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教育ICT

【対談】「新しい学び」や、いじめ・不登校などを未然に防ぐ学習集団をつくる

2019年5月13日
教育クラウドで新しい学びの基盤作り

午前中に調査・分析、その日の午後にサポート

「まなびポケット」(NTTコミュニケーションズ)は各社の様々なデジタル教材を1人1IDでシングルサインオンにより活用できる教育クラウドポータルだ。様々なデジタル教材が並ぶポータルにおいて、ひときわ異彩を放っているのが心理アンケート「WEBQU」である。2019年4月より本格的な販売を開始した「WEBQU」は、教育現場で広く活用されている学級集団心理調査「Q―U」をWeb化し、さらに機能を追加したもの。新学習指導要領で求められる「新しい学び」や、いじめ・不登校などを未然に防ぐ学習集団作りを示唆するレビュー機能などがある。「WEBQU」の開発者である河村茂雄教授(早稲田大学教育・総合科学学術院)と、開発当初から学校現場での検証に協力している松田孝氏(小金井市立前原小学校前校長)に、WEBQUを活用した「学びに向かう力」の育成と、その前提となる親和的で活性化した学習集団作りについて聞いた。

学級集団心理調査「Q―U」をWeb化

教員の自己研鑽を促す指標作りからスタート

早稲田大学教育・総合科学学術院 河村茂雄教授

早稲田大学教育・総合科学学術院 河村茂雄教授

河村 1990年代、教員の自己研鑽を図るための指標が必要であると考え、「児童生徒のやる気」や「集団としての居心地」などを見える化しようと考えて開発したものがQ―U(=QUESTIONNAIRE―UTILITIES)です。

Q―Uにより学習集団状況を分析して改善に取り組む教員が増えましたが、中には調査結果を活かしきれない教員もいました。そこで、「今このような状態だから、このような手立てが必要である」という診断を追加し、ソーシャルスキルも分析してその結果を子供1人ひとりに返却できるようにしました。それがhyper―QUです。教員の自己研鑽を促すものから手立てを示すものに一歩進めたわけです。現在、年間でのべ500万人が活用しています。

松田 Q―Uとの出会いは、狛江市教育委員会で指導室長を務めていた時です。狛江市の子供たちは当時、集団として落ち着いていましたが、それに伴う学力に到達していない、という課題がありました。そこで、2012年に早稲田大学と協定を結んで学習集団の意欲の計測を始めました。

河村 狛江市は当初、ポテンシャルある子供、伸びる子供を伸ばしきれずにいる、という傾向がありました。クラスが静かで落ち着いていると、教員はそれで満足してしまう傾向があるのです。

松田 当時実施したのは小学校5年生と中学校2年生で、下位集団の意欲が向上したなどの成果がありました。教育委員会という立場で各学校の変容を見てきましたが、校長のリーダーシップによって学校の成果は大きく異なりました。狛江市ではその後も継続し、現在は小学校3年生から中学校3年生までが年2回取り組んでいます。

問題を抱える子供は即時対応を求めている

小金井市立前原小学校前校長 総務省地域情報化アドバイザー 松田 孝氏

小金井市立前原小学校前校長 総務省地域情報化アドバイザー 松田 孝氏

松田 当時から紙ベースのQ―Uの内容や効果は十分知っていますが、WEBQUはさらに大きく進化しましたね。

河村 Q―Uには、調査の診断が出るまでに2週間弱はかかるという課題がありました。
調査で自分の悩みを吐露した子供は、すぐに対応があると期待して待っているのです。数日のうちに対応しないと、期待が裏切られたような気持ちになり、さらに問題が悪化することがあります。

そこで、すぐに対応できるように、2018年からWEBQUとして試験的に提供を始めました。Web化することで、午前中に測定して午後すぐに対応できる、という体制が整いました。

松田 2013年にいじめ防止対策推進法が施行されましたが、その後もいじめが原因の自殺は後を絶ちません。Q―Uアンケートを実施したのに、返却までに時間がかかって何もできなかった、では許されないのです。

学期の節目の席替えで「好きなもの同士」を良しとする教員がいます。これは、親和的な学級ならばあり得ますが、そうではない学級にとっては危険です。「給食の時間に好きなもの同士で班を作るようになり、孤立した」ことなども影響し、自殺に繋がってしまった事件もあったと聞いています。WEBQUで分析すれば、その学級にとって好きなもの同士の編成が危険なのか有効なのかもわかり、学級の状態を把握してグルーピングを考えることができます。

小金井市立小学校長時代、ノートPCやタブレットを児童全員が活用できる環境もあり、WEBQU開発に伴う効果検証協力校として、いち早く活用することができました。

Q―Uは従来、年2回の実施が一般的ですが、検証ということもあり、昨年度は3月にも実施しました。紙ベースのQ―Uの場合、3月上旬に実施しても結果が出るのは終業式後となり実施は不可能ですが、WEBQUではその日のうちに結果が出るので、卒業前や進級前に大きな不安を抱えている子供には、その日の午後に養護教諭やスクールカウンセラーの相談を受けるなど迅速にサポートができました。

ちょうど同じ時期、卒業式直前に2人の小学校6年生が自殺するという傷ましい事件が起こっていました。WEBQUを3月に実施することは、そのような事態を避けるためにも有効ではないかと強く感じているところです。3月に実施することで、次の学年の学級編成にも役立ちますし、年間を通じた学校長としての学校経営判断としても活用できます。各クラスによりばらつきがあった場合、それは学級担任個人の責任ではなく、学校経営の組織的な取組の反省点と考え、次年度への取組に生かすべきであると感じているところです。

20年にわたるデータを分析 傾向を判断して次の一手を示す

河村 WEBQUは、単なるWeb化にとどまりません。この集団はこんな強み、こんな弱みがある、だからアクティブ・ラーニングをする際にはこんな形式が向いている、など新学習指導要領で求められる「学びに向かう力」の育成につながるコンピテンシーベースの学習活動のあり方の提案もできます。「できればやってみよう」ではなく、「やりましょう」と次の行動を促すのです。

これが可能になったのは、20年にわたるQ―Uの実施でデータが膨大に蓄積されていたからです。4~5月の時点で学級の規律が確立できていない集団は年度末にはこうなる、そこでこのような行動をしてはどうか、このような集団であればこんな活動が良いなどのレビューを出しています。

松田 前原小学校は若手教員が多く、やる気はあっても学級が安定するまでに多くの苦労がありました。そこで学級内の人間関係の構築を促すことで安定を図り、教員の努力が報われやすい教育環境の構築につながればと検証に取り組みました。

それまでは、データ返却後に分析や方針決定を検討する時間が必要でしたが、WEBQUは、学習集団の状況を瞬時に可視化し、さらにその後の行動指針も示します。そのコメントが具体的でわかりやすく、すぐに取り組むことができました。

学級における規律や関係性の状況、学級の活性度や安定度も示され、エビデンスが明確なので校長としてもアドバイスしやすいというメリットもあります。

紙のQ―Uを導入している学校は多いと思いますが、一度でもWEBQUをやってみると、まったく別なものであることがわかります。

学力テストとクロス集計 成果を示して次の段階へ

河村 WEBQUは心理統計レベルで分析し、危険度も指摘しますし、学力調査とのクロス集計も可能で、多様な知見が得られます。

ある地域では、学力向上に向けてドリル学習に熱心に取り組んだのですが、全国学力・学習状況調査の結果、全体の平均点が伸びませんでした。分析したところ、学力低位層は上がっていたのですが、上位層は下がっていました。QUで検討した結果、ドリル学習の増加により上位層の学習意欲が下がり、その傾向は特にB問題に表れ、全体では現状維持になったことがわかりました。

上位層には、下位層とは異なった学習を用意すべきである、ということがQUの分析により明確になりました。

今、ICTを突破口として新しい学びに挑戦しよう、という機運が高まっています。新学習指導要領の理念は、学び高め合う力を持つ子供の育成であり、親和性が高く、かつより活性化した質の高い学習集団が求められます。これは理想的で共感できるものです。しかし学校現場にとってはハードルがとても高いです。教員が「できない」と音をあげかねません。その結果、新しい学びの可能性を諦め、最低限の知識を教える実践に留まる、という危険もはらんでいます。WEBQUは次の手立てを提案できるという点で、ICTや新しい学びに関して経験の浅い教員に対する支援の一端を担えるのではないかと考えています。

松田 画一的な教育からの脱却が求められていますが、求められるニーズが多すぎて挑戦する時間と元気が不足している点が最も大きな課題です。

ICTによりその子の理解に応じたアダプティブな学びを進めることで、子供のモチベーション向上を図ることができますが、効果効率でのみICTを語るべきではないと考えています。

教員が確かな時代認識をもって、子供たちの未来に責任ある教育実践を創り出そうとする思いを持ち、また、教員が一方的に教える授業でなく、児童生徒が自ら学ぶ学習に学校教育を転換していくような教育哲学があることが前提で、これを具現化し、支えるものがWEBQUであり、ICT活用です。

例えば「学びに向かう力」を育むために、ICTを活用すれば子供たちのメタ認知活動を組織して、意欲を喚起することができます。子供たち1人ひとりが学習活動を毎時間振り返り、単元終了時に毎時間の振り返りをレビューすれば、それが貴重なメタ認知活動となります。ICT活用で、子供たちの毎時間の振り返りをポートフォリオとして簡単に一覧できるのです。

その過程を教員は共感・理解・応援して次の行動を示唆していく。さらにその成果について、WEBQUで教員自身が振り返り、これで良いのか、修正が必要なのかを継続的に判断できるのです。

教員自身の自己肯定感も高めることができる、大変心強い指標です。

河村 変革期には組織的にも個人の心理的にも、少なからず混乱が起こるものです。このとき指標の共有がないと、足並みをそろえることは難しい。WEBQUはその指標を示します。「こんな学びを実現したい」という思いが教員間で共有されるとWEBQUは大変うまく活用できます。管理職にはビジョンをもって教員を巻き込んでほしいですね。

新学習指導要領が上手く離陸できるか否かは今後数年が勝負と考えています。学校は地域の拠り所ですから、できる限り応援していきたいと思います。

「朝ノート」と連携して分析 多様性を認め合う学習集団に

松田 WEBQUは、教育クラウド「まなびポケット」で活用できる授業支援ツール「スクールタクト」とも連携しています。ここで、子供たちの朝の体調や気分をテキストや画像で表現する「朝ノート」に取り組みました。クラウドベースなので、保健室登校の児童や、ふだん発言の少ない緘黙(かんもく)傾向のある児童も参加できます。

これを児童はお互いにノートPC上で見に行くわけです。誰が誰を閲覧したのか、どんなコメントをやりとりしているのかがわかり、子供たち同士の関わり合いとWEBQUの満足度を紐付けて可視化でき、子供の関係性が明らかになります。コメントをもらって元気が出る、児童同士が互いに気遣い合うなどで新しい関わりも生まれ、関係性がより豊かになっていきました。

4月の学級開き当初は大変忙しいこともあり、学級のルール作りで手いっぱい、という状態が多いのですが、この仕組みにより、コミュニケーションを起点とした子供たちの集団作りを行えるようになりました。これまで教員の力量に頼ってきたことが、ICTにより可能になるということです。学校長も各学級のプロットを確認できるので、学校経営に生かすことができます。

河村 日本人には、狭い内輪のグループ内での親密性を大切にする、という特徴があります。新しい学びでは、その枠を広げていくことを求めており、それに役立つ仕組みであると考えています。

インクルーシブ教育の実現にもICTやWEBQUが有効です。多様性を認め合う手立てとしてWEBQUを上手く利用していただきたいですね。

QU大学版も提供 社会性を育むサポートに

河村 Q―Uは、今後、高等学校や大学での活用も増えてくると予想しています。

ミレニアル世代は好奇心旺盛ですが飽きるのも早く、マンネリ化が早期に起こり、学習展開を工夫しないと学習意欲の継続が難しくなっています。黒板とチョークだけで既存の知識を伝える授業では、もうもちません。そこを補完するためにICTは急速に導入・活用が進むでしょう。このときWEBQUは、アクティブ・ラーニングなど次の創造的行動の資料ともなります。

就職活動を学生任せにすることが難しくなっている中、大学の1年生から社会性育成のサポートが必要な時代がきました。これまでのデータの蓄積から、「このままいけば不適応になる」などがデータでわかります。学生と接する機会の少ない就職支援課担当の方でも、具体的なアドバイスをしやすくなるのではないでしょうか。

■WEBQU

Webベースで活用できる学級経営サポートシステム。質問項目は、いじめ・不登校、やる気、ソーシャルスキル、アクティブ・ラーニングなど。これらの回答を基に児童生徒の学級満足度を即日把握・可視化・対応策をレビューする。いじめ早期発見シグナルやアクティブ・ラーニングが可能な集団作り、学習指導理解をサポート。児童生徒ごとの診断結果も表示できる。

〈プロフィール〉

河村茂雄 (かわむらしげお)

博士(心理学)。公認心理士。15年間の教員・教育相談員を経、岩手大学助教授・都留文科大学大学院教授を経て現職。日本教育カウンセリング学会理事長・日本学級経営心理学会理事長・日本教育心理学会理事・日本カウンセリング学会理事など。著書に「学校管理職が進める教員組織づくり 教師が育ち、子どもが伸びる校長のリーダーシップ」「アクティブ・ラーニングのゼロ段階 学級集団に応じた学びの深め方」ほか多数

松田 孝 (まつだたかし)

東京都公立小学校教諭、狛江市教育委員会主任指導主事・指導室長、東京都小金井市立前原小学校校長など。現在、合同会社MAZDA Incredible Lab 代表。総務省地域情報化アドバイザー、金沢市プログラミング教育ディレクター、小金井市教育CIO補佐官。2018年から早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。「プログラミングえほん」、「プログラミングを学ぶ前に読むアルゴリズムえほん」監修

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載


【全国7都市で開催】ICTを活用した学校経営セミナー・ご案内

  • 1人1台Chromebook活用やプログラミング教育など、新しい学びを学校経営や学びに向かう力の育成に活かしてきた小金井市立前原小学校前校長の松田孝氏が、「教育ICTが拓く新しい学びPerspective-小金井市立前原小学校の挑戦」をテーマに、全国7か所で講演します。
  • 広く学校現場で活用されている学級集団の状況を見える化する「Q-U」をWEB化した「WEBQU」活用による学習集団の変容についても報告。
  • 情報交換会では、直接、日頃の疑問をお聞きすることもできます。
  • 会場では、前原小学校で実際に利用されている「Chromebook」や教育クラウド「まなびポケット」なども実際に体験できます。
開催日程 (1)福岡開催
5/17(金)16:30~   会場:TKPガーデンシティ博多

★本会場は、学校教員の方のみでもご参加いただけます。
(2)沖縄開催
5/25(土)14:45~  会場: 沖縄産業支援センター展示場
★「Q-U」開発者である早稲田大学 河村茂雄教授との共同登壇の特別会です。
(3)大阪開催6/14(金)16:30~   会場:帝国ホテル大阪
(4)東京開催6/20(木)16:30~   会場:NTTコミュニケーションズ本社(大手町)
(5)札幌開催6/26(水)16:30~   会場:モントレ札幌
(6)仙台開催7/12(金)16:30~   会場:NTTコミュニケーションズ(株)東北支店
(7)名古屋開催7/19(金)16:30~ 会場:NTTコミュニケーションズ(株)東海支店
セミナー内容 第1部 松田孝氏講演「教育ICTが拓く新しい学びのperspective」
~ICTを活用した学級経営~
・「Chromebook」と「まなびポケット」を活用した実践事例
・WEBQUを活用した学級経営
第2部 情報交換会
※松田先生に直接ご質問いただけます。 ※沖縄開催のみ一部異なります
備考 ・各回の定員は30名前後
・本セミナーは、 Google for Educartion 、レノボジャパン(株)、NTTコミュニケーションズ(株)の共催です
・詳細はこちら https://manabipocket.ed-cl.com/726/

 

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