高校生(一般)600円、(団体)480円。中学生以下無料。

来年度は9時から開館するが、閉館時間は季節によって17時から20時までの間で変動する。
HP=ainu-upopoy.jp/

参加者の声
深い学びにつながる充実した体験学習

■ノーザンホースパーク
  • 「北海道へ来た」という雰囲気を味わうにはもってこいの場所。食事会場の広さも十分にあった。(湘南白百合学園中学・高等学校)
  • 多数の学生を上手に受け入れるノウハウを感じた。(香蘭女学校)
■ウポポイ(民族共生象徴空間)
  • SDGsともリンクさせ、様々なことを考え、解決していく力を身につけられる素材にあふれていた。(北豊島中学校・高等学校)
  • 新学習指導要領で美術館や博物館を活用することが求められており、豊かな自然を舞台に、多様なテーマと体験活動を備えた学習の場として魅力的だ。(東京都立第一商業高等学校)
■旧札幌通り~旧室蘭駅舎
  • 「炭鉄港」として日本遺産に登録されたこともあり、「日本の近代化を下支えした北海道」という視点で学ぶうえで良い題材になる。(湘南学園中学校高等学校)
  • 室蘭に民泊して、生徒に「室蘭をどう観光地にできるか」というテーマで探究活動を行ったら面白いと思う。(常磐大学高等学校)
  • 実際に歩いてみて、今まで持っていた町のイメージが変わった。北海道の近代化・発展の過程を知ることは、教科書からだけでは得ることができない、貴重な学びの機会になる。(北豊島中学校・高等学校)
■洞爺湖有珠山ジオパーク
  • 地学の教科書などとタイアップして教材開発すると、探究学習のきっかけにもなる。(常磐大学高等学校)

    有珠山ロープウェイの展望台からは、有珠山の噴火によって生成された洞爺湖と昭和新山が一望できる

    有珠山ロープウェイの展望台からは、有珠山の噴火によって生成された洞爺湖と昭和新山が一望できる

  • 今でも蒸気が立ち上がる昭和新山を目前に有珠山から眺める洞爺湖の歴史は、座学が苦手な生徒でも防災減災について考えるきっかけになる。(東京都立晴海総合高等学校)
  • いまだ活動を続ける火山を観光名所としていても、火山による犠牲者を一切出していない点。この努力に学ぶ価値はある。(昭和第一学園高等学校)
  • 火山マイスターによる案内は、大地の変動や防災について、質疑応答方式で、アクティブ・ラーニング的な学習ができる。(東京都立第一商業高等学校)
■NACアドベンチャーパーク
  • 様々な難易度があり、自分の体力やチャレンジ精神に合わせ選べる。安全対策をしっかりしていることも安心できる。(安田学園中学校・高等学校)
  • 特に小学校や男子校に向いている施設。(文京学院大学女子高等学校)

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年10月28日号掲載



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