日外アソシエーツより『中高生のためのブックガイド ネットとAI時代の情報リテラシー -調べ、考え、発信する力』が5月に刊行された。情報リテラシーを身につけるための本400冊をテーマ別に紹介している。
監修した梅澤貴典氏は中央大学の職員であり、図書館司書として勤務した経験を活かし、都留文科大学で学生向けの学術情報リテラシーの講師を務めるほか、中高生向けの出前授業などを行っている。

梅澤氏。著書はほかに『ネット情報におぼれない学び方』(岩波ジュニア新書)
──本書を監修したきっかけは
中学校、高等学校の探究的な学びの必修化と、児童生徒の1人1台端末が普及したのがほぼ同時期だったためか、探究活動の際にインターネットの検索結果や生成AIから得られた情報だけを切り張りしてまとめる、といった手法がとられがちです。
現場の先生方はそれが児童生徒の本当の課題解決力の育成にはつながっていないと悩みつつも、なかなか体系的に調べ方やまとめ方を学ぶ時間を確保できないというジレンマを抱えていると知りました。そこで、先生方の手助けとなり、子供たち自身も自ら学ぶ力をつけるためのブックガイドを作ろう、というのが本書の始まりです。
私自身は生徒や学生たちの授業を通じて、一度きちんと本や図書館を使った調べ方を学べば、子供たちの課題解決力は爆発的に伸びることを実感していました。授業を受けた中学生からは「これまでインターネットでの検索しか調べる方法を知らなかったから、他の手段を知ることができて嬉しい」といった感想も聞かれます。
図書館にある豊かで確かな情報源を使って、目的に応じて本やデータベースを使い分け、自分の興味関心に則って調べることは楽しい。調べたい資料がすぐ近くの図書館になかったとしても、図書館は国内外とネットワークでつながっており、膨大な情報にアクセスすることができます。一度この面白さを知ると、子供たちは自分で学ぶ機会をAIに預けることはしたくなくなります。
──本書はどのような本を紹介していますか
まず本書における「情報リテラシー」は、ITスキルではなく“探究活動のための情報活用能力”と定義しました。自身が立ち向かう課題に向けて必要な情報を的確に集める方法、またそれを材料に自分の頭で考え、解決策を探り、発信するために役立ち、かつ10年後、20年後も古くならない本を厳選しています。
章立ても非常に重視しました。出前授業や学生向け図書館ガイダンスでの私自身の試行錯誤も活かされています。
授業では、図書館活用の大切さやインターネットの情報の扱い方など、大人が伝えたいことから話し始めてしまうと、子供たちは聞いてくれません。でも最初にネットや生成AIの情報の怪しさと、調べる意義を伝えることで、子供たちは「じゃあ、どうやったら確かな情報が探せるの?」と渇望します。
本書もそういった流れを意識した構成です。1章は「ネットと生成AIの時代に、なぜ学ぶのか?」をテーマに、池上彰著『なんのために学ぶのか』(SB新書)や、福澤諭吉著『学問ノススメ』などを紹介しました。そして2章から5章までは「信頼できる情報の見きわめ方」「『情報』と『情報化社会』を知る」「AIの可能性と危険性」「課題解決のための情報活用術」と、情報リテラシーとして定番のテーマで展開しています。
──後半の6章、7章ではさらにテーマの幅が広がり、多様な情報を豊富に提供できるブックガイドの良さを感じました
後半はさらに学びを広げる内容に力を入れました。6章では集めた材料をどう捉え、面白さや独自性を出していくのか、アイデアの出し方にも目を向けています。また7章「もっと深く学ぶために」では、阿刀田高著『旧約聖書を知っていますか』(新潮文庫)など、一見情報リテラシーとは関係なさそうですが、今世界で起きていることの根底にあるものを知り、自分の世界を広げられる本を紹介しています。
自分が学んだことは自分に聞けば自分の脳が答えてくれます。私は「脳内四次元ポケット」と呼んでいますが、これを充実させるためにはきちんとした知識を蓄えることが大切です。そして正しい知識を持つだけでは単なる“物知り博士”で、そこがゴールではなく、自分の中に正しい知識や情報があればあるほど有利に働き、何か課題に対峙した時にそれらが繋がって「こうすれば良いのではないか」と泉のように湧いてくると考えています。

日外アソシエーツ/刊
A5判 240頁
税込4180円
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年5月25日号掲載