日米の高校生が、互いの文化を経験し交流することで理解を深める「AIG高校生外交官 日本プログラム(HSDJapan)」が7月下旬から約10日間開催され、アメリカの高校生16人が訪日。7月28日には日本の高校生と共にオンラインで、広島在住の被爆者・小倉桂子さんから被爆体験談を聞いた。「学んで知ったことを次代に伝えて」と願う小倉さんに、日米の高校生からは「テレビ等では知ることができない貴重な経験が聞けた」と感謝が伝えられた。
前半約40分間は、被爆当時小学2年・8歳だった小倉さんが、当時の写真や絵を紹介しながら体験を語った。爆心地から2㎞余り離れた自宅付近で被爆、ほどなく目にした市内の様子は破壊されつくした光景。通っていた学校や広島駅等も鉄骨が残るだけ。遺体を燃やす煙が町のあちこちから上がっていたという。
広島・平和記念公園のモニュメントには「もう二度とこのような悲劇を起こさぬように」という願いを込めて、原爆で亡くなった約32万人の名前が記されている。「若い世代にこの悲劇を伝え、二度と繰り返さないよう、これからの平和な世界を築いてほしい」と締めくくった。
アメリカの高校生からは、今までに体験を聞いた人々の反応などについて質問。小倉さんは「アメリカ人が憎いか」と聞かれることもあるが、投下を指示したリーダーは憎い、しかしアメリカ人が憎いという感情はないと回答。「知らなかった」と泣きながら声をかけてくれる人もいるが、「原爆を落としたから戦争が終結した」と考える人もいると語り、「広島、長崎は異なる原爆の威力を試した場で、戦争になると人間は感覚が狂ってしまう。原爆は使用しないのではなく、保持するべきでないと私は考える」と訴えた。
AIG・HSDプログラムは1994年から毎年、アメリカから20人前後の高校生外交官が来日、ホームステイや日本の高校生との共同生活や様々なプログラムを体験する。日本の高校生が主導して書道・武道等の日本文化を一緒に体験する「ジャパンフェスティバル」、古都を巡りながら歴史や文化を案内する「京都トリップ」など多彩。英語でのプレゼンテーションは、日本の高校生には容易でないものの、内容が伝わり質問攻めに会うなどの経験から高い達成感を得ているという。
30年近い実績についてプログラム担当者は「自然災害等で継続が危惧される出来事もあったが、日米の懸け橋として国際的な人材を育むという想いで協賛パートナーのフリーマン財団が支援を継続してくださる他、文部科学省、米国大使館、推薦・後援団体のご理解・協力のおかげ」。「この経験から参加者同士が多くの刺激を得て、チャレンジすることへのハードルを下げ、チャレンジすることを楽しめる人材が育っている」と述べている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年9月19日号掲載