すららネットは8月30日、カンボジア教育・青少年・スポーツ省(MoEYS)と、数学教育の質向上と教員育成を目的とした5年間のプロジェクトに合意する協力覚書を締結したことを発表した。本プロジェクト「EdTechを活用した数学における児童生徒の学業向上と教師の能力向上プロジェクト」は、2025年2月から2029年12月まで実施される。
今回のプロジェクトは、公財・CIESFがカンボジア教育省と共にプノンペンに設立した小学校CIESF Leaders Academy(CLA)に2023年、ハン・チュオン・ナロン教育大臣(当時)が視察をしたことがきっかけになっている。CLAでは2022年から「すらら」を教材として使っており、その生徒の様子を見たナロン教育大臣の指示で連携が検討され、その後、公立のNew Geraneration SchoolのSisowath校とYukuntor校で英語版のSurala Mathのトライアルが実施された。
また、2024年12月には、経済産業省「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択され、2025年2月より小学生向けクメール語版算数/数学ICT教材「Surala Math」の開発と、4校の公立小学校での実証を目指す事業を開始。本事業では生徒の学力や学習意欲の変化を測定するとともに、ICTを活用した授業を運営できる教員の育成や授業運営マニュアルの開発も進める計画だ。本事業の採択を受けて今回の協力覚書締結に至ったという。
本プロジェクトは、児童生徒の数学力の向上と同時に、教員に対するICT教育スキルの育成を主眼としている。クメール語によるデジタル教材の開発、教育資源の拡充、教育現場におけるICT活用の促進などを通じ、カンボジアの教育省が目指す数学教育を国際水準へと引き上げることへの貢献を目指す。
現在開発が進むクメール語版「Surala Math」の一部は間もなくリリース予定で、カンボジアの新年度が始まる10月には教育省と連携し4校の公立小学校で3年生を対象としたパイロット授業を開始する計画だ。教員の授業設計力を高める研修も行い、公教育が直面する課題の解決にも取り組むという。4校でのパイロット授業の実現に必要な150台のパソコン調達も現在日本国内で進めており、今後も教育省と協力してICT環境の整備を段階的に進めていく。
初年度のパイロット活動でクメール語版「Surala Math」の有効性を検証した後、カンボジア全土の公立・私立学校への普及に向けた活動を開始する予定。教育省は2015年からNGSイニシアティブという教育改革プロジェクトを推進しており、モデル校であるNew Geraneration Schoolの2校で既に英語版の「Surala Math」が導入されている。英語版に加えてクメール語版「Surala Math」の導入も拡大していき、5年間で公立学校を含む様々な教育機関において、約2万人の児童生徒の活用が実現することを本プロジェクトでは目標に掲げている。
インタラクティブなアニメーションを通じて、加減乗除の四則計算を中心とした算数を楽しく学べる「Surala Ninja!」と、「すらら」の算数/数学を海外向けにローカライズし、各国のシラバスに対応させた小学校・中学校向けのICT教材。
生徒は自身のデバイスで自分のペースで学習できるとともに、指導者は学習管理システムを通じて生徒の学習の進捗や理解度を把握した上で学習内容を調整でき、生徒一人ひとりにあわせた個別最適な学習を実現する。
インドネシア語版、スリランカ向けのシンハラ語版、主にフィリピンやインド、エジプトで活用されている英語版がある。現在英語版、インドネシア語版については小学校高学年範囲から一部中学範囲まで開発しており、今回のプロジェクトでは新たにカンボジアに向けたクメール語版の開発を進めることになった。