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教育ICT

USBメモリを使わず 「校務用」「教員用」間でデータをやりとり

2018年12月4日
特集:ICTで新しい仕組みをつくる

ファイル交換システムを12月から試行運用

教育局総務室・柴田功ICT推進担当課長と同・ICT推進グループ・前田友行グループリーダー

教育局総務室・柴田功ICT推進担当課長と同・ICT推進グループ・前田友行グループリーダー

神奈川県教育委員会は今年12月から「校務用」と「教育用」の異なるネットワーク間でUSBメモリを使わずにデータをやり取りすることができる「ファイル交換システム」を導入し、試行運用を開始した。本仕組み導入の目的や今後の計画について、教育局総務室の柴田功ICT推進担当課長と同・ICT推進グループの前田友行グループリーダーに聞いた。

安全で効率的な仕組みを提供
試行期間は教員の“慣れ”最優先

神奈川県は高等学校142校、中等教育学校2校、特別支援学校28校を抱える大規模自治体だ。大規模自治体の場合、仕組みを大きく変えようとすると予算規模が莫大になる。県として文部科学省が策定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(以下、ガイドライン)に対応する必要があるものの、平成32年12月末に迎える機器更新のタイミングでなければ大きな予算確保は難しい。

そこで、前倒しでできる対策を検討。ガイドラインの「教育情報システム管理者は、校務系と外部接続及び学習系システム間で通信する場合には、ウイルス感染のない無害化系システム間で通信など、適切な措置を図らなければならない」という記述に着目して、検討課題の1つであった「USBメモリを使用しないデータ移動の仕組み」を先行して構築することした。

ファイル交換システムの運用イメージ

ファイル交換システムの運用イメージ

増え続けるデータ 管理を見直し

神奈川県では校務用と教育用にネットワークが分かれている。PCの整備状況は、教員の授業用タブレットPCが各校に10台程度、また校務用PCについては学校独自整備も含めてほぼ一人1台という状況。教員が校務用PCで作成した教材を教育用ネットワークに接続した授業用タブレットで活用する場合には、データのやり取りが発生する。これまではデータのやり取りを学校長管理のもと、日常的にUSBメモリで行っていた。

USBメモリの紛失・盗難事故は、セキュリティ監査での指導により減少傾向にはあるが、人的ミスといえる紛失やウイルス混入によるリスクはゼロにはならない。USBメモリでやりとりしているデータの種類について、教育委員会で把握することも困難だ。

教育のICT化が進むにつれて学校で扱うデータ量は今後、一層増えていく。そうなるとUSBメモリの貸し出し・返却手続きの手間がますます煩雑化する。これは教員の働き方改革の流れにも相反する。
県では既に生徒の答案用紙の自宅採点は原則不可としている。「電子データについても同様の扱いが必要だと考えていたが、USBメモリを使うな、ポリシーを守れ、気をつけろ、ではなく、使わなくても安全かつ効率的にデータをやりとりできる仕組みを導入したいと考え、ファイル交換の仕組みの導入を決めた」と語る。

5月に方針を周知 運用方法を検討

県ではファイル交換システム導入の方針を今年5月に公表。導入に向けた課題を予め洗い出して具体的な仕様を次のように決めた。

▼USBメモリを使わずに教育委員会ネットワークの校務用PCと教育用PCとの間でファイルの移動が可能。
▼ファイル交換を行う際に、ファイル無害化(教育用→校務用のみ)及びウイルス検疫を自動的に行い、ファイルの持ち出し記録を自動的に蓄積。
▼1人が一度にアップロードできるファイル数は最大10個。ファイルサイズは1回あたり最大2GB。アップロードできるファイル形式はWord、Excel、PowerPoint、PDF、jpg、png(画像)、zip等。
▼アップロードしたファイルは10日間ダウンロード可能。保存期限を過ぎた場合、ファイルは自動的に削除。
▼教育用ネットワークの異なる教室間(例=PC教室と普通教室の間)でもファイル交換が可能。
▼上長承認は校長、副校長、教頭。申請により代理承認の権限を総括教諭等に付与することも可(ただし試行運用期間は上長承認はなし。詳細後述)。
▼総務室ICT推進グループでファイル交換システムのログを調査。

本方針を踏まえて仕様書を作成し、6月に公告。2事業者から提案を受け、事業者を決定。ファイル転送&共有システムを導入してシステムを構築。試行運用を開始した。

試行運用期間は上長承認なしで運用

試行運用期間の間、上長承認については「なし」で運用することとした点が特徴的だ。「まずはファイル交換システムの活用に慣れてもらう。その間、教委でログを頻繁に調査して運用状況を確認。本格運用に移行する際に改めて運用方法を見直す」方針とした。

現場教員にとって頻繁な上長承認の手続きが生じることは、新しい仕組みに慣れるために大きな課題となると考えたからだ。新しい仕組みを導入したものの教員の活用が進まない、ということを避けるため、慣れるまでは、課題を可能なかぎり低減し、教員の要望に寄り添うようにした。

上長承認は本来、アップロードしたデータに重要情報が含まれているか否かを確認するためのもの。その部分を当面は教育委員会が担当することで、教員の利便性を図った形だ。

試行運用開始とともに、学校用USBメモリはいったんすべて使用を停止。管理職は改めて最低限必要なUSBメモリをあらためて登録し、不要となったUSBメモリは廃棄する予定だ。

「最低限必要なUSBメモリ」とは、入学者選抜業務や卒業アルバム作成時の業者への写真の受け渡しなどを想定。試行運用は3月まで継続する計画だ。

「本仕組みの導入により、誰がいつ、どのようなデータを持ち出したのかがわかる。無害化によりウイルス感染の危険性も大きく低減できる。現在は教育用ネットワークと校務用ネットワーク間のやり取りで活用するが、平成32年度を目途に、ガイドラインに準じてインターネット分離環境を構築した際には、『校務外部系』『校務系』間でのデータをやり取りする際にも活躍する仕組みであると考えている。まだ混沌とした部分もあるが、各県の情報教育担当者と情報交換しながら進めていきたい」と語った。【神奈川県教育委員会 教育局総務室ICT推進グループ TEL045・210・8075】

分離ネットワーク間でファイルを無害化・安全にやりとりする
Smooth Fileネットワーク分離モデル
教育機関向けにバージョンアップ

教育委員会で導入始まる

様々なファイルを無害化し、安全に分離ネットワーク間でのファイル交換を行う「Smooth File ネットワーク分離モデル」を提供しているプロット(大阪市・津島裕代表取締役社長)は、ユーザー利便性の向上とセキュリティレベルを向上させたバージョンアップモデルを12月より出荷開始した。

「Smooth File ネットワーク分離モデル」は、現在5つの県教育委員会を始め、15の市区町村教育委員会、170の自治体に採用されているファイル交換システム。

今回のバージョンアップでは、無害化に対応できるファイル形式を増やした。SMB(Server Message Block)連携によりファイル交換機能も拡張。ActiveDirectory連携オプションも拡張した。上長承認の際は上司の情報を自動的に連携。管理者の運用負荷を軽減している。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年12月3日号掲載

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