今年度第1回(通算第49回)全国教育委員会セミナーが7月5日、東京で開催され、東京都内の教育委員会や学校が導入事例や予算確保などについて報告した
文京区では平成20~22年にかけて50インチの電子黒板1台、32インチのデジタルテレビ5台、プロジェクター+簡易型電子黒板を導入。石出氏が副校長として勤務していた文京区立第六中学校では、英語科が電子黒板を、数学科はプロジェクターを常設して活用していた。常設環境が活用を促すことから、同校に94インチ電子黒板、実物投影機を全教室に整備。タブレットPCは、企業の研究助成金などを活用して検証を進めていた。
その後、平成26・27年度文京区研究指定校「タブレット端末を活用したICT教育モデル事業」である茗台中学校に校長として赴任。同校には既にタブレットPC110台、iPad10台がある一方で、電子黒板などの提示機器の不足や、ネットワーク、アプリケーションの安定が喫緊の課題だった。そこで平成28年度に全普通教室と特別教室に電子黒板と実物投影機を導入。ネットワークの不安定要因となっていたアプリケーションを削除するなどで安定して接続できるようにした。
同校では校内の約束事として、担任が朝、電子黒板、実物投影機、PCの電源を入れ、一日中電源を切らないこととしている。「この環境になると、教員はすぐ使うようになり、今、茗台中学校ではICT機器を使わない日はないほど活用が進んでいる」という。
電子黒板はデジタル教科書やプリントの提示など、板書との併用で活用。デジタル教科書は、生徒の教科書と同じページを提示して指示しやすい。英語ではネィティブの発音も常時活用できる。書き込んだ内容を記録できる点も電子黒板の良さだ。次の時間に提示して振り返ることができる。
技術の授業では実物投影機で道具を大きく提示して正しい扱い方を解説。電子回路のはんだ付けではんだが溶ける瞬間を教員が実演、コツを伝える。国語、書写の授業で、教員の手元を映した書き方の指導でも活用する。
研究発表までのタブレットPCで最も活用されたのは、Web検索、WordやPowerpointによる資料作成だ。現在はそこから一歩踏み出し、活用を広げる取組を進めている。例えばタブレットPCのカメラで体育や合唱、発表の様子などを撮影して自らを俯瞰し、修正点を考えていく。生徒のノートを電子黒板に大きく提示して考え方を共有する。資料を生徒全員に一斉配布し、学習中に生徒の画面を電子黒板に映し出す。学習後は生徒のまとめを回収できる。回収した生徒の資料は蓄積して生徒1人ひとりのポートフォリオ化し、今後、1人1台環境になった際に自分の学習履歴を参照・活用できるようにしたい考えだ。
校内体制として、校内研修を推進する研修委員会とICT機器の管理をするICT委員会を設置。研修委員会は主体的対話的で深い学びの指導計画やルーブリックの作成に取り組んでいる。
同校には現在、月4回支援員派遣があるが、簡単なトラブル、例えばコンセントが抜けているのに気づかず機器が動かないなどは導入当初、よく見られる。最初の1、2か月だけでもICT支援員が常駐する体制を取れることが望ましい。
【講師】文京区立茗台中学校校長・石出勉氏
【第49回教育委員会対象セミナー・東京:2018年7月5日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年8月6日号掲載