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教育ICT

学歴から学習履歴へ デジタルバッジでスキルを証明

2021年10月5日

様々な学習ツールをLMS上で活用できる規格「IMS技術標準」は、今後の初等中等教育の学習プラットフォームの在り方にも影響を与えるものだ。「IMS技術標準」を採用することで、学習管理システムや校務システム、試験システムなど各種教育情報システム間の相互運用性を高めることができる。既に海外で一般化しつつあり、日本でも大学等で活用が始まっている。9月9~11日、一般社団法人日本IMS協会(白井克彦理事長・早稲田大学名誉顧問)は「学びのDX」を実現する国際技術標準をテーマに、オンラインで「IMSJapanカンファレンス2021」を開催した。日本IMS協会は、世界の教育デジタルエコシステム作りを牽引する団体IMS―GLCの活動に参加し、国内における教育のためのIT技術標準の開発・普及促進を行っている。白井理事長は、「ここ1、2年で急速にオンライン教育が始まっている。オンライン教育普及のためには、標準化がキーになる」と語る。

デジタルバッジの例(日本IMS協会Webより)

■「オープンバッジ」で学習履歴をつなぐ

「学歴」ではなく「学習履歴」の重要性が注目されている。

この「学習履歴」――知識・スキル・経験のデジタル証明として、オープンバッジの急速な普及が始まっている。

オープンバッジとは、IMS技術標準の規格の1つ。誰がどのようなスキルを身につけたのか、終生の学びの履歴等を世界共通で証明することができ、実質的に偽造・改ざん不可能で、これまで紙で配布していた証明書をデジタル化できるものだ。この規格で発行されたものは、デジタルバッジとも呼ばれる。日本では400種類以上、全世界では1億以上の発行がある。デジタルバッジは、メール署名につけたり、SNS等で共有することもできる。

日本発行のデジタルバッジはIMS Globalのオープンバッジ3機能(発行/表示/保管)すべての認定を受けており、一財・オープンバッジ・ネットワーク財団の会員であれば無料で発行することができる。

■海外で一般化進むオープンバッジ

オープンバッジの仕組みは海外では一般化しつつある。海外では、バッジをもっている人を採用するという「ニューカラー採用」が始まっており、デジタルバッジの発行により受講申し込み数、最終試験合格率及び修了率がいずれも伸びているという報告がある。

ハーバード大学ITアカデミーは6領域で4段階のバッチを発行。ミラノ工科大学は、150種類ほどのバッジを発行しており、ヨーロッパ内で単位互換もできる。ペンシルベニア州立大学は、バッジを階層化。学習ルートを示し3階層のバッジを発行しており、カリキュラム発行がわかりやすくなっている。

国内では、長崎大学や横浜国立大学、関西学院大学、中央大学で試みが始まっている。

日本数学検定協会は昨年より、紙の合格証を廃止し、デジタルバッジを発行。受験者数増にもつながった。同協会で始まったばかりのデータサイエンス数学ストラテジストもデジタルバッジを発行している。

一般企業でも活用がスタート。NECでは営業力強化に向けて研修終了の際にデジタルバッジを発行。IBMでは、学習履歴をもとにした採用が約20%になっているという。

三重県産業支援センターは女性のキャリアアップ研修で発行。地方自治体では初だという。

■大阪教育大学はデジタルバッジを階層化

大阪教育大学学術部学術連携課は、NPO法人CCC―TIES(大学コンソーシアムを母体として設立)と連携して2014年、日本への留学を目指す学習者に向けてデジタルバッジの発行をスタート。ビデオやクイズ形式の課題をうめこみ、それに回答するとバッジが発行されるもの。独自アイデアでバッジを階層化しており、複数の小バッジを獲得すると、証明書として利用できるオープンバッジを取得できる仕組みとした。

2020年はコロナ禍もあり、毎年約10万人が受講する教員免許状更新講習の6割が中止。通信式のコア科目4科目をオンライン実施とし、修了した人だけが認定試験を受けられるようにし、その履修完了者にオープンバッジを発行。モチベーション向上につながった。オンラインの場合、従来は、履修が完了しているかどうかの問い合わせが届いていたが、デジタルバッジ発行により、同様の問い合わせはゼロであった。オープンバッジは有効期限を設けることができるので、更新期限である20223月を有効期限とした。デジタルバッジの発行により、修了証の再発行の手間が不要になる。また、従来、紙の修了証を教育委員会に渡すと、過去にどのような科目を受講したのかわからなくなるが、本仕組みにより、どのような内容の講習を受けたのか、今後どのような講習を受けるべきなのかもわかり、達成感と今後のキャリアプランの形成にも役立つ。さらに、最適配属にもつながると考えている。

次年度から、デジタルバッジ発行システムに顔認証システムを取り入れる予定。

■サイバー大学も導入予定

オンラインと対面のブレンデッド授業を提供しているサイバー大学は、教育コンテンツと指導者を分離しており、MIT(マサチューセッツ工科大学)など学外の良質なコンテンツを使って学外講師が職能実践教育を行っている。今後、履修証明やスキル単位で、デジタルバッジによる修了証の発行を予定している。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年10月4日号掲載

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申込・プログラムなど詳細

 

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