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教育ICT

創造的なプログラミング学習へ 豊田光崇・和歌山大学教育学部教授

2023年9月5日

小学校プログラミング教育の必修化が2020年度から始まり、ほぼ同時期に始まったGIGAスクール構想の前倒しにより1人1台端末の授業の日常化が進んでいる。AIやAR、VRが小学生にも身近になった現在のプログラミング教育について、豊田充崇教授(和歌山大学教育学部)が提案した。

豊田充崇・和歌山大学教育学部教授

次年度の小学校教科書からは、プログラミングに関する記述量が倍増し、これまで算数や理科が中心であったプログラミング教育が更に多くの教科・学年に拡大していく。また、GIGAスクール端末の持ち帰りも広がる中、こういった体制を念頭に入れた準備が必要だ。国や各自治体ではプログラミング教育について、一定の資料や事例を示しており、カリキュラムマネジメントもある程度進んでいる(※)ものの、実態を見ると日本のプログラミング教育の広がりには不安要素がある。

例えばHour of Code(1時間でコード学習できるWebサイト)Scratchの国内利用率は、公式サイトの統計からみても日本の利用率は世界平均の約5分の1程度にすぎない。絶対的なユーザー数や利用割合が少ないということは、そこから生まれるエンジニアや次世代の指導者数も増えないといえるだろう。

■計測が難しいプログラミング的思考力

プログラミング教育はもともと、経済産業省からの要請であるIT人材育成の視点からスタートした。IT人材育成を学校教育目標に位置付けることに対して懸念を持つ学校現場への落としどころとして文部科学省は、学習指導要領に「プログラミング的思考」の育成として目標に加えた。

しかし、「プログラミング的思考」の達成度の計測は難しい。

それに加えてこの間、対話型生成AIが急激に広がった。対話力さえあれば高校教科書レベルのプログラミングができてしまう時代になり、プログラミングコードを学ぶ意味が改めて問われている。そこで「個別最適な学び」を目指す上で、学習の個性化(児童生徒の興味・関心等に応じた異なる目標を立てて学びを深める)の主旨を踏まえたプログラミング教育を考える必要がある。

■プログラミングを「デジタルなものづくり」と捉える

プログラミングを「デジタルなものづくり」として捉え、創造的なプログラミング教育の重要性をかねてより指摘してきたが、この方向性が一層重要になったと考えている。子供にとってもインパクトが大きく、取組の中でプログラミング的思考力も育まれていく。また、プログラミングができることを目標とすれば達成度はわかりやすい。

そのような取組はある。例えば大阪府泉南市立東小学校では、IT人材育成を念頭に置き、保護者にもそのように伝え、創造的なプログラミング学習に力を入れてきた。「ゲームには無限大の可能性がある」「このプログラミングの先に有名なゲームがある」「プログラマーはもっとすごいことをやっている」等、世界一ゲームを楽しんでいる日本の子供たちにとって、制作体験はダイレクトに尊敬やあこがれにつながっていく。

和歌山大学の附属小学校では、総合的な学習の時間にキャリア教育を兼ねたプログラミングの授業が行われている。プログラマーについての職業調べをしている際に「世界の個人資産家ランキング」で上位を占めているのは元プログラマーが多いと気づいた児童は「僕の夢はプログラマーに決まった。今からしっかりと学び、親に恩返しをしたい」と話していた。

モチベーションを持って取り組む創造的なプログラミング体験のインパクトの大きさは計り知れないものがある。ゲームを始め、身の回りには無数のプログラムが動作している。将来のキャリアと照らし合わせて考えることができれば、人生の可能性を大きく膨らませることにつながる。

STEAM教育としてプログラミングを学ぶ

和歌山市のある小学校では、小学生向けアプリ「プログラミングゼミ」を使って自分が描いた絵をプログラミングで動かしていた。基本のプログラミングを学んだ児童は端末を自宅に持ち帰り、新しいゲームを制作してきた。自分で制作したゲームは皆にも使ってもらいたいと思うもので、朝の会で発表した。プログラミングは個人で行う部分が多いが、学校は、それらの発表や評価の場となり得る。

絵を描き作品を制作するという観点では図工であり、プログラミングで座標概念やマイナスの概念等を利用することを考えると算数の学習にもなるだろう。STEAM教育の観点からも、創造的なプログラミング活動にシフトしていくことが望ましいと考えている。

■指導者不足を端末活用で解決する

プログラミング教育についての指導者不足も指摘されているが、11台端末の環境を積極的に利用し、ユーザー数を増やして適性のある児童に積極的に働きかけ、活躍する場を与えることが解決の糸口になるだろう。

例えば経産省のSTEAMライブラリーを始め、様々な自学自習教材が提供されている。その中のPlayful Coding(プレイフル・コーディング:プログラミング×アート・デザイン・社会×数理)はプログラミング言語の基本やアートにおける「コンセプト」の重要性を学び、組織の哲学や理念などを新たなメディアで表現するプログラムである。プログラミング学習サービス「Progate」には学校教育用無料プログラムもある。個別にプログラミングを学ぶための教材サイトは無数に存在し、学び方も多様化し、充実してきた。小学校プログラミング教育の課題の1つとされている指導者不足については、これらの周知不足ではないかと思う。プログラミングを指導するという発想から、「学び方」の指導へと転換する必要がある。創造性は指導するものではなく、解き放つ機会を与えることで開花するのではないか。


(※)文部科学省「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」=https://miraino-manabi.mext.go.jp/
 尼崎市総合教育センターでは、プログラミング教育に関して全教科の教科書に準拠したプログラミングサイトをリンクしてどの学年どの教科で教材等を利用できるのかをまとめている。「尼崎市総合教育センタープログラミング教育の手引き」=http://www.ama-net.ed.jp/tebiki/programing.html。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載


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