中西製作所はpluszeroと共同で、「コンテナ積載最適化システム」、「配送最適化システム」、「図面管理システム」といった、学校給食関連事業の業務を効率化する3つのAIシステムを開発し、特許を出願した。
中西製作所が設計・施工する給食室や給食センターでは、食中毒等を予防するため、文部科学省が定めた「学校給食衛生管理基準」に則った管理・運用が求められている。そのためには、調理スペースのレイアウトや働く人の動線についても専門的知識やノウハウが不可欠となる。
特に学校給食では地域ごと・学校ごと・年度ごとに、メニューの種類・クラスの数・児童の数が変動することに対応しつつ、人手不足の中、最少人数で迅速かつ効率的に調理・配送・配膳を行う仕組みが求められる。
今回開発した3つのシステムにより、こうした学校給食関連作業のさらなる業務効率化、品質と精度向上を行い、人材不足の解消を図る。この3つのシステムには、それぞれ異なるAI技術が活用されており、これらの技術について、現在特許を出願中となる。
中西製作所は、2023年に策定したコーポレートスローガン「いただきますの未来を作る。」のもと、学校給食事業や外食事業を通じて、より豊かな食生活の実現を目指し、2023年7月に厨房業界初となるDX認定を取得。同社では今後もAIをはじめとしたIT技術を活用したDXに取り組み、給食室や給食センターの業務効率化や省人化、品質・精度の向上に貢献する。
<①コンテナ積載最適化システム>
【開発の背景と課題】
学校給食において使われる食器や食缶は、毎日コンテナやカートと呼ばれる台車に積載して学校へ運ばれ、クラスへ届けられる。給食センターの計画にあたっては、学校ごとに必要なコンテナの台数を算出することが求められる。その際にコンテナの積載検討を行う必要があり、人力での検討には非常に時間を要していた。
【本システムによる課題解決】
今回、中西製作所とpluszeroが開発したシステムでは、食器の形状や数が決まった状態から、クラスの数や児童の人数をパラメータとして入力。これにより、食器カゴへの詰め方やコンテナやカートなどへの積載位置について、給食の入った食缶との組み合わせも考慮しながらシミュレーションを行い、最適な積載方法を提案できる。
【特許出願のポイント】
コンテナやカートなどへの積載シミュレーションを行い、最適な積載方法の提案をAIにさせる技術を開発して特許を出願した。
現物収納写真
<②配送最適化システム>
【開発の背景と課題】
学校給食センターから小中学校など各施設への配送は「調理後2時間以内に喫食」できるよう努める必要がある。これを遵守するためには各施設の給食時間やコンテナ台数を考慮しつつ、トラックの効率的な巡回ルートを計画しなければならない。昨今の人手不足下ではトラックの台数を最小化して運転手を最少人数とすることも求められており、巡回ルートを考えるのは非常に現場負担の高い手間のかかる作業となっていた。
【本システムによる課題解決】
これまでは2時間喫食というルールを考慮しながら、地図を見ながら人力で計画していたが、このシステムではAIによって最適な配送ルートが提案される。トラックの大きさと配送するコンテナ、順序などを複合的に勘案し、トラックと運転手の数を最小化する。
【特許出願のポイント】
配送地点の位置と経路情報、配送コンテナ数、給食開始時間、給食の受入可能時間などの諸条件から、最適な配送計画をAIに策定させる技術を開発し、特許出願した。
配送計画案イメージ
<③図面管理システム>
【開発の背景と課題】
中西製作所では過去30年以上にわたりCADを利用して全国の小中学校の給食室や給食センターの設計を行ってきた。給食室のレイアウトは学校の立地によって大きく左右され、給食センターに求められる機能や役割は時代ごと、自治体ごとに異なる。こうした過去の給食室や給食センターの図面はファイルサーバー上に保存され共有されていたが、図面データ形式あるいはPDF形式のために検索性が低く、過去の類似案件を参考にするような場合でも直ぐには取り出すことができず、周りに聞かなければならない状況だった。
【本システムによる課題解決】
過去図面の格納されたフォルダーをクローリングし、AIを用いて図面における給食センターの形状や設置機械の詳細を把握するシステムを開発。把握した形状や機械の詳細情報はキーワードとタグとして保管する。並行して過去図面を検索できるシステムを拡張し、キーワードやタグを各種条件として検索できるようにした。これにより、約75万枚もの過去図面を簡易的に判断、分類することが可能となった。
【特許出願のポイント】
給食室や給食センターの設計図面の形状や特徴について、図面上のテキストデータに記載された場所(座標)と意味を組み合わせた判定をAIに行わせる技術を開発し、特許出願した。
検索画面イメージ