「第45回全国学校図書館研究大会札幌大会」(主催=北海道学校図書館協会、札幌市学校図書館協議会、公社・全国学校図書館協議会、北海道教育委員会、札幌市教育委員会)は「つなげる つながる学校図書館~確かな学びと豊かな心」を研究主題とし、すべて対面で開催。
次の5つの重点課題をもとに、70余のシンポジウムや講演会、分科会等が実施された=
①学びを培う学習センター、情報センターとしての学校図書館、②言葉の力を培い、豊かな心を育む読書センターとしての学校図書館、③司書教諭や学校司書等の学校図書館スタッフの役割と、その協働のあり方、④地域・家庭との連携のあり方、⑤特別な支援を必要とする児童・生徒を支える学校図書館(「大会基調」<札幌大会運営委員会研究部・佐藤敬子部長>より)。
本項では、学校図書館における包括性や、地域の特徴や状況に応じた柔軟な取組、幼小連携や教育ICT活用、学校図書館の最新の動向に着目した。

文部科学省総合教育政策局地域学習推進課・藤岡謙一課長による「次期学習指導要領と学校図書館」
3日間にわたり幅広いテーマで講演やシンポジウムなどが開催された。
宇宙飛行士の毛利衛氏による記念講演「宇宙から見た学校図書館の未来」をはじめ、講演「今、原点に帰る~学校図書館法制定73年」(元・藤女子大学教授・渡邊重夫氏)(いずれも10日)、講演「子どもたちの瞳の奥に~写真家が出会った子どもたち」(写真家 長倉洋海氏、11日)など。
シンポジウムは「戦争と平和をどう語り継ぐか~学校図書館の役割」は作家のアーサー・ビナード氏と森越智子氏、童心社の橋口英二郎編集長、北海道被爆者連絡センターの北明邦雄共同代表理事、北海道新聞社報道部の工藤俊吾氏が登壇。また「ICTと学校図書館」は、群馬県甘楽町立福島小学校前司書教諭・青木いず美氏、北海道札幌市立八条中学校・松森亮介司書教諭、大妻女子大学教職総合支援センター・有山裕美子特任准教授が登壇し、司会は帝京大学教育学部鎌田和宏教授(いずれも11日)。
また「情報リテラシーで育むアイヌ文化理解と差別に流されない判断力の育成」(佐々木博司氏)といった北海道ならではの講義や実践発表も多数行われた。
北海道を中心に、小学校、中学校の実践発表や研究討議を紹介する。

こどもの本ブックフェア会場
2校・園が発表した。「読書が日常になるはたらきかけ」(発表者=南幌町立南幌小学校元司書教諭・古関亮子氏)は、子供たちの読書の幅を広げられる仕掛けを紹介した。「おはなし会」では大型絵本の読み聞かせや紙芝居、手遊び・全身遊び、本にまつわる紙工作を行うことで、子供たちが本の世界に浸って楽しみ、自ら本を手に取るようになるよう取り組んだ。
「小学校へつながる幼児の読書体験」(発表者=認定こども園聖ミカエル幼稚園・石渡秀子教諭)では未就学児の主体的な読書を育む実践が紹介された。同園では1日の流れの中で朝と帰りの会の2回、絵本を読む時間が設定され、生活リズムに溶け込んでいる。園内には専属司書がいる「絵本の部屋」があり、週1回貸出日を設けている。
同園では3歳児から5歳児まで異年齢のクラス(縦割り)で保育を実施。1年間を通じて「主体的な読書」への成長を目指し、1学期から新入園児も一緒に読み聞かせを通じて絵本の楽しさを提供する。
その際、教員の一番近くに年少、次に年中、一番外側に年長が座る。体格差があっても見やすく、外側に座っている年長ならではの集中力が全体を包み、伝播する。2学期は絵本の物語を実際の遊びに取り入れて体験したり、長編物語を読む集中力を養う。3学期には対象年齢以上の絵本を好んで借りるようになるという。
5、6歳児は絵本に限らず文字の多い本も読むことで、小学生になってから文字の本への移行がスムーズになるという。小学校との連携として3学期に年長児が小学校見学をする際、学校図書館で絵本を読む時間を設けてもらっている。

参加者から積極的な質問が寄せられた(「さまざまな形態の学校図書館づくり」)
2校が発表した。「義務教育学校の学校図書館」で紹介したのは、2025年4月に札幌市内2校目の義務教育学校として開校した札幌市立義務教育学校定山渓学園(発表者=福田結子司書教諭)の取組。
学校図書館設立に向けた取組は開校前の2023年から始まった。「開校0年度」として、パートナー校である定山渓小学校との連携が始まり、学校図書館準備チームが設立された。メンバーは小・中学校の教員各1名、司書1名の3名。各校の蔵書数と新設校舎の図面を確認し、収容蔵書数を決定。途中学校事務1名が加わり、NDCの配列や什器、内装など準備を進めていった。
分科会では、この図書の廃棄・統合、新規購入リストの作成などの実際を紹介。やってよかったことの一つは「図面を熟読すること」だという。また小学生と中学生、本好きの子、居場所を求めている子が共生できるよう、ゾーニングを工夫、7~15歳までが同じ書架を共に使うための配架の工夫などを紹介した。
2016年に制度化された義務教育学校は、9年間の「連続性」と「学びの接続」を意識した教育活動を実施。「前期課程(小学校)」と「後期課程」(中学校)」を一つの集団と捉え、柔軟なカリキュラム編成を理念とする。日常的な異学年交流や、ギャップや不安の解消がその目的だ。児童生徒もその理念や目的を求めて入学する。福田司書教諭は、学校図書館もその理念に寄り添ったものであるべきと話す。
なお同校の校訓は「友愛・共生」である。
苫小牧市立苫小牧東小学校、苫小牧東中学校(発表者=山田貴子学校司書)は、小学校と中学校が2020年に同じ敷地内に校舎を併設。小学校と中学校をつなぐ共用部分の3階に学校図書館が整備されており、その運営や選書、共用するメリット・デメリットなどを紹介した。

「学校図書館クリニック」では、見取り図など実際のようすを紹介
発表者の北海道旭川市立中学校元司書教諭の加藤直子氏は中学校の国語科教諭、特別支援教諭として勤務するなかで、36年間学校図書館を担当し、2003年からは20年間司書教諭の職務にあたった。
資料を探しやすい学校図書館とするための大掛かりな改善を行うには担当教員一人では難しい。そこで「学校図書館クリニック」の取組では、公共図書館の司書を講師に招き、日頃学校図書館を運営していて分からないことなどについて相談し、会場校の配架や分類・ディスプレイについてアドバイスを受ける。
アドバイスを受けた会場校では校内でその内容を検討し、自校の改善についてワークショップを行い、作業内容の確認を行った後、夏休みなどを利用して他校の教職員やボランティアの協力を得て、一日かけて学校図書館の改善に取り組む。アドバイスを受けるための見取り図作成などの準備や、各校で学校図書館を運営している仲間でチームを組み、協力し合うなど、具体的な方策を紹介した。
初めて「学校図書館クリニック」が行われたのは2005年の第36回北海道学校図書館研究大会旭川大会で、加藤氏の当時の勤務校の学校図書館が会場となった。その後旭川市、道内各地に広がり、現在も実施されている。
加藤氏は「とにかく人手、時間が足りない、という場合には、学校図書館クリニックは有効な手法ではないか」と話す。司書教諭がイニシアチブをとり、公共図書館など外部とのつながりを持つことが大切という。
2校が発表した。「学校図書館×ICT」(発表者=北海道北見市立西小学校・添田佐奈枝司書教諭)は、1人1台端末の活用が日常化するなかで、ネットも含めてあらゆる情報の中から子供たちが取捨選択できる力をつけて欲しいと考え、PCを介して情報を発信し、学校図書館を使う機会を増やしていくことに取り組んだ。
教職員向けの資料のデータを整理し、フォルダではなくリンクですぐに見つけられるようにしたり、学校図書館の利用指導についての動画をCanvaで作り、音声は「音読さん」を使用したりして作成したものを共有している。クラスルームの活用や、CanvaのAIを活用して児童や学校司書が作ったぬりえやシールの景品などを紹介した。
「『アナログ』と『デジタル』のベストミックス」(発表者=島根県浜田市立松原小学校・川神和子教頭)では「学び方指導体系表」をもとにした情報活用能力の育成や実践を紹介した。
発表者は札幌市立稲積中学校司書教諭で「なるべさALLY(アライ)」副代表の松澤真凜氏。
性的マイノリティの割合は10人に1人とされている。社会的な困りごとに直面したり、ハラスメントの経験なども要因となり、10代の性的マイノリティ当事者の自殺リスクは高い。過去1年間にハラスメントを経験した中高生のうち、63・8%は教職員に由来するという調査結果もある。研修などを通して教職員がLGBTQ+への理解を深める必要がある。
そこで本研究討議では、まず性の多様性に関する基礎知識として「LGBTQ+」「SOGIESC」(性的思考・性自認・性表現・出生時の性)を解説した。
松澤司書教諭が副代表を務める「なるべさALLY」は当事者とALLYが所属。ALLYとは「味方」「仲間」を意味する英単語が由来で当事者ではなくても協力したい、支援したい、連帯したい、と思う人たちのことを指す。その理念を学校に広げる「教職員総ALLY計画」を松澤司書教諭は提案。多様な生徒に寄り添い、詳しい人や適切な団体につなげるといった対応が大切だ。
札幌市教育委員会のリーフレット「LGBTsとは」や、全国SLAの『学校図書館のメディア選定に関するガイドライン』でも、LGBTQ+や性の在り方について正しい知識を得られる図書を学校図書館に置くことを示している。分科会で同校のコーナー展示を紹介した(=写真)。
「どうしたら(困りごと)が解消できるのか」を考えられる本を選書する必要がある。

学校司書が集めた新聞記事と併せて、LGBTQ+、多様性、ジェンダーに関わる本を展示する。分科会会場で再現し選書のポイントを解説(「性の多様性と学校図書館」)
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年9月28日号掲載
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