札幌市と両備システムズは、生成AI及びAIエージェントを活用した自治体の旅費事務を効率化する実証実験を実施する。
職員の事務負担軽減と自治体DX推進を目指す官民連携事業。同社の自治体特化型内部情報システム「公開羅針盤V4庶務事務システム」へAI機能を実装し、旅費事務効率化・高度化に向けてAI適用時の課題分析や業務効率化の効果を検証する。実証期間は2026年3月下旬までを予定している。

自治体の旅費事務は、地方自治法や条例に基づき規程が自治体ごとに異なるため、全国共通のシステムでは完全対応が難しく、職員が手作業で確認する負担が残っている。さらに、承認フローは多段階で、出張命令から行程作成、旅費計算、起案、承認(電子決裁)、精算まで複数ステップを要する。公共性・透明性確保のため、承認プロセスが長く、時間がかかっているのが現状だ。
札幌市では、2023年度に生成AI利用ガイドライン群を制定し、全職員が使えるチャット型生成AI環境を整備し、職員向け研修も実施するなど活用を進めている。生成AIを今後さまざまな業務に組織的に活用していくための足掛かりとして、各部局に共通の事務で影響範囲の広い「職員の出張にかかわる旅費事務」をテーマとして選定し、生成AI活用における旅費事務の効率化を模索していた。しかし、市の旅費制度を反映できる既存の生成AIサービスがなかったため、民間事業者と共同で活用方法を実証していくこととした。
一方、両備システムズはこれまで「公開羅針盤シリーズ」でさまざまな自治体業務の支援機能を提供。職員の負担軽減と自治体DX推進を目指し、人事給与や文書管理機能の強化や、他社サービスと連携、AI機能の搭載など開発を進めている。
今回、市が官民連携の推進に向けて開設した一元窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を通じて「生成AI及びAIエージェントの活用による行政内部事務(旅費事務)の効率化・高度化」というテーマに対してテーマ型提案を行い、官民連携による本実証実験の実施に至った。
本実証では、出張の条件(旅行者、日程、場所等)に応じた経済的かつ合理的な出張行程案の自動作成、出張行程に基づく旅費の自動計算及び審査業務の効率化等を主な対象範囲としている。
両備システムズは、「公開羅針盤V4」の旅費事務支援機能へ生成AI及びAIエージェントを適用し、「出張の条件(旅行者、日程、場所等)に応じた合理的な出張行程案の自動生成、出張行程に基づく旅費の自動計算及び審査業務の効率化」ができる旅費システムを構築する。

実証内容のイメージ
旅費事務の業務フローへは以下の3つのAI実装を予定している。▽旅費規程に沿った出張行程を提案する「出張行程プランニングエージェント」▽職員に提示する出張行程が市の旅費規程に沿っているか評価する「旅費規程確認エージェント」▽起案された旅費申請を事前審査する「旅費審査エージェント」。
旅費事務における職員の負担軽減に対する効果検証を行い、成果が得られた点については公開羅針盤V4へ本実装を行い、機能改良を継続する。また、本実証で得られた知見を元に、その他の行政内部事務へのAI適用検討・実装を検討する。