文部科学省による「学校・教師が担う業務に係る3分類」では、教材費等の学校徴収金の徴収・管理は「基本的には学校以外が担うべき業務」とされている。教職員や保護者の負担軽減のため学校徴収金のデジタル化を図っている2校に導入の経緯と工夫、成果を聞いた。那覇市立曙小学校では2025年度5月から、同・小禄南小学校では4学年において2学期から、口座直結決済やコンビニ決済ができる集金システム「スクペイ」の導入を開始している。

金城里子教諭
曙小学校には265人の児童が在籍しており、ドリルやテストなどの教材費は各学級で現金徴収を行っていました。
中でも課題だったのは、教材関連業者が来校する日までに業者別に現金を用意する必要があることでした。
また、集金担当の教員が業者側の金額確認に立ち会い、多くの時間を割く必要があり、この業務の解決法を探していました。
本校では、理想科学工業㈱が提供する学校連絡ツール「スクリレ」を導入しています。
これと連携ができる集金サービス「スクペイ」をMEME社が提供していると聞き、まず仕組みを理解したいと考えて、新年度を迎える前に説明を受けました。
導入の最大の決め手は、今年度から提供が開始された新機能「スクペイα」です。「教員が行っていた業者への支払い作業が不要になる」という点が画期的でした。この機能を使えば学校と業者双方にとっての業務改善につながる、さらに学校と業者だけでなく保護者にとっても有益であると感じました。
ぜひ導入したいという強い思いをもって、保護者には手紙やアンケートで意向を確認し、教員に対しても、方針を示すとともに説明会や研修を複数回実施するなど、理解を深める努力を重ねました。
オンラインでの徴収は未経験であり、スクペイαは新機能で事例がなかったため、不安や疑問が生じるたびにスクペイの担当者に連絡を取り、その都度、解決した情報を校内に共有しました。
その結果、導入についての反対はほぼなく「まずは挑戦してみよう」という雰囲気で進めることができました。
初期費用は不要ですが、年間のシステム利用料は必要です。
PTA役員に相談したところ、PTA会費負担で進めることとなり、保護者は支払い都度の手数料の負担もなく口座直結払いかコンビニ決済での支払いが可能となりました。

教員業務支援員 桃原亜矢さん
導入後の実務を担当したのが教員業務支援員の桃原さんです。
保護者は口座登録をスマートフォン上で行う必要がありますが、機器操作が苦手、アカウントを作成していないという保護者も一定数います。
教員業務支援員が電話での問合せに対応するほか、発表会や参観日など保護者が来校するタイミングで個別相談ブースを設置し、一緒に登録作業をしたりホーム画面からすぐに振込画面にアクセスできるように設定したりしました。
おかげで99%の保護者のスクペイαの登録が完了しています。
導入時は学校口座登録や各家庭へのアカウント登録の促進など複数の作業がありましたが、運用開始後はスムーズに進んでいます。
現在、学級担任は請求内容を業者へ確認し、請求発行ボタンを押すだけになりました。
支払いが滞っている家庭への連絡も、ボタンを押すだけでメールを送信できます。教員の時間的、精神的な負担が大幅に軽減されました。
保護者は、スマートフォンに支払い通知が届き、その場で決済が完了します。コンビニ決済も選択可能です。
11月に保護者に向けてアンケートを行ったところ、回答した保護者の約9割が「次年度も継続して利用したい」と回答しており、子供に現金を持たせることがなくなり、小銭の用意や集金袋の管理が不要になったという声が届いています。
導入時は多くの作業を2人で進めてきましたが、今後は、転入生の登録の方法を学級担任に説明するなどして今後の引継ぎがスムーズになるように工夫しています。

金城千秋教諭
教材費やドリルなどの現金徴収業務は教員にとっても保護者にとっても負担の大きいものです。
学級担任は毎月、集金袋に徴収金額を記入し、児童に手渡しをしますが、手作業のためミスや支払い忘れも生じやすく、現金のやりとりの際に学校と家庭、児童の間で何らかのトラブルが起こることもあります。
集金袋から小銭を落とす、集金袋そのものを紛失することもあります。
多くの教員は、集金袋から小銭が漏れないよう、年度当初の多忙な時期に、クラス全児童分の集金袋の口に穴を空け粘着テープを用いて開閉できるような工夫をしています。また、本市の多くの小学校には集めた現金を保管する金庫がなく、数万~数十万円単位の現金の管理に悩まされていました。
改善策を考えていた際に聞いたのが、曙小学校でのスクペイの導入です。
私が学年会計担当であったこともあり、本校でもぜひ挑戦したいと所属学年で提案したところ、テストケースとして4学年だけで2学期から導入することとなりました。
学校長はもともと中学校勤務が長く、小学校で毎月のように生じる現金徴収業務の煩雑さに驚いていたそうで「やってみよう、上手くいかなければまた改善策を考えよう」と後押しをして下さいました。業者も曙小学校と共通だったため、すぐに対応していただくことができました。
保護者には夏休み明けに、集金サービス導入についてお知らせし、「今後数年かけて学校現場からは現金徴収がなくなる方向である」ことを伝えてご理解いただきました。
システム利用料は保護者負担で進め、無事に2学期にスクペイを利用した初回の集金を行うことができました。
保護者向けに設置されているスクペイサポートセンターに直接連絡して不明点を聞く保護者もいたようです。
導入後は他学年から使い勝手を聞かれており、集金袋や小銭、大金の取り扱いや業者との調整から解放されることの良さを伝えています。
学校口座の開設や保護者の口座登録作業に時間は必要ですが、それさえできれば運用は楽になると感じています。
今年度の学校徴収金は年内にすませ、1~3月には次の準備を進めます。
次年度、学校全体の導入になるのか、学年ごとに判断して導入するのかは今の時点では不明ですが、経験して初めてわかることもあり、スムーズに引き継げるように知見をまとめ、必要な手続きを行う予定です。
現在4学年に所属する3人の教員は、次年度には別学年に分かれる可能性もあり、それぞれの所属学年でスクペイを広げていければと考えています。
【編集部注】本記事で紹介した「スクペイ」を提供する㈱MEMEは取材時点(2025年11月25日)で他社と特許係争中だがサービス利用に支障はない。なおスクペイの口座直結決済を用いた集金プログラムは特許取得済み
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年12月8日号掲載