丹波市教育委員会(兵庫県)では丹波市プログラミング教育プロジェクトチームを立ち上げ教育の情報化に取り組んでいる。全小学校に最大学級児童数分を配備し、移動して活用できる児童用PCも配備済だ。プログラミング教育については、市の子供向けポータル「学びの広場」にプログラミングを学ぶことができるサイトのリンクを複数用意したり、今年度から小型PC「micro:bit」やプログラミング教材ロボット「Ozobot」を各45台用意して学校に貸し出せるようにしたりするなど2020年から始まる本格実施に向けて準備を進めている。
丹波市立新井小学校(吉見典彦校長・兵庫県)では氷上情報教育研究会に所属する細見隆昭教諭が中心となり、学校に整備されている33台のWindowsタブレットに加えて最新の文教向けWindows10を搭載した2in1のタブレットPC「MousePro―P120A―EDU」(マウスコンピューター)、(以下、P120A―EDU)10台や「micro:bit」などを活用してプログラミング教育などに取り組んでいる。3月4日、6年理科の授業を取材した。
この日は6年理科「電気の利用」の学習で、micro:bitの明るさセンサーを利用して「暗くなるとLEDが点灯し、明るくなると消える」プログラムを児童3人につき1台のタブレットPCで取り組んだ。
micro:bitとLEDライトをPCに接続すると、LEDが光る。「暗くなるとLEDが点灯し、明るくなると消える」プログラミングのためには「もし部屋が明るくなったら」「そうではなかったら」という条件分岐の考え方が必要なことに気付かせ、実際にプログラミング。タブレットPC1台の画面を3人で確認しながら進める。「P120―EDU」は視野角が広く発色も良いため、3人でも見やすそうだ。「電気を消して試したい」という児童のリクエストに教室の照明を消すと、LEDが点滅。教室からは拍手が起こった。照明をつけると再びLEDは消えた。
学習のふり返りでは、プログラムの仕組みが日常生活とどのような関わりがあるのかを考えた。児童はワークシートに、暗くなると点灯する街灯、開けると明るくなる冷蔵庫、人が来ると開く自動ドアなど様々な生活用具について記載。お風呂のお湯もそうかも、電子レンジや洗濯機は、自動運転はどうだろうなど様々なつぶやきが教室から聞こえてくる。「街灯や信号などがプログラムで点滅したり消えたり色が変わることがわかった。いろいろなプログラミングに挑戦したい」と感想を記す児童もいた。細見教諭は「人が近づくと点灯する照明」は人感センサーでプログラミングできること、次は暑くなると回転し、涼しくなると回転が止まる扇風機のプログラミングに挑戦することを伝えた。
この日の授業については、同校の情報担当として「なるべく簡単に誰でもプログラミングの授業ができる」ことを想定して構成。児童は実際の生活に結びつけて考えることができたようだ。無線接続ではなくUSBケーブルを接続して実行したことについては、「電気の学習に必要なMakeCodeのブロックを利用するため、USBケーブルで接続する必要があった(※)」と話す。
※プログラミングは(https://makecode.microbit.org/)を使用
細見教諭が「P120A―EDU」を活用したいと思ったきっかけはプログラミング教育だ。
「micro:bitでScratch Linkを使用するためにはOSがWindows10であることが必要で、最新のタブレットPCを活用したかった。また、『P120A―EDU』は発色が良く、画面も12型と大きいため、グループに1台でもプログラミング画面が見やすいと考えた」と語る。キーボードは着脱式のため、用途や学年によって使い分けができる。
児童は「写真・動画など2人で画面を共有するときはタブレットだけで平置きしたほうが見やすい」「計算ドリルや漢検ドリルをする時、写真・動画を撮影する時、作品を先生にすぐに見せたい時や発表する時はタブレットだけで活用したい」と話している。最新のタブレットPCが届くと児童は大喜びで、休み時間に児童向けポータル「学びの広場」にアクセスしてプログラミングなどに取り組んでいたという。これは丹波市教育委員会が管理している学習用サイトだ。「プログラミング教育を始めとする情報活用能力を育成するためには気軽に活用できる環境が求められる。今は『P120A―EDU』を普通教室に設置して充電しており、児童は休み時間などに自由に活用している」と話す。
同校の教員にも好評だ。特別支援教育を担当する教員は「『P120A―EDU』で子供たちの反応や意欲が高まった。これからも教室に常設したい」と話している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年4月1日号掲載