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教育ICT

個別最適な学びの主語は「学習者」 探究で「学び方」を学ぶ~荒瀬克己・中教審副会長/NITS理事長【NEE2022より】

2022年7月4日

NEW EDUCATION EXPO2022「学びの未来を、共に拓く。」が東京で6月2~4日に、大阪で6月10・11日に開催され多数の教育関係者でにぎわった。なお当日展示企業の資料はNEW EDUCATION EXPO2022のWebサイトでダウンロードできる。いくつかの講演を紹介する。


荒瀬克己
独・教職員支援機構理事長 中央教育審議会 副会長

第11期中央教育審議会副会長であり独・教職員支援機構理事長の荒瀬克己氏は、中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(以下、答申)を解説。「『探究的な活動』、応援につながる『評価』は、『自己肯定感』育成につながり、『人格の完成』(教育基本法第一条)に向かうために必要な『キャリア』である」と語った。

荒瀬氏は「令和の日本型学校教育」について解説した

成年年齢が引き下げられた。初等中等教育を終えると「成年」となり、自ら判断すべき場面が増える。大きな責任を負う成年としてどんな力や経験が必要なのか、という視点が重要だ。

「個別最適な学び」主語は「学習者」

答申は膨大な議論のエッセンスを92ページにまとめたもの。かつ最も重要なものは、誤解を恐れずに言えば「はじめに」と「おわりに」にある。

「はじめに」には「『個に応じた指導』を学習者視点から整理した概念である『個別最適な学び』」「新学習指導要領に基づいて、一人ひとりの子供を主語にする学校教育の目指すべき姿を具体的に描いている」とある。

これは「1人ひとりの子供を主語にする学校教育」に進もう、というメッセージである。生徒を主語にする、という配慮が、全体の書きぶりに影響を与えており、これを具体化するための議論が始まっている。

キャリア教育=職業教育ではない

キャリア教育とはキャリア発達を促す教育、すなわち「1人の市民としてどう育てていくか」である。キャリア教育=職業教育ではない。答申では「職業教育」と「キャリア教育」を書き分けている。職業教育とは「一定もしくは特定の職業に従事するためのもの」、一方「キャリア教育」とは「1人ひとりの社会的職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育てることを通じてキャリア発達を促す教育」とされている。

保護者、近所の人、友人、生徒、グループリーダー等々我々には社会生活の中で様々な役割が場面ごとにあり、自分の行為が感謝されたり非難されたり等を経て学んでいく。社会の中で自分の役割を果たしながら 自分らしい生き方を実現していく過程が「キャリア発達」であり、幼稚園児にもキャリアがある。キャリア教育はキャリアを発達させるものであり、教育基本法第一条(教育の目的)に示された「人格の完成」に向かうものであると考えている。

キャリア・パスポートと学びの基礎診断の共通点

すべての小中高等学校の特別活動等において実施することとしている「キャリア・パスポート」の作成についても、学習指導要領の前文にある「1人ひとりの児童生徒が自分のよさや可能性を認識する」ことにつなげるという視点でどう実施・活用していくかを考えることが重要だ。

また、「高校生のための学びの基礎診断」は、すべての高校生に基礎学力をつけることが目的。基礎学力は、自己肯定感にも深く関わる。

「基礎診断」と「キャリア・パスポート」は個別に語られることが多いが、両者とも「自己肯定感」に関わる重要なもの。自分で気付き、考え行動する子供を育むすべての基礎になるものが「自己肯定感」である。

学べば成長する、自分が動けば世界が変わる、存在そのものに価値があることに気付ける工夫が必要だ。

「探究」では「学び方」を学ぶ

「探究的な活動はうちの生徒には不要である」と言った進路指導の教員がいた。しかし、今年度から高等学校で始まった探究的な活動による「自ら調べて判断する」過程の経験は、学校教育法第51(高等学校)に示された力を育むことにつながる。第51条には「個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養う」とある。

「総合的な探究の時間」を始めとする探究科目の評価をどうするのか、という議論はある。

100%完璧な評価はなく、どの範囲を評価するのかを明確にして互いに理解・納得できれば良い。完全な評価を求めると息苦しくなる。何より探究の評価は、子供たちへの「応援」である必要がある。記録し、振り返り、自らの成長に気付くことを促し、それを応援することだ。

人は学ぶ意欲をもって生まれてきており、自分の学習意欲に基づいて動く。評価によりその芽を摘まれる可能性がある。それを逆転する仕組みが「探究」ではないかと考えている。探究は「学び方を学ぶ」ものであり、ポイントは、記録してそれを俯瞰した際の気付きや発見である。疑問を大事にし、問を磨くような取組が求められる。

学びを自己管理・自己評価できる仕組みへ

NITS(独・教職員支援機構)の研修受講記録管理システム(仮称)の運用が始まる。学びの可視化・自己管理・自己評価ができるようにすることが本システムの目的だ。教職大学院等や都道府県教育委員会等とも連携を強化する。845日には、校内研修のプロデューサー、ファシリテータ育成を目的にした「研修デザイン力育成セミナー」を実施する。令和の日本型学校教育実現のための障害となるものを取り除くために、校内研修は一層重要だ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載

 

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