本格的な暑さを迎える前の時期、「暑熱順化」が熱中症対策に重要とされる。しかし暑熱順化を実践しているスポーツ指導者は22%で、実施期間は「1~2日」(33.6%)とする回答が最も多かった--(公財)日本スポーツ協会(JSPO)が指導者約1万人を対象に昨年2月行った実態調査。スポーツ庁は熱中症予防に万全を期すよう呼びかけている。
実態調査で明らかになった「熱中症対策として実践している方法」で最も多かった「水分補給」(98.9%)はほとんどの指導者が取り組んでいるが、「活動時間の変更」(45.2%)、「身体冷却」(44.9%)、「暑熱順化」(22.0%)はいずれも過半数に満たなかった。また暑熱順化の期間は一般的に5日間とされているが、最も多かった実施期間は「1~2日」(33.6%)で、「3~5日」(31.7%)、「6~7日」(15.6%)、「8日以上」(19.0%)だった。
実施している身体外部冷却の方法では、「頭部・頸部冷却」(75.3%)が最も多く、他に多かったのは「アイスパック」(62.9%)、「送風」(61.6%)など。簡便なことから最近では各所で推奨されている「手掌冷却」(32.1%)や最も効果が高い「アイスバス」(11.6%)、運動中も着用できる「クーリングベスト」(5.5%)は少数だった。
指導者が管理するだけでなく児童生徒が自分で健康管理できることが望ましいのが健康チェックだが、「毎日行っている」(54.9%)は半数少々で、「時々」(33.4%)が3分の1、「行っていない」(10.2%)という回答も1割あった。
同庁は実態調査の結果を踏まえ、JSPOが発行する「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」等を参考とした対策の再確認を求めている。
重点事項として、①無理のない範囲で汗をかき徐々に暑熱順化を行うこと、②活動の実施は暑さ指数(WBGT)に基づいて判断すること。特に大会等の実施は開催地のWBGTに基づき時期、時間帯、運動負荷の軽減、健康被害が生じるおそれがある場合は中断・中止を検討すること、③活動前や活動中、活動後に健康をチェックし、適時・適切な水分・塩分補給を行うとともに効果的な身体冷却を行うこと、④熱中症が疑われる場合は早期に水分・塩分の補給、身体冷却、病院への搬送を行うこと、⑤環境省の熱中症警戒情報の発出時にスポーツ・運動を実施する場合は、エアコンがある屋内などの環境を準備するよう求めた。
各種の大会・イベントについては、主催者が施設管理者、警察、消防(救急搬送)、地方公共団体、関係団体と連携しながらイベント運営にあたる必要があり、関係各機関の該当する部局への周知連携を求めている。
児童生徒の熱中症対策として、文部科学省と環境省が学校現場で効率的な確認のために役立つ「チェックリスト」を作成。「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」(令和6年4月追補版)には前回手引きで掲載されたリストを集約し、日頃から暑熱順化を取り入れた無理のない活動計画、十分な水分補給や休憩が可能な環境づくりなどの【日頃の環境整備等】、服装やマスク着用の留意事項など【児童生徒等への指導等】、暑さ指数の活用など【活動中・活動直後の留意点】など3つの場面を掲載している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号掲載