DOUは、金沢星稜大学の横野成美特任教授が担当する英語ディスカッション授業において、AIが学生一人ひとりの学習ログを基に個別最適化された指導を行う「AI講師」を提供し、教育の質と効率の両立を実証する取り組みを実施したと発表。
本取り組みは、現代の大学教育が直面する「大規模化に伴う指導の画一化」という構造的課題に対し、テクノロジーを活用して「個」に寄り添う教育をいかに実現するか、という問いへの具体的な解決策を示すもの。今回は、授業外の時間で学生にパーソナライズされた練習機会を提供し、スピーキング能力を継続的に向上させることを目的に「AI講師」が導入された。

AI講師は、従来の教育系AIと異なり、単なる「質問応答」や「一斉配信」ではなく、一人ひとりの思考のプロセスを対話を通じて可視化・伴走する点に特長がある。ChatGPTをベースとした大規模言語モデルに、DOU独自の学習ログデータベースを統合することで、AI講師は単なる情報提供者ではなく、言語化支援者としての役割を果たす。つまり、教員が本来担ってきた「問いかけて、考えを引き出す」という教育の本質的なプロセスを、AIが補助できる構造となっている。
主な機能は以下のとおり。
授業で扱ったテーマや過去の課題(学習ログ)をAIが参照。学生の理解度や弱点を踏まえた上で、一人ひとりの特徴や課題に最適化された対話形式の指導を生成する。
AIとの対話を通じて、学生のスピーキングスキル(語彙、流暢さ、正確性など)を継続的に分析・評価する。教員は客観的なデータに基づき、学生の成長を定量的に把握できる。
今回の試験導入は1カ月間行われ、上記の機能が学生の学習体験をいかに変容させるか、その可能性を示す定性的な成果が得られたという。このスキル定点観測機能の存在により、次年度以降はより長期的な視点での定量的な成果検証が可能となる。
AI講師を積極的に活用した学生へのヒアリングからは、学習の「量」と「質」の両面における顕著な変化が確認された。
留学を控える学生からは、「AI相手なら、ミスを気にせず何度でも練習できる」という声があった。これは、AIが心理的な負担のない安全な練習環境を提供し、学生が自律的にスピーキングの実践機会を増やす上で極めて有効に機能したことを示している。
AIからのフィードバックは、「接続詞を効果的に使ってみましょう」といった具体的な改善点と、すぐに使える英語表現の例がセットで提示される。学生は「この表現を覚えれば、次のディスカッションで使える」と即座に学習効果を実感でき、高速なPDCAサイクルを回すことが可能になった。
AIとの練習テーマを授業内容と連動させることで、学生は「何を話すべきか分からない」という状態に陥ることなく、スムーズに練習を開始できた。これにより、授業で得た知識を即座にアウトプットし、定着させるという効率的な学習フローが確立された。
授業者の横野成美特任教授は今回の実証にあたり、「教員が事前に全員と個別に会話練習を行い、さらに詳細なフィードバックを提供することには物理的な限界がある。その部分をAI講師に補完してもらえたことは、学習者支援の面で非常に有意義」とコメントしている。
同社では、AI講師の実証実験参加校を募集している。来年度からの定量的な共同実証研究に関心のある大学・高校経営層、語学教育関係者を対象に問い合わせを受け付けている。
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