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教育ICT

“無駄を楽しめる”力からイノベーションが起こる 中邑賢龍教授・東京大学先端研

2020年12月8日
中邑賢龍教授

中邑賢龍教授

「エネルギーを探せ」「氷で火を起こせ」「科学の大発見にアートは必要か?」――様々な課題を、日本全国、時には世界に出かけて考える異才発掘プロジェクト「ROCKET」を運営する中賢龍教授(東京大学先端科学技術研究センター)。「何が異才かはわからない。しかし、学校のルールに馴染めない少し変わった子供たちを大事にしないと世の中は変わらないのではいか、と考えて始めた」と語る。(11月26日開催超教育協会オンラインオンラインウェビナーより)

 

ルールと創造性は対局にある

ルールと創造性は対局にある。学校の枠の中で行う安全な教育で、創造性もグローバルな力も育むことは難しいのではないか。

好きなことを、時間を気にせずに追究できる、学校以外の場所が必要ではないかと考えて始めたのが、異才発掘プロジェクト「ROCKET」“Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents”だ。

1人で好きな道を歩む子供たちは、自信を失いがち、迷いがちな面がある。人が興味を示さないユニークな道を歩むには「場」が必要だ。

「トリュフが大好き」な小学生がいた。しかし身近な友達に同意は得られない。「友達ができない」と悩む。そんなときどう声をかけるか。「学校に友達がいなくても良い。世界に目を向けろ。トリュフ好きはたくさんいる」

 

子供は認めることで伸びる

ROCKET」プロジェクトを実際に始めると、意欲的でスピーディな子、スローな子の混成であった。「もっとゆっくり」「みんなに合わせて」ではなく、そのまま抱えることができる教育とは何かを考えた。

多様性理解とは、人種や障害の有無に向けられたものではなく、隣にいる人の性格や運動特性を理解することでもある。

うろうろしながら授業を受けている子供、カーテンにくるまって授業を受けている子供に理由を聞くと、その方が先生の話を集中して聞くことができ、理解できるのだという。行動だけを見て、人と違うから直せ、ということは危険である。

 

効果がありますか

ROCKETは、時間制限、教科書、共同学習、目的、すべて「なし」として解き放つ。「詳細はわからないが面白そうだからとりあえずやってみよう、飛び込んでみよう」と感じる子供が増えることが大切だ。

効果がありますか、と聞かれる。あるかどうかはわからない。しかし面白いと思ったことに集中して時間をかけて取り組むことができれば、1020年経つと「異才」と呼ばれることも起こる。それをつぶさないようにしたい。

 

学校の図画工作の時間に、2時間で車を描くという課題が出た。2時間かけてタイヤしか描いていない子供もいる。しかし、時間さえあれば、2時間かけてタイヤを描く子供の絵は素晴らしいはずだ。今の学校には、ペースが異なる人を許容できない面がある。

しかし学びは本来、ばらばらなもの。それぞれが勝手に自分なりの方法で学ぶものである。

今の公教育や学校という場を否定しているわけではない。基礎知識を誰かが寄り添いながら学ぶことは必要。双方の場の共存が重要だ。ROCKETに参加した子供の3分の2は、学校に戻っていく。3分の1は、起業したり1人突き進んでいったりと様々だ。

 

地域と時間を超えた学びの場が未来の子供を育む

無駄を楽しむ力から新しいイノベーションが起こってくるのではないかと考えている。ROCKETでは様々な課題を与えている。シナリオ作りは重要だ。

「エネルギーを探せ」では、夜10時に空港に集合する。行先は言わない。が子供は集まる。

着いた先はインド。子供は「エネルギー」を探して歩きまわる。でも見つからない、わからない。疲れた、という。何故疲れたのか。人の量がものすごくて疲れた、という。それが答えだ。インドのエネルギーは人口だ。今の日本と比べ、「まずいんじゃないか」と実感できる子供も出てくる。

 

挑発的な教育を目指す

ROCKETでは、挑発的な教育をしていこうと考えている。学校の教員は、寄り添う傾向が強い。重要なことだが、強く寄り添う人が多すぎる、とも感じており、ROCKETのスタンスは異なる。そこを理解して参加してもらいたい。

大事にされすぎると、子供は動かなくなる。1人でも生きていく力につながるように、心配しながらも思い切ってやらせてみる、見守るという我慢強さが求められる。

何かあったら誰が責任を取るのか。関わっている人全員である。

英語をいくら学んでもたくましさがなければ、英語でコミュニケーションすることはできない。

 

シナリオは重要
遊び心で仕掛けをつくる

仕掛けはいろいろ考えながら進めている。ちょっとした遊び心と言ってもいい。

軽井沢に行った際、老舗旅館に全員分の予約が取れず、半数の予約はビジネスホテルになった。これをどう分けるのか。

高崎で降りて碓氷峠を歩く。途中、立派な老舗の旅館がある。こんなところに泊まれると素敵だねと言いながら通り過ぎる。駅前に到着し、ビジネスホテルに予約があるが半数はここに泊まれず、30分ほど歩いた古い旅館に予約してあると伝えると、ほぼ全員がビジネスホテルに泊まりたがる。しぶしぶ譲歩したメンバーが戻ると、先に通り過ぎた老舗の旅館で豪華な食事が待っている。

この面白さ、シナリオ作りが教育の鍵になるのではないかと考えている。子育てにも通じるはずだ。

公教育がこれから取り組むべきは枠を壊すこと。例えば「週1回、その先生が好きなことを学ぶ」。そうすると関係性が変わり世の中が変わっていく。「隣の学校と違っても良く、これまでと違って良い。

年間10枚のお休みチケットを子供に配布して出かけることを保障する。これは「子供のダブルワーク」として本気で提案したい。地元には友達がいなくても日本中に友達がいる、という子供が出てくる。

 

狭い価値観でレールに
乗せようとすると失敗する

親の価値観が子育てに強く反映されることは危険である。親の多様性教育が必要であると感じている。

早期教育などで知的反射能力を幼児期に鍛えすぎると知能テスト結果は高く、漢字も計算もできて学校の学びがつまらなくなりがちで、親は勘違いする。しかしこれは才能とは別なもので、徐々に普通になっていくため、トラブルが生じる。また、発達障害児がすべて不適応を起こすわけではない。あまり無理をせず、子供の特性に合わせて育てていくことが重要なのではないかと感じている。

子供は、認めることで自ら伸びる。大人が子供を伸ばす、のではない。

狭い価値観でレールに乗せようとすると失敗する。これはオンライン学習にも同じことが言える。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年12月7日号掲載



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