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「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」の見直しに向けて議論~2025年度「第1回 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」文科省

2025年8月2日

2024年度の児童生徒の自殺者数は過去最多の529人となるなど、児童生徒の自殺対策が求められる中、文部科学省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」(以下、協力者会議)は児童生徒の自殺対策に関して検討を進めてきた。自殺対策の取組に向けて一層の充実が求められる中、2025年度の第1回目となる協力者会議がWeb会議で7月2日に開催され、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」の見直しに向けて話し合われた。座長は元九州産業大学教授で臨床心理士・公認心理士の窪田由紀氏。


<主な改訂案のポイント>

「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」は20113月に策定、20147月に改訂された。今回の見直しに向けた主な改定案のポイントは以下の通り。


改訂版では第1章から第6章まで章立ての構成とし、各章の記載内容をより具体化するため、第1節・第2節などに分けて記載する。


1章「背景調査の概要と調査の目的・目標」では20256月に改正された自殺対策基本法で「自殺対策は社会全体で取り組む」となっていることを踏まえて背景調査の目的を追加。自殺または自殺が疑われる死亡事案が発生した場合の調査全体の流れが分かるようにフロー図を記載。


「第2章 平常時からの備え」は、自殺または自殺が疑われる死亡事案が発生した場合、速やかに調査へ移行できるように平常時からの備えを明確に記載。また、自殺を生じさせないことが重要であるため相談体制の充実やリスクを抱えた児童生徒への組織的対応の重要性を追記する。


11台端末を活用した心の健康観察」の導入を推進し、学校内での速やかな情報共有や迅速な対応をすることが重要であることを記載。また、今回の自殺対策基本法で規定された心の健康の保持のための健康診断の措置や精神保健に関する内容なども追記する。


・「
3章 基本調査の実施」では、事案発生直後に遺族に寄り添った対応ができるよう、遺族へ説明する際の様式例を示し、これを活用して背景調査について説明する。詳細調査については意向確認の様式を新たに設け、遺族の希望を確認して調査にあたることを追記。


「第4章 詳細調査への移行の判断」では、学校と遺族の情報共有を図るため意向確認書を活用して、遺族に詳細調査を実施する際には希望を聞き取るようにする。また、アンケート調査や聴き取り調査については、速やかに実施する必要があることから、遺族の希望などがある場合は先行して実施できることを追記。


「第5章 詳細調査の実施」では、体罰や不適切な指導が背景にあると疑われる自殺事案などは中立性や公平性を確保する必要があるため具体例を追記。児童生徒に対して自殺の事実を伝えて調査などを行う場合は遺族の了解や児童生徒への心のケア体制が整っているように留意する。


報告書については遺族の希望などにより公表する場合の留意点を追記。調査漏れがある場合や調査中に新たな調査する事項が出てきた場合、遺族の意向を確認した上で、調査主体または調査組織の判断により追加調査を行うことが求められる。


「第6章 いじめが背景に疑われる場合」については「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」において対応することを明記するとともに、背景調査といじめの重大事態の調査との関係を整理し、追記する。


<協力者会議からの意見・質問>

「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」の見直しのポイントについて、協力者会議のメンバーから次のような意見や質問が寄せられた。それに対して、事務局が回答した。


坪井法律事務所・弁護士 坪井節子委員

2章「平常時からの備え」に、1人1台端末を活用して心の健康観察の導入を推進するとあるが、すでに東京都などでは端末による心の健康観察が行われており、多くの相談が寄せられている。相談体制を整えるには大変なことが予想されるが実際にはどのような体制を構築するのか。

事務局:
11台端末を活用した心の健康観察においては、教員と児童生徒が悩みを相談できる環境を構築することが求められる。まずは、端末を通じて児童生徒の悩みを共有してチーム学校で解決にあたることになる。自殺のリスクが考えられる状況については学校だけで解決できる問題ではなく、関係機関との連携が必要となってくるので普段から連絡体制などを作っておくことが重要となる。


さいたま市教育委員会学校教育部総合教育相談室 米玉利優子委員

2章では「学校関係者を対象とした研修の充実」や教員対象の「児童生徒の自殺予防に関する校内研修」を実施するよう記載されているが、教員が児童生徒の自殺を自分事として捉えるためには、どうすれば良いか。

事務局:
教員が児童生徒の自殺を自分事として捉えられるように、研修については協力者会議での意見を伺いながら内容を精査していきたい。


関西外国語大学外国語学部教授 新井肇委員

2章で記載された「校内連携型危機対応チーム」や 「ネットワーク型緊急支援チーム」など組織の必要性は生徒指導提要の改訂版にも記載されている。こうした課題への対応が記載されている生徒指導提要も校内研修で活用するべき。

事務局:
生徒指導提要に記載されている取組が自殺の未然防止につながることも考えられるので参考として記載することを検討していく。


元九州産業大学教授 臨床心理士・公認心理士 窪田由紀委員

5章第2節に「児童生徒に自殺の事実を伝えて行う調査」とあるが、自殺の事実を伝えずに詳細調査を実施することは難しいのではないか。詳細調査はアンケートや聞き取り調査などを実施して児童生徒から情報を収集する必要があるため自殺の事実を伝えなければ聞き取りも行えないのでは。

事務局:
この点については協力者会議でも議論を進めてほしい。遺族から自殺を公表しないでほしいとの要望があった場合、急死したことだけを伝え、自殺については明らかにしないで調査を進めることもあるのではないかと考えている。児童生徒にアンケートなどを行う場合、自殺ということを伏せた上で意見を聞くことが可能かも検討する必要がある。


北海道教育大学教職大学院特任教授兼教育学部教授 赤間幸人委員

5章で詳細調査は民事・刑事・行政上の責任追及やその他の争訟等への対応を直接の目的とするものでないと記載されている。「直接の目的」と記載されているのは間接的には訴訟につながるケースもあるということなのか。

事務局:
「直接の目的とするものでない」という記載に関しては、詳細調査は自殺の再発防止を防ぐため、その背景にあることを知るのが目的となるため、訴訟などを目的としたものではないことを明確にした。


共同通信社編集局デジタル編成部次長 川井猛委員

5章第7節に「報告書における、遺族への説明方法や説明する際の留意事項について記載する」とあるが、遺族への説明の際に報告書を提供することについて明記すべきではないか。報告書が遺族に届けられるという前提が無いことに疑問を感じる。

事務局:
報告書の内容について他の児童生徒の個人情報が出てくることが考えられるので、すべてを遺族に提供すると記述することは難しい。そうした点を留意しつつ、本文の記載については話し合いを進めていきたい。

 

児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議

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