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教育ICT

AI英会話で“話す力”を強化<熊本県山江村立山江中学校>

2019年5月17日
タイマーを設定してAI英会話で練習中。iPadのマイクに向かって発話し、正しく認識されるまで繰り返す

タイマーを設定してAI英会話で練習中。iPadのマイクに向かって発話し、正しく認識されるまで繰り返す

2011年度から10年計画でICT教育に取り組んできた熊本県山江村教育委員会では、ICT活用の次の目標の1つに英語教育を掲げ、英語検定の受検料を無料化。英語検定3級を取得した生徒を夏休みに海外語学研修に派遣するなどして英語力強化に取り組んでいる。これに伴い山江村立山江中学校(金子雄一校長)では本年1月からAI英会話練習システム「TerraTalk(以下、テラトーク)」の授業活用を開始した。4月23日、山江中学校3年生の授業を取材した。授業者は守山万葉教諭。

この日は、既習事項の活用として「海外でおすすめのレストランを聞けるようにする」レッスンをテラトークから選択して取り組んだ。守山教諭は、モデル会話の質問のみピックアップして回答欄をブランクにしたワークシートを用意。生徒は質問文を守山教諭に続いてリピートしたり、会話全体を各自で数回リスニングしたりした後、答えの部分の意味を全員で確認。何度も繰り返して発話に慣れていった。

AIが発音をスペル化 正確さを判定する

AIが生徒の発言を認識してスペル化。正しさを判定する

AIが生徒の発言を認識してスペル化。正しさを判定する

続いてiPadとテラトークを使った個人の発音練習だ。生徒はiPadのマイクに向かってテラトークの質問に英語で答えていく。テラトークは児童の発音をAIで判定してスペル化し、意味が通じる英語になっているかどうかを判定する。

「rice」を「nice」と認識されたり、「special」を「space shower」、「water」を「what」、「cheese」を「juce」に認識されたりなど難所は多いが、生徒は熱心にトライしている。当初は控えめに発音していた生徒も練習が進むにつれて、声がボリュームアップ。全体リスニングに戻って、AIの発音を聞き返している生徒もいる。会話の一部が認識されると、一部のみを繰り返しトライすることもでき、自分の直近の発音を聞き返すこともできる。「食べたい料理のジャンル」を聞かれて「イタリアン」と答えた生徒は、なかなか正しく認識されず、「ジャパニーズフーズ」と答えを変更して成功していた。

無事にレストランを選びメニューを注文する会話の流れが終わると、個別に認識率が判定されてトロフィーを授与。次のレッスンに進むように促されたり、以前取り組んで苦手だった会話が出たりする。個人管理画面では、過去の取組から、苦手な発音ワースト5が出て練習ができ、教員管理画面では、各自の発音を教員が聞くこともできる。

授業終了後、生徒は「発音で気を付けなければならないところがわかり、繰り返し練習できる点が良い」と話した。

発話量が圧倒的に増加 発音を意識するように

守山教諭はテラトーク導入により、生徒がスピーキングする時間が増えた、と話す。「学力テストにスピーキングが入ってきたこともあり、話す力を伸ばしたいと考えていたが、1人ひとりのスピーキングを確認することは難しい。テラトークは個別練習が一斉かつ確実にでき、その成果を教員管理画面で1人ひとり把握できる」

初めてテラトークを活用する際、生徒が自由に使う時間を20分程度設けた。ここで生徒は、どこをどうクリックすれば何ができるのかをほぼ把握。次の時間からのスムーズな活用につながった。操作指導に時間をとられないので授業進行もスムーズに進み、教員も生徒も学習内容に集中できた。
AIの判定は厳しいが、機械相手だと失敗を恐れずに取り組めるようで、生徒は、前回を超えようと取り組んでいる。どこが違っているのか自主的に聞き返すなど、これまで以上に発音を意識するようになった。

生徒の苦手な部分も把握しやすい。一斉に発音する場合は、自信のある子の声が大きく、自信のない子のフォローが難しい面もある。個人練習の時間は机間指導できるので、苦手な発音を把握しやすくなった。テラトークには学年に紐づけた文法学習もあり、「今後は文法学習の際にも定着活動として発音練習を取り入れたい」と語る。

山江村教育委員会の黒木秀一指導主事は「英語が苦手な生徒もテラトークの学習は好きと言っていた。人前で話すのが苦手な子供も繰り返し頑張っている。ここで自信をつければ読み書きが苦手な生徒が英語を学びなおすきっかけにもなるのでは」と話した。


■山江中学校のICT環境=電子黒板全普通教室に整備、生徒数125名に対してタブレットPC140台・iPad85台(次年度に追加40台)、Android端末140台(持ち帰り学習用)、無線AP各教室に2台、校務用タブレットPCはネットワーク分離して教員数を用意。今年度予算で体育館に高速ネットワークを整備するなど避難所としての機能も強化する予定。

山江村を世界に紹介できる子供に

藤本誠一教育長

藤本誠一教育長

山江村でICT活用教育に取り組んで9年目。「小学校からICT活用に慣れているので、新しいアプリを導入しても戸惑うことなくすぐに活用している」という。当時の小学生は現在大学2年生で、京都大学に1名、九州大学に2名が入学している。また、熊本県では、山江村出身の教員が毎年4~5人採用されており「これまでの取組の成果と考えてよいのではないか。子供の数が少ないので、1人ひとりに対する時間を確保しやすく、その後の成長も見守りやすい」と話す。

テラトークは教育長自ら、昨年の教育ICT展示会「EDIX関西」で見つけて試用を開始。夏休みの語学研修ではシンガポールで現地の学校と交流した。生徒は文化祭などで現地の様子を写真とともに英語でプレゼンテーション。成長ぶりは明らかで、「中学校時点で海外体験をすることの重要性を強く感じた」という。保護者からも取組を高く評価されており、今年度は8名を派遣する計画だ。すでに、希望者は20人を超えている。

テラトークについては「様々な場面でネイティブの発音に触れながら会話練習できる。発話量も増え、AIに評価されることで、ふだん英語に触れる機会のない子供にも自信がつく。授業活用は教員の力量に左右される面もあるが、守山教諭は上手く活用しており、子供は一生懸命伝えようと頑張っている」と語る。

「2020年度までに、中学校3年生で英語検定3級取得者を60%までにしたい」と、文部科学省の示す水準を超える目標を立てており、「英語検定3級の二次試験対策や、新しく始まった英語の全国学力学習状況調査にも役立ち、4技能の育成にもつながる」と考えている。山江中学校では金曜日にタブレットを持ち帰り、ドリル学習に取り組んでいるが「AI英会話の練習も自宅学習で取り組めるようにしたい」と語った。

今年度はテレビ会議システムの活用も検討中で、今年度の語学研修では事前に遠隔で交流を予定している。さらに語学研修対象者だけではなく、小学校2校、中学校1校を交流校と常時つなぎ、休み時間などに自由に会話できる環境としたいと考えている。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載

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