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教育ICT

IEスクール・ICTスクールの成果を報告

2019年4月1日

カリ・マネと授業デザインを検証

文部科学省は新学習指導要領の実施を見据え、次世代の教育情報化推進事業「情報教育の推進等に関する調査研究」としてIE―School(情報教育推進校)及びICT―School(ICT活用事業推進校)を指定。採択先では、カリキュラム・マネジメントのあり方やICTを効果的に活用した指導方法の開発など実践的な研究を進めてきた。2月27日、平成30年度IE―School+ICT―School成果報告会を都内で開催。両事業の推進校の取組と成果が報告された。

IE―School

IE―Schoolは情報活用能力を各教科等の学習と効果的に関連付けて育成するため、カリキュラム・マネジメントの在り方について調査研究を行うことが目的。安藤明伸准教授(宮城教育大学)は、推進地域の取組をもとに「情報活用能力を育成するためのカリキュラム・マネジメントの在り方と授業デザイン」をまとめており、今年度の取組を踏まえ、ステップ5を追加して近く公開すると話した。

長野県教育委員会

長野県教育委員会は信州大学と連携してプログラミング教育を実施

長野県教育委員会は信州大学と連携してプログラミング教育を実施

長野県は中山間地域にある3校(飯田市立上村小学校、木曽町立三岳小学校、栄村立栄小学校)を推進校に指定。①多くの小学校で取り組める、②プログラミング教育の視点も組み込むことの2点に留意して実践した。

これまでICTを活用してきた信州大学教育学部附属長野小学校や附属長野中学校の実践と、推進校のカリキュラム案を統合。附属学園の特色ある活動と推進校での活動を擦り合わせ、目標リストに照らし合わせて整理。プログラミング教育は「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」に着目。小学校中学年では信州大学の協力によりプログラミングの楽しさが伝わる題材を普及した。

三重県立名張青峰高等学校

同校の全教室には電子黒板が設置され、生徒1人1台にタブレット端末を配備。「みんなで」をキーワードに、すべての教科でICT活用を推進。教科マネジメントシートを作成し、「未来を拓く力」「グローバル化社会で活躍する力」「人とつながる力」を育んだ。

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PCに詳しい生徒がICTリーダーというクラス役員となり、PCが苦手な生徒や教員をサポート。学校全体でICTを活用する体制が整った。

奈良県立香芝高等学校

同校では、各教科から1名、管理職、教務主任からなるプロジェクトチームを編成して情報活用能力の体系表を作成。シラバスの年間計画に情報活用能力を追加して各教科の学びを通して情報活用能力を身につける仕組みとした。

全職員を対象としたスキルアップ研修も実施。奈良県教育委員会が認定するICT活用教育エバンジェリストが講師を務め、研修を企画立案・実施。研修の成果として、教員の授業デザインが有意に向上した。

福岡教育大学附属久留米小学校

同校では、情報活用能力に関わる資質・能力と、各教科の関連性について整理。例えば「思考力・判断力・表現力の育成」では、6年・家庭科の調理プラン「ともに生きる生活」でプログラミング体験を位置付けた学習を行った。情報活用能力育成のための指導計画作成にあたり以下を重視。①位置付けやすい単元、②教科の内容とのつながり、③教科間の関連、④単元間の関連。その関連が妥当か、実際に授業を行いながら確かめた。今後は、評価データとして分析するとともに、教科との関連を見直していく。

北海道教育大学附属釧路中学校

同校が組織マネジメントで意識したのは「役割の明確化」「体制の強化」「周知の徹底」の3点。推進委員は研究部、拡大推進委員は主任クラスが集まる運営委員会を活用することで、会議を増やすことなくチェック体制を強化した。マネジメントの中に職員会議や全校研修で提案・報告・実践する流れを組んだことにより、職員全体に周知徹底が図られた。

「教科横断的な視点」では、横断的なカリキュラム表を作成。検討を繰り返し行った。

「授業マネジメント」では、技術と美術のコラボレーション型授業「Technology&ART」を新設。合科により重なりあう資質・能力の効果的な育成を目指す。

横浜国立大学教育学部附属横浜中学校

横国大附属横浜中は校内組織を再編成してICTスキル向上を検証

横国大附属横浜中は校内組織を再編成してICTスキル向上を検証

同校の生徒は1人1台のタブレット端末を所有している。この環境によりICTスキルが向上しているかを検討。タブレット端末を自宅に持ち帰り、長期休業中にパフォーマンス課題を実施。実態と変容を把握して具体的な学習活動のデザインやカリキュラムの改善を目指した。

パフォーマンス課題の内容は、キーボード入力スキル、グラフ作成問題、情報検索問題など。調査の結果、2年の秋には操作スキルの向上が顕著に見られ、効果的に学習を進められるようになった。デジタル情報を扱う場面を1年次から、さらに増やす必要があることも分かった。

平成30年度は教職員のネットワークづくりに重点を置くとともに、各学年でICT担当を決めて迅速な対応を図った。

神奈川県立住吉高等学校

同校では、教頭をリーダーに各教科の代表教員から構成されるワーキンググループを立ち上げた。教員の情報教育に対する意識向上に向けて「情報活用能力の実践力」をinput・思考・outputと簡略化。「input」は教科書や資料などから情報を得る活動、「思考」はinputした情報や経験を基に様々なことを考える活動、「output」は思考したことを発表したり共有したりする活動。これにより学校の現状を情報能力の育成という視点から教科横断的に整理し、カリキュラム・マネジメントの進め方を理解。授業で情報活用能力の育成が行われていることが明確になった。

ICT―School

ICT―Schoolは、ICTを活用して主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を図ることがねらい。個に応じた指導と各教科におけるICTを使用した指導方法の開発などを目指すもの。

高橋純准教授(東京学芸大学)は本取組について、①ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」の視点からの単元・授業デザイン、②ICT活用によって得られた学習記録データの評価への活用の2点を挙げた。単元・授業デザインについては、学習課題の工夫や、学習活動のための教材の工夫などを観点に取り組む姿が見られたと話した。

喬木村立喬木中学校

同校は2年・数学「図形の調べ方」でICTを活用。導入場面では本時の課題と既有知識の結びつきを分かりやすくするため自作フラッシュ教材を活用。追究場面ではデジタルノートを利用し、個人追究、協働追究を行った。デジタルノートは、紙のノートより自由度が高く、瞬時に他の生徒のデジタルノートと共有できる。評価の場面では授業で分かったことやまとめを写真に撮り、マトリクスにまとめ掲示板に投稿。瞬時に生徒の理解度が分かり、教員の形成的評価のツールとしても使える。

情報収集や見通しを立てる場面でICT機器を活用したことで、時間の短縮や生徒の主体的な学びにつながった。

北海道富川高等学校

主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、数学では係数の変化とグラフの変化の関係性を、既習事項を活用して導き出した。全14時間「2次関数」で、前半6時間はICTを使わず基礎を定着。後半7時間目から発展的な内容の際にタブレット端末を使用しグラフ作成ソフト「GRAPES」を活用。視覚的に確認できることが生徒の安心感につながり、主体的な取組ができた。

評価に関しては、Web上に生徒が操作したファイルが残されており、ワークシートと比較することで生徒の思考過程を確認できた。

千葉県立袖ヶ浦高等学校

同校では、世界史「歴史と現代社会の関わりを考える」でICTを活用。歴史を暗記科目と捉える生徒に対して、身近なニュースを取り上げながら歴史タイムマシンというアプリを活用。歴史的事象を現代に応用すると何ができるかを考えるようにしたところ、複合的な考察ができるようになった。

古典「竹取物語」では、理解が深まる問題を生徒が考え、タブレット端末で検索して問題に対する解説根拠資料をグループで作成。タブレットのカメラで撮影した絵を資料として提出した。生徒は授業を基に「問い」を作るようになり、生徒が作った問いに別の生徒が答える学びが生まれた。

山江村立山田小学校

山江村立山江小はポートフォリオをデジタル化して学びを連携

山江村立山江小はポートフォリオをデジタル化して学びを連携

同校では6年・算数「資料の調べ方」でICTを活用。単元を通して、ICTによる平均、度数分布表、グラフの作成などのデータ処理を行った。

学習者にとって身近なソフトボール投げの記録や読書冊数を10年前の児童の記録と比較。

手順の見通しを、児童がタブレット端末に書き込みながら検討。その後、表計算ソフトを使って表計算処理からグラフの作成までを45分間で行った。最後に学習記録データをデジタルポートフォリオ化。全児童の学習記録データを閲覧できるため、児童の相互評価や学びの連続性が生まれた。

八峰町立峰浜小学校

4年・社会科「住みよいくらしをつくる~ごみの処理と利用~」で、次の3点でICTを活用。①タブレット端末を使って学習資料を児童が作成する活動、②気付きや考えを書き込んだスライドを作成し、話し合いで様々な視点から考える活動、③支援システムでの共有や発信で地域社会の一員となる活動。

タブレットでの資料作りでは、児童の視野が広がり、事象を多面的に見ることにつながった。

授業で使用したデジタルシートやノートの振り返りなどはすべて提出。個人フォルダに入れて、ポートフォリオ的に活用。これまでの学習の流れを一覧で見る。これまでのデータに授業でのつながりを意識させながら、分かったことを記入していく。この再提出したデータにより、児童は学習内容を内側から整理できた。

武雄市立橘小学校

ICTを効果的に活用する「橘スタイルの授業づくり」に向けて「すべての児童が自分の考えを表現できる授業」「児童が必要な情報を取捨選択する授業」「教員が積極的に適時の指導・支援を行う授業」を目指した。主体的・対話的で深い学びにつなげるため、つかむ、見通す、考える、考え合う、ふり返る、の学習過程でICTを活用。「つかむ」は既習事項と比べたり、予習課題を確認したりして課題をイメージしやすくする。「見通す」は解決方法や進め方、資料やモデルを提示して学習に見通しを立たせる。「考える」は自分に合った表現方法を選び、自分の考えを表現する。「考え合う」は子供同士が考えを比較・検討することで、より良い考えを見出す。「ふり返る」は学習内容の定着を図り、自己の達成状況をふり返る。

学習評価は、児童のノート、デジタルシート、マッピング、デジタル問題などから行う。収集した評価データは、児童の学習状況を事前・事後やその場で判断し、個に応じた指導・支援に活かす。

大阪教育大学附属池田小学校

同校は、ICTを使う内容を子供たちが考えた。3年・算数の授業で「会場までオリンピックを見に行きたいか」というアンケートを全校で実施。アンケートの結果を、児童がバーコードを使ってデータを入手する段階からICTを活用。

自分のクラスのデータを集積する中で、人気のある競技が分かる。それを全校のデータと比べると人気の競技は変わる。その原因を探るべく、グラフで比較するなどのICTを使いたい気持ちが生まれた。

児童はグラフを作成し、手書きの良さを認識した上で、デジタルでグラフを表現。デジタルとアナログのどちらが良いかではなく、自分の能力と対応させて表現方法を判断した。

京都教育大学附属桃山小学校

京都教育大付属桃山小は様々なデジタル思考ツールを活用

京都教育大付属桃山小は様々なデジタル思考ツールを活用

同校では、どうすれば見方・考え方を働かせた深い学びができるかを課題に研究主題を設定。学習過程において、意図的に見方・考え方が働くようICTの活用場面を設定した。

6年・国語「やまなし」ではデジタル思考ツールを活用。「やまなし」の5月と12月を比較して相違点から物語を解釈。続いてピラミッドチャートで物語の構造を可視化。ベン図では作者の他作品と「やまなし」を比較して特徴を探る。最後にすべてのシンキングツールの情報をフィッシュボーン図に移動し、自分の考えを形成。大量の情報を共通したデジタル思考ツールで整理することで、考え方が視覚的に共有しやすくなる。

「やまなし」の作品世界における自分なりの考えを、物語以外の部分を関連付けながら解釈できているかで評価した。

総括
堀田龍也教授 東北大学大学院

新学習指導要領で基盤となる力に情報活用能力が位置付けられたことが両事業を推進する背景にある。IE―SchoolとICT―Schoolは同時並行で事業を進めてきたが、「情報活用能力の体系的な育成」と「情報活用能力を発揮した学習活動」は同じ学校の中で行われ、バージョンアップすることが求められる。そのためには学校のICT環境の整備が重要になる。

文部科学省が実施した情報活用能力調査で衝撃的だったのは、日本の子供の文字入力速度が分速5・9字だったこと。これではICTを使うことで思考が妨げられる。これからの時代を生きる子供たちが学習の道具としてICTを使うには、基本的スキルを早期に身につける必要がある。

ICTを授業で活用する場面に至るまで、どれだけ子供のモチベーションが高まっているかは授業づくりに左右される。授業の中にICTを使う場面をどのように配置するか、学習過程を意識した授業設計に取り組むことが重要である。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年4月1日号掲載

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