すららネットは10月15日、カンボジア教育・青少年・スポーツ省のテップ・ピョリット事務次官(H.E. TEP PHYORITH)を団長とする高官代表団12人が、9月22日に埼玉県の朝霞市立朝霞第一中学校を視察に訪れたことを発表した。
同社とカンボジア教育・青少年・スポーツ省は、今年8月に教育デジタル化推進に関する協力覚書(MOU)を締結しており、今回の視察はその連携の一環。

前列左から、朝霞市立朝霞第一中学校 校長 唐松善人先生、カンボジア代表団長テップ・ピョリット事務次官、朝霞市教育委員会 学校教育部 福士昌三部長。親交の記念に送られたプレートを手に
朝霞市では2024年5月から、小学3年生から中学3年生までが同社の「すららドリル」を活用。また今年から、成長を実感できる授業の実現に向けたAIドリルの活用法を検証するため、実証研究を開始している。このような背景から、カンボジアでの教育改革プロジェクトを同社とともに推進するにあたり、朝霞市立朝霞第一中学校を視察することになった。

校務システムの説明を熱心に聞く事務次官(右)
最初に朝霞市教育委員会が、校務システムや学籍情報管理のデジタル化の取り組みを紹介。同市では、数年前まで紙で行っていた業務をデジタル化し、情報共有の効率化や校務負担の軽減を推進している。
ピョリット事務次官は、何度もうなずきながら真剣に管理画面を見つめ、サイン・捺印が必要な書類の扱い、転校時のデータ引き継ぎ、予算配分の仕組みなどについて具体的に質問をし、自国での教育システム改革に向け、熱心な質疑応答が交わされた。
中学2、3年生の数学の授業視察では、教員が対話的に指導しつつ、「すららドリル」を活用して生徒が自分のペースで問題に取り組む姿が見られた。事務次官からは「単なる暗記ではなく、教科書と教員の指導に主体的に向き合い、学び取る姿が印象的だった。学校が人間的な成長まで見据えていることが伝わった」と感想を述べた。
最後に、日本の学校文化を理解する機会として学校給食を体験。団員は日本の生徒と同じ食事を共にし、和やかな雰囲気で交流が行われた。
ピョリット事務次官は、「給食は単なる食事ではなく、つながりを育む瞬間であり、子供たちにコミュニティの価値と健康的な習慣を教える場となっている」とコメントし、日本の教育文化の奥行きを高く評価した。
朝霞第一中学校に足を踏み入れた瞬間、学びとコミュニティが息づく場に迎え入れられたように感じました。まず目を引いたのは、隅々まで清潔で整った環境です。廊下は輝き、教室も整然としており、生徒と教職員がこの空間を誇りをもって守っていることが伝わってきました。
教室では、生徒たちが教科書やiPadに真剣に向き合い、純粋な好奇心で学びに没頭していました。学校運営にデジタルシステムを活用している点も非常に印象的でした。清潔な環境、心優しい生徒たち、思いやりある給食プログラム、革新的な校務システム、そして優れた運営体制。これらすべてがこの学校を特別なものにしています。単なる学習にとどまらず、思いやりと実践力を備えた人を育む姿に「学校とはこうあるべきだ」と強く感じました。
このたびの貴重な機会に心から感謝し、今後も情報交換を続けていければと思います。
今回の視察の大きなテーマの一つは、日本の学校運営における情報管理の仕組みを学ぶことでした。しかし、それにとどまらず、各教科の授業の進め方や、文部科学省・教育委員会・学校が一体となって進めている学校経営モデル全体に触れ、理解を深めていただけたことは非常に貴重でした。さらに、教育DXについても「AI教材を導入すれば課題が解決する」という単純な話ではなく、国の実態に合わせた教育政策の整備や教員育成といった実装のプロセスが不可欠であることを、現場から直接ご理解いただけたと思います。
カンボジアでのICT教育モデル構築プロジェクトは始まったばかりですが、今回の視察を通じて、真の課題に関する率直な意見交換が進み、テップ事務次官との間で解決に向けた具体的な協議も始まりました。私たちが支援できるのは、児童生徒の学力向上と教員のICT活用スキル育成といった一部分にすぎませんが、カンボジアの公教育が直面する課題の解決に向け、できる限りの取り組みを続けてまいります。