3月27日、岡山市内で第119回教育委員会対象セミナーを開催した。
安藤明伸教授・広島工業大学は生成AIの教育活用について、山本朋弘教授・中村学園大学教育学部はGIGA2期の個別最適な学び・協働的な学びの質的向上について講演。
愛媛県教育委員会はメタバースを活用した不登校支援、岡山市立平井小学校は端末とクラウドを活用した授業改善、岡山県立岡山芳泉高等学校は生成AIを活用したアクティブ・ラーニング型授業と校務効率化の取組を報告した。
岡山県立岡山芳泉高等学校 平尾教人教諭
岡山芳泉高校はGIGAスクール構想以前よりICTを活用した授業に取り組んでいる。
校務分掌の1つである「情報企画課」でICT活用推進とネットワーク管理を担当している美術科教員の平尾教人教諭が、生成AIを活用したアクティブ・ラーニング型授業と校務効率化の取組について報告した。
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情報企画課ではICT・1人1台端末を活用したアクティブ・ラーニング型授業と校務効率化を大きな柱として取組を進めてきた。
生成AI活用についても、校務効率化から取り組み、授業活用へと広めているところだ。
2023年度の文科省「生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を受け、生成AIに関する教職員向け校内研修を実施し、校務での生成AI活用を開始した。
2024年度はPTA総会で保護者の承認を得て、授業での生徒の生成AI(Chat GPT、Copilot)活用を開始。県の教育情報化推進室の協力の下でGoogleの規約が改定され、生徒(未成年)もGeminiが利用できるようになった。
校内研修は時間にとらわれず各自で行えるよう工夫している。
Googleサイトを利用した「ICT通信」を発信し、各教員の授業の様子や校外研修の学びを紹介。以前はGoogleドキュメントで作成しPDFで共有していたが、Googleサイトで教員のみ閲覧可能としたことでより利便性が向上した。
全教員が参加するGoogleチャットも活用。活用方法や課題の共有のほか、トラブルにも迅速に対応できるようになった。
GeminiとGoogleスプレッドシートを用い、ICTに関する教職員向け質問対応のチャットボットを作成。教員からのICTに関する質問を読み込ませており、困りごとはまずここで解決できるようにした。
チャットボットは美術科の授業にも応用。配布した資料や板書のデータを読み込ませ、授業に関する質問に応答する。チャットボットでも解決しない内容やより高度な内容を質問したい生徒に注力できるようになった。
生徒は授業外で課題の制作に取り組む際にも活用しており、生徒向け授業アンケートでも好評価だった。今後は、他教科や共通テストへの対策、進路指導などにも応用したいと考えている。
レポートの採点もGeminiとスプレッドシートを利用。「高校の美術教員の視点で、作品制作のふり返りのレポートについてルーブリック評価を行う」ためのプロンプトをGeminiに作成してもらい、評価のたたき台として活用。参考資料として生徒にも共有している。
チャットボットやレポート採点は、APIキーを取得してスプレッドシートのセル内に関数のようにGeminiを埋め込むことができる機能を用いている。安藤昇氏・青山学院大学・青山学院中等部非常勤講師のYouTubeチャンネルを参考にして作成した。
探究の論文添削には生成AI「Claude」を利用。Claudeは長文を読み込ませるのに適していると感じている。
要録所見の下書き作成にはCopilotを利用。Microsoft365にログインすることで、Excelファイルの添付と書き出しが可能だ。Googleフォームで行った生徒アンケートをExcelに変換してCopilotに添付している。AIが作成した要録所見はたたき台として使っており、さらにプロンプトを工夫し精度を高めていきたいと考案中だ。
生徒の生成AI活用では、2年生の進路学習で志望理由書の下書き作成にChatGPTを利用。AIをキャリアカウンセラーとして思考を壁打ちすることで進路のイメージが具体化した。2024年度は一部での検証段階だが、生徒の反応は良好である。
2024年度は授業活用に取り組んだ。美術科では、表現活動の相談相手として利用。「何をすればよいかわからない」生徒には効果的だが、創造活動の妨げにならないよう工夫が必要だと感じている。
音楽科では、作曲の授業で作詞の校正に利用したり、完成作品についてグループワークで意見交換を行う前に生成AIで想定問答を試したりした。
書道の授業では、書道パフォーマンスで書く文字についてグループワークで相談する際に相談相手の1人として利用。
英語科では英会話の相手役として、AIを教科書本文中の登場人物になりきらせて会話した。授業内容と関係のない会話をしてしまう生徒もいたが、課題や反省点も含めて教員間で共有し改善につなげている。
アクティブ・ラーニング型授業において、ペアワークやグループワークの相手に生成AIが加わることで、新たな視点や論点を得ることができていた。また、美術の映像制作にBGMをつけるなど生徒自身が最も取り組みたいこと以外の補佐や、個別最適な学びのサポートとして有用である。
生成AIはあくまで補助をするものであり参考・叩き台として利用すること、生徒が自ら考え解決する活動を教員がコーディネートすることが重要だ。生徒と共に試行錯誤しながら進めているところだ。
【第119回教育委員会対象セミナー・岡山:2025年3月27日】