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図書館

【インタビュー】「情報」の機能に重点~中央大学附属中学校・高等学校 平野誠司書教諭

2021年9月20日
秋の学校図書館特集

平野誠 司書教諭

中央大学附属中学校・高等学校(東京都小金井市)の学校図書館は本館と分館があり、全クラス・全教科において学校図書館内での授業が行われ、図書館の資料を活用した学びが活発だ。本館では2006年に生徒用の1人1台PC1クラス分を配備し、積極的にICTを活用してきた。全国の学校でICT環境が急速に充実する中、学校図書館の果たす役割はどの様な変化を遂げようとしているのか。同校専任の司書教諭である平野誠氏に話を聞いた。

コンテンツを選ぶ力を発揮

――GIGAスクール構想により、11台端末の活用が進んでいます。学校図書館はどう関わっていくのでしょうか。

11台端末は教育現場のあらゆる場面で活用されます。その中で学校図書館が関わるのは、主に「情報」の分野であり、情報の「収集」「提供」が大きな役割であるという根本は従来と変わりません。今まで中心だった紙メディアに、デジタルメディアが加わるということです。

これまでは学校現場に導入するべきデジタルコンテンツは限られていましたし、有料のものも多かった。使えるPCの数も場所も限られていたため、それ程情報・資料として探す対象でもなかった。

しかし今は公共の機関が提供するもの等、無料で閲覧できるインターネット上のコンテンツが次々と誕生し、小・中・高等学校の学習の範囲をカバーできるほど広がっています。11台端末の配備は、それらのコンテンツを皆で一斉に見る装置が手に入ったということで、これは大変画期的なことです。

蔵書や資料が少ない、古い等の環境は急に変えられずとも、11台端末を使えば、それに代わる情報提供を無料でも十分にできる。図書館としての本質的な機能の活用が一気に進む、と未来を明るく考えています。

――今後は学校図書館の機能の中でも、「情報」の部分がよりクローズアップされていく?

実際、学校図書館は先生方への資料提供・授業の支援を含めた、学習・情報センターとしての機能に、より重点が移行しようとしています。

学校教育の中の11台端末というのは、進むことはあっても、もう後戻りはしないでしょう。学校教育に携わる人は、今後は皆、教育者としてそれに対応していくことになります。

ですから、学校図書館に携わる方にもぜひ関心を持って頂き、本を選ぶ力を、デジタルのコンテンツの世界でも生かして欲しいのです。

学校図書館が扱う情報は、全てのメディアが対象となっています。学校の教育課程や子供の発達段階、授業での活用の仕方を考えながら、自校に必要な資料を厳選する。それは紙もデジタルも全く同じです。そして教職員の中でも、その選ぶ力が一番あるのは、司書教諭・学校司書です。今はその最も重要な仕事を披露するチャンスとも言えます。

紙の本の新刊をチェックするのと同様に、様々なリンク集やメールマガジンなどを利用し、インターネット上のコンテンツを気に掛ける。見つけた良いコンテンツは先生方に発信する。それは学校図書館の力を理解して頂くことにもなる。

学校図書館は受け身ではなく、情報を発信することが大切だと思っています。

本校では、経産省の「EdTech導入補助金2021」も受けることができました。こうした補助金への目配りも、先生方の学校図書館への期待に繋がります。

ちなみに、先生方への支援というと、授業に着目してしまいがちですが、まずは趣味や教材研究といった部分での関係を築くことをお勧めします。コンテンツを積極的に紹介し続けることで、先生方が司書教諭・学校司書へ相談がしやすくなります。先生方からも、紙とデジタルの様々なコンテンツの情報が入ってくるようになって、学校図書館の情報もまた充実します。

教員は自分の教科に専念しますが、入ってきた1つの情報が、様々な教科や場面で使えることを理解し、提案できるのも、司書教諭・学校司書ならではです。

――児童生徒の学びも変わりますか。

資料を見ながら話し合う「場」や、子供の「居場所」等の、「館(やかた)」としての学校図書館の機能は今後も必要です。一方で「情報」の機能に関しては、「館」は必ずしも必要ではないかもしれません。

ただ学校図書館の力を活用し、子供たちに卒業するまでにつけて欲しい力はむしろ増えています。特に今必要とされているのは、インターネット上の膨大な情報の中から、正しい情報、クオリティの高い良い情報を見極める力です。

子供たちにとって、多くの情報の中から必要なものを選び出すのは難しい作業ですが、司書教諭・学校司書は選び方の見本を示す役としても適任です。

学校図書館におけるレファレンスの特徴として、子供たちが知りたい情報をすぐに提供するのではなく、書架で該当するNDCの場所や、公共機関のWebサイトを紹介する等、調べ方を道案内するという点が挙げられます。見つからなければ、またヒントを与える。子供たちはそれを繰り返すことで調べ方を学び、情報を探す力や精査する力を身につけていきます。

私の場合は生徒に指導する際、「フリーワード」ではなく「キーワード」で検索するように伝えています。将来生きていくためにも、辞書・事典に掲載される正しい言葉を認識し、求める資料に辿り着くために正しいキーワードを選ぶ。そうした指導にも図書館の知恵が生かせます。

――紙の資料の活用の仕方も変わりますか。

皆さんが紙とデジタルを比較できるようになり、今後それぞれの良さも明確になってくると思います。

例えば新聞は、記事全体を素早く読みたい時は紙の方が読みやすい。端末の画面サイズでは見られる範囲(可読性)に限界があるからで、紙はクリックやスクロールの必要もありません。一方、特定の記事を読みたい場合はデータベースを検索した方が早い。

また紙の資料は一度手に入れば基本的に無くならず、安定していますが、インターネット上の情報は運営者の都合でアクセスできなくなる場合もあり注意が必要です。

紙の可読性と安定性はこれからも必要不可欠です。紙とデジタルの、いわゆるハイブリッドな状況は続くでしょう。

なお、本校では新型コロナウイルス感染症対策として、98日以降、オンラインとリアルの両方で授業を行うことになりました。登校を希望する生徒の受け入れは学校図書館で行います。飛沫防止パネルも完備し、ヘッドホンの耳当て部分は消毒できるように全てビニール製のものに買い替えました。密を避けるため、通常よりも座席数は減らします。

何事も拒まずに、学校図書館が「常にウェルカムである」という姿勢で、様々な場面で活用できると示すことで、学校教育の基盤として信頼されると考えています。

参考Webサイト・コンテンツ

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教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年9月20日号掲載

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