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教育ICT

小学部から高等部まで認知能力を系統的に育む 三重大学教育学部附属特別支援学校

2023年9月5日

三重大学教育学部附属特別支援学校(中川克巳校長)は、主に知的障害のある子供たちを対象とした特別支援学校だ。2022年度から同校に赴任した中川克巳校長は社会で活躍できる力を育む目的で、体験的な活動やICT活用を積極的に推進。小学部、中学部、高等部で認知機能強化トレーニング「コグトレオンライン」(東京書籍)を導入した。23年3月、それぞれの学部での活用の様子を取材した。

毎日定期的にトレーニング

中学部では、授業の最初にコグトレオンライン「聞いて覚える」分野のトレーニング「最初とポン」に取り組んでいた。「動物の名前が出たらポンボタンを押す」「読み上げられた文章の最初の言葉を覚えて選択肢から選ぶ」トレーニングで、大型提示装置に提示して説明してから全員で5問挑戦。一緒に答え合わせをして補足説明をした後は、各自の端末(iPad)で「最初とポン」や「さがし算」、「形さがし」等好きなトレーニングに挑戦していた。

中学部では最初に全員でトレーニングに取り組んだ

中学部では最初に全員でトレーニングに取り組んだ

小学部56年の教室で「形さがし」に挑戦していたある児童は、「12点で構成された十字型」を多数の点から見つける難問に挑戦。瞬時に探し出しており、全問正解後も同じトレーニングに繰り返し取り組んでいた。

小学部で取り組んでいた「形さがし」。12点で構成された十字型を見つける難問に短時間で正解していた

小学部で取り組んでいた「形さがし」。12点で構成された十字型を見つける難問に短時間で正解していた

高等部では各自のペースでコグトレオンラインの「何があった?」や「順位決定戦」、「はどこ?」「形さがし」「どこに何があった?」等、自分の興味関心に合わせて様々なトレーニングに挑戦。高等部になると自動採点後の確認もスピードアップしている。

高等部で取り組んでいた「どこに何があった?」は短期記憶を鍛えるトレーニング

高等部で取り組んでいた「どこに何があった?」は短期記憶を鍛えるトレーニング

1年で認知機能向上 日常の学習に好影響
立岡一宏教諭

小中学部は課題解決学習で、高等部は朝学習などで毎日1015分程度「コグトレオンライン」に取り組んでいる。直感的にかつ楽しく取り組むことができる、よく考えられたトレーニングだと感じる。紙のコグトレを使う場合もあるが、消しゴムを使うことが苦手な子もいて、端末でできるトレーニングはその課題が解決できる。子供も楽しみにしており、特に小学部では着替えや授業準備も速くなるようだ。子供の様子を見て、保護者からは自宅でも取り組みたいという要望が届いている。

トレーニングでは、全問正解できるものを選ぶ子供、多様なジャンルから挑戦する子供など様々。その中で、この子はこのような分野が得意なのかという発見もある。

1年間取り組んでみて、数え方が変わった子供や自分の覚えやすい方法に変換して覚える子供など、日常の学習の進め方に良い影響があると感じている。

花丸が欲しい、間違えたくない等の気持ちから、同じ課題を繰り返す傾向もある。

そこで次年度は、それぞれの子供に合った課題を意図的に指定して苦手克服にも取り組もうと考えている。保護者とも協力して取り組んでいきたい。

 

それぞれの段階で得意分野を伸ばす

中川克巳校長

中川克巳校長

本校では日常生活や実社会で必要な様々な知識や技能を獲得するために、ICT活用や体験的な活動を積極的に取り入れ、新しいことに挑戦しようとする「やる気」や「自信」を育むことを大切にしている。生きる力を伸ばすための課題解決学習や生活単元学習を進める中で教科の学習を取り入れており、小学部は主に『学ぶことの楽しさ』を、中学部では『知識・技術を身に付けて深い学び』を、高等部では『就労に求められる力』の育成を意識している。

就労の際には短期記憶や認知能力も求められる。

そこで小学部から高等部まで認知能力を系統的に伸ばしたいと考え、コグトレオンラインを試験的に導入。児童生徒の反応が良かったため、すぐに本格的に導入した。

コグトレオンラインに取り組むことで、それぞれの子供がどのような力が長けているのかがわかる。例えば、認知機能は高いが言語表現が苦手であるなど、トレーニング結果により明らかになる。

そこで、それぞれの得意分野を伸ばすことで、学習上の困難を解決し、社会で活躍できる力を育みたいと考えている。

その1つとして、認知能力の高まりをもっと実感できる場の設定に意識して取り組んでいきたい。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載

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