(一社)日本食品添加物協会は11月6日、第48回「食品添加物メディアフォーラム」を開催。愛知大学地域政策学部食農環境コースの山口治子教授が講演し、食品の安全確保についての消費者教育やメディアの重要性を述べた。食品の安全性を考える時、「ゼロリスク」はなく摂取量により悪影響があること、学校では食品添加物などを教科書で学ぶ機会が減っている現状、「無関心が一番の課題」であることなどを指摘した。

最新の調査研究結果とともに解説する山口氏
「食品添加物の情報ニーズに応じたリスクベネフィットコミュニケーションの効果~科学的知見と消費者の情報ニーズをつなぐ~」と題した講演。科学的に安全と評価されたものを、消費者が不安と感じる時、何をどのように伝えるべきか、メディアの役割に焦点を当てている。
食品安全確保の考え方は2つ。1つは「ゼロリスクは不可能である」点で、通常摂取している食品でも大量に摂取すれば悪影響の可能性がある。もう1つは「農場から食卓まで(フードチェーン)を考える」、つまり国民全員が消費者でありステークホルダーであり、すべての食品を自ら調達・管理できないので、食品安全確保を食品関連事業者や他国に依存せざるを得ない点が挙げられる。
そこでリスクに関する社会的許容範囲について、統一的な考え方や尺度が必要となる。科学的根拠に基づいた安全管理の実施や、国際食品規格基準、その策定等を行う国際的な政府間機関であるコーデックス委員会によるリスクアナリシスの作業原則、などが挙げられる。
食品添加物に対するリスク認知について、一般消費者と、食品安全の専門家では大きな違いがある。講演では「消費者のリスク情報過程モデル」に関する調査研究の最新の結果について、食品添加物である「保存料」を例に解説した。
メディアは一般消費者に向けて、現在の理解度に合わせたリスク情報やベネフィット情報を提供する必要があるが、現状は消費者の理解度が低く、メディアのパフォーマンスの向上を図るなどして、社会全体のリスクリテラシーを上げていく必要がある。
山口氏の研究室では学生が学校の家庭科の教科書について分析。かつての教科書には食品添加物に関する記載があったが、現在は全く触れられていないことが分かったという。食品添加物について”無関心であること”が一番の課題であり、「食育の一環として、食品添加物についても学ぶ必要がある」としている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年12月8日号掲載