高校生のための科学研究の国際大会「リジェネロン国際学生科学技術フェア(Regeneron ISEF)2025」が5月10日から16日(現地時間)にかけて、米国オハイオ州コロンバスで開催され、日本代表の高校生による2研究が部門優秀賞を受賞した。
国際学生科学技術フェア(ISEF=International Science and Engineering Fair)は、世界各国から参加した高校生等が、個人またはチームで研究成果を競い合う国際的科学技術コンテストで、毎年米国で開催されている。日本は1958年から参加しており、今回が67回目。
今年は、63の国と地域から1657人のファイナリストが参加。日本からは17研究25人の生徒が参加した。
Regeneron ISEF 2025に出場した日本代表の高校生たち
ISEFは、世界約400か所で開催される提携コンテストで選出されたファイナリストが、毎年5月に米国で一堂に集う大会。日本では、ISEFの提携コンテストである「高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC)」(朝日新聞社・テレビ朝日主催)と「日本学生科学賞」(読売新聞社主催)の受賞研究から日本代表が選ばれる。日本代表のファイナリストは、ISEFのOB/OGが中心となって組織するNPO法人日本サイエンスサービス(NSS)が行う研修会などに参加し、約半年間にわたる英語プレゼンテーション等の準備を経て出場した。
ISEFでは、物理、化学、生物、地学、数学といった基礎科学分野のほか、機械工学や環境工学といった工学系分野、機械学習やシステムソフトウェア等の情報系分野、医療系分野、社会科学分野など多岐にわたる22の部門に分かれて審査される。審査は、各分野の博士号を有した経験豊富な研究者によって行われ、上位約25%に「優秀賞(1〜4等)」が授与される。
今年の日本代表からは、横浜市立南高等学校の西田優美奈さんと、筑波大学附属駒場高等学校の田中喜大さんによる2研究が部門優秀賞を受賞した(所属はいずれも昨年度)。
西田優美奈さん(横浜市立南高等学校)
糸状藻類(アオミドロ/サヤミドロ)を用いたバイオ燃料及び土壌改良材の実用化に向けた基礎研究
環境工学部門 優秀賞3等を受賞した西田優美奈さん
化石燃料の代替として注目される微細藻類由来のバイオ燃料は、コストの高さが課題でした。西田さんは、他生物による汚染に強く日光と水だけでも培養可能なアオミドロを中心とした糸状藻類に着目し、低コスト生産のための培養・実験を行いた。その結果、これまで注目されてこなかった糸状藻類を活用することで、より低コストなバイオ燃料製造が可能であり、さらに燃料抽出後の残渣は、植物栄養素を含む優れた肥料として活用できることを実証した。
▶︎研究プレゼン資料
田中喜大さん(筑波大学附属駒場高等学校)
膜の破れによって生じ得る ウォーターベルの変形
物理学・天文学部門 優秀賞4等を受賞した田中喜大さん
スプーンを洗うと周りに見られる滑らかな水膜、「ウォーターベル」と呼ばれる不思議な形は、条件によりどう変形するのか未解明でした。田中さんはこの現象に着目し、空気の出入について「開いた」ベルと「閉じた」ベル各々を定量的に解析した。ベルの形状を数値的に再現して理論モデルを立て、シミュレーションの実験結果との合致から妥当性が示された。さらに、ベルの変形の要因が体積の内圧によることも解明された。本研究は、科学の根幹であるモデル化により原理を明かし、ベルの制御にも貢献しています。
▶︎研究プレゼン資料
文部科学省では、今回の成績を踏まえ、個人研究で部門優秀賞を獲得した西田さんと田中さんへ文部科学大臣表彰を授与。また、日本代表として参加した個人研究10人、チーム研究5チーム13人に文部科学大臣特別賞を授与した。