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学校施設

第25回【教職員のメンタルヘルス】学校と教委が連携するための視点

2016年1月1日
連載

問題への指導・懲罰だけではなく
丁寧な「プロセス」の聞きとりを

教職員の精神疾患による病気休職者数5078人、体罰・交通事故・わいせつ行為等の不祥事による懲戒処分または訓告等を受けた教職員9494人(文部科学省「平成25年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」より)。この他「身体疾患を理由に休職している教職員」のなかにも、過度なストレスが様々な身体症状となって現れている場合もありますし、数字に現れていない不祥事が存在することも否定できません。

■ストレスと問題行動

人間は不快な状況に直面した時や内的な衝動を満足させられない時、「自分を守ろうとして」無意識的に様々な手段をとるとされています。これは「防衛機制」と呼ばれるものです。カウンセリングや心理療法(精神分析・フロイトの研究から考えられたもの)で用いられる用語です。

人間は過度のストレス状態にある場合にも、この防衛機制を無意識に働かせます。心の中に抑圧された衝動や藤が、様々な身体症状となって現れることを「身体化」といいます。このようにストレスや悩みが身体の病気につながることは、一般的にもよく知られるようになってきました。これらは、心身症といわれることもあります。それに対して抑圧された衝動や藤が、問題行動として表出することを「行動化」といいます。

■「行動化」への対応

前述したように、過度なストレスの「内在化」(内にため込む)→身体化(心身症)というメカニズムで問題が起こる場合に対し、「行動化」は過度なストレスの外在化(外に表出する)→行動化というメカニズムで問題行動(不祥事等)が起こる場合があります。

筆者が見聞きする範囲では、「行動化」の場合、その問題を起こした教職員への対応として、指導や懲罰に特化した関わりの傾向が高いようです。しかし、そのような関わりだけを行っても十分な効果を得ることは難しく、金銭面の負担に加えて不祥事に対する謝罪という負の連鎖を生じることになります。

このような負の連鎖を防止するためには、問題を起こした教職員の話によく耳を傾け、「問題に至るまでのプロセス」を充分に把握し、分析集計(学校現場→教育委員会→文部科学省)することと同時に、効果的な「心のケア」のあり方を体系化していくことが重要であると思われます。習癖や性癖という言葉で片付けてしまっては前に進むことはできません。

しかし、この様なことが語られ議論されることは意外と少ないのが現実です。それ故に現時点では、問題の予防システムや、問題を起こした教職員に対する十分なケアシステムが構築されているとは言いきれません。

筆者は、学校現場や教育委員会がさらに、このようなことを十分考慮して、予防や対応に当たってくださることを願っています。そして前述のように、心身症やうつ病を代表する「内在化・身体化」された精神疾患だけではなく、教職員の「外在化・行動化」による問題行動に対する予防・サポートシステムの構築が急務であることについても、現場や教育委員会のご理解が得られれば幸いです。

執筆=鈴木隆広(すずき・たかひろ)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会会長、神奈川県内(市町教育委員会)教育相談スーパーバイザー他

【2016年1月1日号】

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