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教育ICT

BYODに対応できる準備を始める~GLOCOM豊福晋平准教授

2019年7月9日
特集:先端技術で学びを支える

複数OSでも“つながる”教室へ
カリキュラムオーバーロードをICTで解決する

豊福晋平
准教授・主幹研究員
国際大学グローバルコミュニケーションセンター 
(JAPET&CEC教育ICT課題対策部会オブザーバー)

 

 

現在、教育に求められる知識や技能が急速に増えており、世界的に「カリキュラムオーバーロード」の問題が起こっています。単に授業時間や研修を増やしても解決できない状況にあります。

これを決定的に解決するには、ICT活用しかありません。同時に、「工業化社会」をモデルにした、知識をコンパクトに詰め込む学校教育を大きく刷新し、これまでの成功事例を捨てなければなりません。

子供が活用するタブレット端末を教員がコントロールする、という点も工業化モデルの名残です。必要なときだけ、即ち教員が許したときだけ、電源を入れる、という使い方です。

テクノロジーは、「導入するだけ」で教育改革が起こるわけではありません。テクノロジーを入れることで、子供自身が、圧倒的な情報量を入手・活用できることで改革が進むのです。

電源は常にオン。疑問はすぐに調べる。既に家庭・ビジネスで一般化している使い方です。

理解度に合わせて学び直しや先取り学習をする、蓄積した自分の作品や学びをふり返り、再編集するなど、子供が主体的に取り組む手段があることが、過剰なカリキュラムの解消と学習品質の保持に貢献します。オンラインで協働的に学ぶと、互いのまとめを確認し合うなど、教員が指示を出さなくても学びの協働化が進みます。

学びの社会化にもつながります。まとめた成果に自信が持てれば、地域や一般社会に公開したくなるものです。

ストックホルムの小学校では、半年以上かけて創作物語を書く授業があります。作文用紙を何枚か渡して「自由に書いて」というスタイルではありません。登場人物の設定や時代背景、ストーリー構成などのコンセプトワークから始め、完成した作品は電子書籍(EPUB)にまとめ、子供同士だけではなく、保護者にも公開しています。ICTの活用で「作品集」を印刷してまとめなくても、公開できるのです。

学校もBYOD環境へ

今、注目されているのが、個人のスマートフォン持ち込みを含めた「BYOD環境への対応」です。柴山文部科学大臣はこの1月、スマートフォンの持ち込み規制を見直す、としました。大阪府は持ち込みの検討を始め、東京都は6月、条件付きで解禁しています。

BYOD環境に対応するためには、Windowsだけ、もしくはiOSだけがつながる環境では成立しません。複数OSに対応できる環境が前提になります。

自由な活用は家庭ですれば良い、という意見もあります。しかし家庭では、どうしても「情報の浪費」や「消費」に流れるものです。

創作、協働、討論などアウトプットできる「学びの舞台」を用意することが、学校の役割です。

日本の子供たちが学校に通う意味は何か。部活動や大学入試のために休まずに行くことが求められる、そのような学校で「Society5・0」を実現できる人材を育めるのでしょうか。デジタルシチズンシップ(インターネット活用を前提とした健全な市民)が育つのでしょうか。

将来の職能・資質に必要であると子供自身が納得できる学びを提供しなければなりません。

全教室「無線化」は自由な活用への第一歩

すべての生徒が教室のどの席からでも自分のタブレットを大型提示装置につなげ、提示しながら説明する--という授業のためには、全教室に無線環境が必要です。

学校現場を視察すると、思いのほか多いのが、ケーブルに関するトラブルです。細いものはすぐに劣化し、消耗品としてその都度変えて対応することが一般的です。太いものであっても、根元の損傷は経年で必ず起こります。有線ケーブルの長さが足りない、引っかけて抜けた、発表端末を変えるたびにケーブル抜き差しの時間が必要--などの前時代的なトラブルも起こります。無線環境の整備は、これらを回避する、自由な活用への第一歩といえます。

学校整備による端末、持ち込み端末、いずれであっても、「つなげて活用できる」こと。WiFiなし、端末のみを整備して学校の中だけは平和、という見当違いな整備から脱却し、デジタルシチズンシップの考え方で整備・運用を検討する段階にあります。

1月に第一次提言を文部科学大臣に提出

GLOCOM六本木会議では、2017年から教育分科会とセキュリティ分科会を行っています。そこでまとめた第一次提言を本年1月、柴山文部科学大臣に提出しました。全小中学生への端末整備と学校への確実な情報環境整備、教育の情報化実態調査における新しい提案などです。

調査については「何台整備されているか」ではなく、「何台活用しているのか」の視点で考えよう、という提案です。端末が壊れていても、活用されていなくても「1台」と換算する現状では、実際の活用状況はわかりません。「使う」「使い続ける」ことに焦点をあてた統計が必要です。子供はクラウドを活用しているのか。IDを持っているのか。発表や調査、まとめ、協働作業、創作など、どの時間に多く活用しているのか。OECDの調査でも、「(端末は)学校にあり、使っている」「学校にあるけど使っていない」など、子供の活用に照準を当てています。

現在、第二次提言を準備中で、クラウド活用やデジタルシチズンシップ、ビッグデータ活用を盛り込んだ提言とする予定です。


Actiontecは無線画像転送装置「ScreenBeam」を提供している。WindowsやAndroid端末を大型提示装置に提示できるミラキャスト機能に加え、iOSにも対応した新製品を発表。さらにChromeOS対応の新製品も発売予定。BYODを見据えた教室の無線化には欠かせない無線機器として導入が進んでいる。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年7月8日号掲載



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