総務大臣賞を新設
自らの疑問や課題を学校図書館や公共図書館などで調べ、フィールドワークなども交え、分かったことや自分の考えをまとめた作品を募集する「第２２回 図書館を使った調べる学習コンクール」の受賞作品が決定し、２月２３日に都内で表彰式が行われた。今回、地域コンクールを表彰する賞として、「総務大臣賞」も新設された。
同コンクールは「調べる学習部門」（小学生、中学生、高校生、大人、子どもと大人）、「調べる学習英語部門」（中学生、高校生）、「調べる学習指導・支援部門」がある。今回国内外から１０万７７０８点の応募があり、過去最多（前年比１１７％）となった。また地域コンクールは新たに１５地域が加わり、３６都道府県の１３２自治体が参加した。こちらも過去最多となる。全体応募数のうち１０万３４６８点が地域コンクールでの応募作品だ。
地域コンクールは、図書館利用を通じた地域活性化への貢献も期待される。「総務大臣賞」は、そうした地域コンクールを表彰するため今回から設けられた。初の受賞は福岡県の田川市立図書館。小中学校や市役所だけでなく、地元の郷土研究会や大学などと連携し、大人の部への応募にも力を入れ、講座も実施するなど、地域全体を巻き込んだ活動が評価された。
「調べる学習部門」には、今年もユニークな視点で知的好奇心にあふれた作品が寄せられた。銭谷眞美審査員長は「コンクールでは、知的好奇心・情報リテラシー・思考力・表現力・読解力、の５つを重視している」とした上で、「新学習指導要領の『主体的・対話的で深い学び』の実践がコンクールで見られて嬉しい」と講評した。
作品の傾向は毎年少しずつ変化している。小学生の部（低学年）１・２年生では、以前は動物や植物、鉄道や恐竜、遊びやケガの経験から考えるものが多かったが、近年は家族からのつながりや会話からテーマ選びに入ることが多くなった（蔵元和子審査員）。
また小学生の部（高学年）５・６年生は特に６年生に優れた作品が目立った。文章を中心に据えて自分の考えを述べる探究的な作品が増えた。「今後の方向性や解決策を考える作品が多くなった。ネットと本の使い分けが上手になったと感じる」（大島克己審査員）。
倉持よつばさん
表彰式では、総務大臣賞を含め上位入賞者３６名が表彰された。小学生の部（高学年）で文部科学大臣賞を受賞した、千葉県・袖ケ浦市立奈良輪小学校５年の倉持よつばさんの作品は「桃太郎は盗人なのか？―『桃太郎』から考える鬼の正体―」。福沢諭吉が「桃太郎は盗人だ」と書いていたことに衝撃を受け、その真偽を確かめるために全国の桃太郎を読み比べ、江戸時代の文献までさかのぼって調べた。倉持さんは関連書籍が７４冊あることがわかり、岐阜の図書館まで足を運んだという。「郷土博物館などにある難しい文献は、学芸員の方に解読してもらった。怖いと思っていた鬼への疑問について、答えは全部本の中にあり、本が好きになった」と語った。
他の文部科学大臣賞の受賞者は次の通り（敬称略）。▽足立晴音（埼玉県・三郷市立幸房小学校２年）、天間公祥（千葉県・袖ケ浦市立奈良輪小学校４年）、岩倉光理（石川県・白山市立北星中学校２年）、上野祥大（東京都・海城高等学校１年）、鈴木正子・中村由起子（埼玉県・川口子どもの本を読む会）
観光庁長官賞は土橋侑真さん（青森県・八戸市立吹上小学校４年）、「国連生物多様性の１０年日本委員会」賞は小茶健悟さん（千葉県・袖ケ浦市立昭和小学校１年）が受賞した。
主催＝公財・図書館振興財団
後援＝文部科学省／観光庁／環境省／総務省／国連生物多様性の１０年日本委員会／東京都教育委員会／横浜市教育委員会／一財・日本児童教育振興財団／公財・海外子女教育振興財団／公社・日本図書館協会／公社・読書推進運動協議会／日本児童図書出版協会／読売新聞社／活字文化推進会議／㈱毎日新聞社／㈱日本教育新聞社／㈱教育新聞社／一社・全私学新聞／㈱教育家庭新聞社／ＮＨＫ
協賛＝大日本印刷㈱／丸善雄松堂㈱／㈱図書館流通センター／㈱カーリル／㈱丸善ジュンク堂書店／㈱文教堂
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年3月18日号掲載
