日本の小学生を対象にした非認知能力育成プロジェクト「LoT(Leaders of Tomorrow)」が本年1月、川崎市立犬蔵小学校での初実施を皮切りに全国展開を進めている。初年度目標である子供8000人へのプログラム提供はすでに達成した。
LoTとは何か。なぜ日本でスタートし、どのような価値を学校現場にもたらすのか。リバプールFC財団のCEOであるマット・パリッシュ氏に聞いた。

リバプールFC財団CEOマット・パリッシュ氏
――非認知能力育成プロジェクト「LoT」の特徴と開発の目的を教えてください
LoTは、リバプールFC財団(Liverpool FC Foundation)が日本財団と共に開発した新しい教育プログラムだ。スポーツの力を活用したリーダーシップ教育プログラムで、非認知能力(主体性・協働・自己効力感・レジリエンスなど)を高め、未来のリーダーを育成することを目的としている。
英国リバプールFCサッカースクールは「サッカースキル+非認知能力育成スクール」として知られている。その非認知能力育成の部分をLoTに応用している。世界的に「主体性・協働・創造性・粘り強さ」などが教育の中心テーマとなるなか、スポーツは非認知能力育成に適した環境の一つだ。
――具体的にはどのようなプログラムですか
子供向けプログラムでは、スポーツアクティビティを通して「考える・選ぶ・協力する」を体験することでチームワーク、リーダーシップ、課題解決力を育む機会を提供する。
役割を決め、チームで協力が必要な課題に取り組み、ルールも子供たちと共に決める。話し合い、伝え合い、ふり返り、失敗と挑戦を繰り返すことで「自ら気づく」プロセスを重視している。成長で評価すべきは結果ではなくプロセスであるためだ。
リバプールFC財団が派遣するコーチは、問いかけを通して子供自身の思考を引き出す役割を担う。
授業は1回あたり45~60分を目安とし、学校ニーズに応じて内容や時期を調整している。今年度の例では、最大7回実施した学校もある。
――LoTを受講して、子供や教員にどのような変化や気付きがありますか
子供たちはLoTのプログラムで次のような経験が可能だ。
☑失敗を恐れず挑戦すること
☑自分の意見を言語化して伝えること
☑仲間と協力すること
☑国際的なクラブの文化に触れること
これらの経験により、自らが変化するプロセスを意識できるようになり、自信につながっていく。国際的なクラブの文化に触れることは視野を広げることにもつながる
教員からは、次のような声が届いている。
☑次期学習指導要領が掲げる非認知能力育成の具体例として活用できる
☑体育科だけでなく学級経営にも応用できる
☑子供の新たな側面の発見につながる
――日本でLoTを展開した理由は
リバプールFC財団は、イングランド・プレミアリーグに所属するリバプールFCの公式慈善団体だ。
財団の使命は、社会的不平等の解消に取り組むこと。そのために、健康の促進、学習支援、就業機会の向上などの活動を行っており、これまでに6か国で23万9000人以上の参加者を支援している。
こうした国内外での成果を、日本財団と連携して日本の小学生に届け、ともに「明日のリーダー」を育成したいと考え、日本向けのプログラム開発に臨んだ。
本取組をきっかけに、今後アジア各国への拡大も視野に入れている。
――今後の展開は
初年度目標である子供8000人への提供を達成し、LoTは日本の教育に新しい可能性を提示できたのではないかと考えている。次年度は1万2000人の子供たちへの提供を目標に、新たなスタートを切ったところだ。
このほか指導者向けプログラムも提供しており、本プログラムの理念や指導方針に共感し、意欲的に取り組まれた方には、認定コーチとして本プログラムの指導現場に立つ機会の提供も考えている。
LoTの参加に興味のある学校・自治体はぜひ問い合わせてほしい。
【次回は本プロジェクトに協力している日本財団のインタビューを予定】
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年10月26日号掲載