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教育ICT

1人1台端末 その先を考える

2021年8月2日

異なるゴールに対応できる環境へ

1人1台端末がほぼすべての小中学校に整備され、各校でばらつきはあるものの活用が始まっている。高等学校でも、各自治体の裁量で配備が進みつつある。1人1台端末は、個別最適な学びを実現するための文房具として活用されなければならない。探究的に個別最適な学びを行い、Society5・0を生き抜く力を身につけるためには、さらにその先の目標提示と環境が必要である。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの主幹研究員である豊福晋平准教授は「子供の力を信じてそれぞれのゴールに向かって進めるような環境構成は、個別最適な学びにもSTEAM教育にも探究的な学びにも寄与する」と話す。海外や国内の好事例について聞いた。

フィンランド・ヘルシンキ中央図書館の「Oodi」(オーディ)の2階は、デジタルを活かしたクリエイティブ活動に取り組める空間。VRゲーム室、様々なソフトが活用できる高性能PC、3Dプリンターや大型レーザープリンター、レーザーカッター、ミシン、デジタル音楽制作用ブース、作業台、キッチンなど「ものづくり」にデジタル活用できる環境だ

「近すぎるゴール」は誤解を招く

11台端末が小中学校に配備され、多くの教育委員会からアドバイスを求められている。その際、まずこちらが尋ねるのは「GIGA端末は、年に何回使われることを想定するか」だ。

「学期に1回くらい」という回答が意外に多い。そうなると、45万円の端末を向こう3年間で9回程度活用することになり、1回の授業につき5000円の計算になる。これでは高過ぎる授業料だ。これで良いわけはない。

GIGA端末が目指す活用は、毎日各自で端末を開けて一日使う、という姿だ。例えば手元のノートのような役割である。

現在、欧米諸国において学校現場に提供されているChromebookWindowsPC150~350ドル程度が主流。毎日の気軽な活用――日々の連絡や調べもの、メモ、レポート作成等、必要最低限のことがそつなくこなせる性能だ。日本に導入された端末も、これと同様「日々の」活用が想定されている。

ところが日本では、ICT活用とは「教員用端末から授業支援ソフトを使って電子黒板等に子供の回答を一斉提示する」レベルであり、11台端末は「PC室でやっていた学習を教員の監理の下、普通教室でも行う」というイメージがまだまだ強い。

こうした活用は、例えるなら東京から品川までわざわざ新幹線で行くようなものだ。つまり、到達目標が以前とそれほど変わらない(近距離)ならば、情報化による効果はほとんど得られない、ということである。

「スモールステップでの研修が重要」という有識者もいるが、逆に大きなビジョン(新幹線に乗って名古屋や大阪に行くレベル)が示せないと、足元の一歩一歩が何を変えるのかただちには分かりにくい。結局「効果は薄い」「これまでの方法が一番効率的」となりがちである。

1人1台端末活用
その後に起こること

そこで提案したいのが、「自らゴールを設定しやすい学びの環境の設定」だ。

GIGAスクールの特徴はクラウドが使える事だ。個人の学びの軌跡(文書・写真・音声など)をクラウドに蓄積するのは11台端末でできる。学習や委員会活動、成果発表会等、何等かの機会でクラウド上のデータを編集して他者に披露することで、学びはさらに強化される。

しかしGIGA端末の画面サイズは10~13インチと狭く、CPUのパワーや搭載されたメモリーやストレージも限定的。文房具としての携行価値は大きいが、凝った用途には不向き。

一般的な教室での授業や、テキスト中心の作業であれば大きなストレスはないが、作品づくりなどを頻繁に行うようになれば、性能に不足を感じる機会も増える。

例えば、大量の動画や音声の編集や3Dグラフィックスなどマシンパワーを要する用途には向かない。

そこで成果物制作の際、高度な編集ソフトや編集機材、3Dプリンター、高性能PCや大画面ディスプレイを配備した環境=メディアラボがあれば、子供の成果物の高度化やSTEAM教育を促す。情報社会でデジタルやオンラインの膨大な情報を扱うのが当たり前になれば、子供の表現やものづくりもまた高度に多様になる。メディアラボはそれらを具現化する創造的な場だ。

すべてのPCに同じ機能を備える必要はない。4K映像を大画面上で編集できる、3Dプリンターに出力できる、高度なデジタル編集ツールがある等、特化した性能のPC等が数台ずつあり、用途に合わせて活用できれば良い。

「個別最適な学び」「探究的な学び」では、学習者が求めるゴールも求められるPCの性能も異なるからだ。

メディアラボは、それぞれが自身のゴールを見つけることができる、教育の個性化につながる創造的な環境として機能する。

教員がすべてを教える必要はない。自ら学びを駆動出来る層は、教員が想定しているよりずっと多いことに気付くはずだ。

日本でも始まるメディアラボの取組

国際大学GLOCOM
豊福晋平准教授

PC室の高度化や図書館のメディアラボ化は北欧を始め欧米で進んでいる。

フィンランド・ヘルシンキ中央図書館の「Oodi(オーディ)はその先端。201812月に開館したOodi2階は、デジタルを活かしたクリエイティブ活動に取り組める空間だ。VRゲーム室、様々なソフトが活用できる高性能PC3Dプリンターや大型レーザープリンター、レーザーカッター、ミシン、デジタル音楽制作用ブース、作業台、キッチンなど「ものづくり」にデジタル活用できる環境が整っている。協働作業スペースも個人学習スペースもあり、いずれも自由に利用できる。ものづくりの国として、クリエイティブの世界にデジタルが融合するのはごく自然な流れである。

日本でも図書館はメディアセンターとしての機能が求められ始めているものの、クリエイティビティやデジタルとの融合に至っている例はまだ少ない。

義務教育学校軽井沢風越学園は今年5月から、大判プリンター、3Dプリンター、ハイパフォーマンスPC(ノート型を含む)や27インチの大型ディスプレイを設置したクリエイティブライブラリーを設置。子供の成果物にも変化がでている

20204月に開校した義務教育学校軽井沢風越学園(長野県)は開校当初から3年生以上で11台のChromebook活用を開始。さらに今年5月から、大判プリンター、3Dプリンター、ハイパフォーマンスPC(ノート型を含む)27インチの大型ディスプレイを設置したクリエイティブライブラリーを設置。

同校では主に3年生以上が個人やグループで探究的な学びに取り組んでいるが、クリエイティブライブラリーにより子供の成果物に変化が生まれ始めている。

昨年度までは原稿作成以降の新聞紙面構成を紙の切り貼りで行っていた子は、今年はAdobeCreativeCloudを使って、フルデジタルの組版をするようになった。3Dのモデリングアプリで脚の骨を制作しているという子は、大人向けの解説本を見ながら自分で試行錯誤していた。自身がサッカーをするので、あんなに重い球を蹴っても衝撃に耐えられる骨の仕組みを学びたい、というのが彼の動機だ。

同校では、学校用の動画シェアサービス「Fripgrid(フリップグリッド)の活用も始めた。任意に設定された問いに対して、子供達が各自の端末を使って動画で答えたり、コメントを付けたり、といったことが手軽に出来る。

投稿動画にアクセスするQRコードをつけることも可能だ。学年の探究テーマについて、それぞれフィールドで集めた実物の素材や作品を会場展示するのと同時に、QRコードでその工程を示した動画も視聴出来るように工夫している。

一方、かえつ有明中・高等学校(東京都)の学校図書館・情報センター「ドルフィン」は本やPCを活用するアクティブラーニングの場で、大型ディスプレイが多数設置されているのが特徴だ。生徒は自分の端末を大型ディスプレイに接続してレポート作業など様々な活動に利用。画面を拡張出来ればより効率的に作業・共有ができる。

目指すゴールを変えると
「限界」が変わる

11台端末を自由に活用する学びについて、「うちの生徒には無理」「効果が見込めない」という意見をよく聞く。

それは本当に子供の限界なのか。近すぎるゴールを示していることが問題ではないのか。

目指すゴールを変えれば、11台端末の活用イメージも変わる。メディアラボのようなオープンエンドの創造的環境を与えることが、11台端末活用にどのような影響を与えるのか検討すべき段階に入ったと言えるのではないか。

「ルールがない、カリキュラムがない、教員が慣れていない」からできない、という声も届く。

しかし、それらがすべてそろえば、本当にできるのか。

メディアラボには、そもそも職業訓練的なカリキュラムは似合わないし、教員がエキスパートになる必要もない。

日本の教育情報化は20年以上遅れている。すべての子供を一斉に同じゴールにたどりつかせる指導は難しく、牽引する教員の負担も大きい。むしろ、子供の力を信じてそれぞれのゴールに向かって進める環境の提供が最も自然で、個別最適な学びにもSTEAM教育にも探究的な学びにも寄与すると考えている。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載

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