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図書館

INTERVIEW 資料を活用した授業を支える学校図書館へ~庭井史絵 青山学院大学教育人間科学部准教授 

2024年4月22日
春の学校図書館特集

■講演:GIGAスクールを味方につける「1人1台端末を学校図書館で活かすには?」より~

青山学院大学
庭井史絵准教授

GIGAスクール構想による1人1台端末の配備が概ね完了しました。学校図書館でこの1人1台端末環境を活かすため、特にICTとつながりやすい「資料の活用」に焦点を合わせ、学校図書館ができることとして次の3つを提案します。

①「学校図書館と資料」のイメージを拡張する ②子供たちの資料・情報を活用する力を育てる際、資料・情報の探し方に加え、その種類や選び方、読み方を学べる場を作る ③教員への支援として、資料提供と合わせて使い方もサポートする。詳しく見ていきましょう。


①図書館内での活動に支援の範囲をとどめない

まず”学校図書館で”1人1台端末を活かす、と言った時、図書館に児童生徒が自分の端末を持参し、インターネットと紙の資料の両方を使って調べたり、電子書籍を読んだりする、というイメージを持つ方は多いと思います。しかし学校図書館の機能や役割を果たせれば、必ずしも館内という”場所”でなくても「学校図書館を活用した」とカウントして良いのではないでしょうか。

図書館の機能・役割の1つとして、利用者と情報をつなぐことが挙げられます。図書館は利用者のニーズを知り、的確な情報を提供する。一方、利用者側(児童生徒や教員)には情報を使いこなす力=情報リテラシーが必要です。この点を考えた時、GIGAスクール構想と学校図書館が結びつくポイントが見えてきます。

文科省「ICTを活用した指導方法(1人1台の情報端末・電子黒板・無線LAN等)~学びのイノベーション事業実証研究報告書より~」(2018)では、ICTを活用する場面を「A一斉学習」「B個別学習」「C協働学習」で整理し、10の活動事例を挙げています。その中で資料・情報を提供する場面として「A1:教員による教材の提示」、「B2:(児童生徒の)調査活動」があります。

最新のPISA調査によると、日本の高校生が情報を集め、集めた情報を記録・分析・報告する際にデジタル・リソースを使う頻度は、他のOECD諸国と比べて低いことが分かっています(=表)。デジタルデバイスをSNSやゲームだけではなく、教室や自宅での学習や情報収集に使うことが求められており、学校図書館は学校内外でそれを支援することができます。

2023年文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査PISA2022のポイント」より

ただ、学校図書館には、紙の資料以外の情報にアクセスできる環境が十分整っていないので、今後改善していかなければならないでしょう。

少し話は逸れますがGIGAスクール構想の中で、学校図書館での1人1台端末の活用としてまず注目されたのは電子書籍サービスの利用でした。最近は子供を主なターゲットに電子書籍サービスを展開する公共図書館も増えつつあります。熊本市では学校図書館支援センターが置かれている熊本市立図書館が、コロナ下において市内の児童生徒全員に電子図書館サービスのIDとパスワードを発行。現在、電子書籍の利用の多くを子供が占めています。活用の肝は何だったのかというと、1人1台端末のデスクトップに、電子図書館・電子書籍サービスのアイコンをつけたことで、それがきっかけで爆発的に利用が増えたそうです。入口を見せることは本当に大事だと分かりました。


②どんな資料があるか種類や読み方を学ぶ場に

1人1台端末が登場し、教員と児童生徒がさまざまなデジタル資料に直接アクセスできるようになったので、もう図書館と関わりがなくなったのかというと、そうではありません。

図書館は「より良い資料、より適した資料と利用者を結び付けたい」と考えています。そのため、NDCやキーワード検索など資料の「探し方」を教える以前に、どのような資料が世の中にあるのかを利用者に知らせることも大切です。子供は知らない、使ったことがない資料を、探そう、使おうとは思わないからです。

そこで有効なのは、教材としての資料を教員に提供することです。いま教科書を見ると、どの教科でも、さまざまな資料の活用が求められています。

小・中・高等学校の学習指導要領で、授業を行う際に活用できる資料として挙がっているのは、図書、新聞雑誌記事、パンフレットやポスター、地図、図や絵、写真、歴史資料など多岐に渡ります。絵本、事典や辞書、統計、年鑑、白書などの参考図書、公文書や要覧、伝記や昔話など、形体やジャンルもさまざまです。博物館や文書館、郷土資料館が所蔵する資料もあり、連携も必須です。

教員がこれらの資料を授業の中で紹介したり使ったりすることで、児童生徒は資料の存在を知り、その資料の使い方、選び方を学んでいきます。そうすると、探究の場面で情報が必要になった時に「そういえばこんな資料があったから使ってみたい、探してみよう」となるでしょう。

また、探究学習の中で資料を読む際には、1冊の本をじっくり読むだけでなく、必要な部分だけを拾い読みする、部分的に繰り返し読む、必要な資料かどうかをサッと確認する、リンクをたどりながら読む等さまざまな読み方が必要です。

紙とデジタルの両方で読むことに慣れ、小説や図鑑など内容や目的に応じて、あるいは、クラス全員で読む時、複数の情報を比較する時などの場面に応じて、使い分けることも求められます。読書教育に多様な読み方の指導を含めていくことも大切でしょう。


③教員と資料をつなぎ教材化・使い方を支援

そこで力を入れたいこととして、教員の授業準備への支援が挙げられます。②でご紹介した通り、いま、各教科の授業でさまざまな資料を提示し活用することが必要とされています。そのための教材研究を教員が一人で行うのではなく図書館が支援することができます。

ただ、教員は資料があればそのまま授業で使えるというわけではなく、教材化という作業を行っています。福井県文書館では、歴史資料を授業で使えるよう解説を添えて公開していますが、同様に学校図書館が、授業のイメージや目的に応じて、提供する資料の価値や読み方を教員に伝えることは非常に有効です。

資料をどう使えば授業が面白くなるのかを一緒に考えられるのは、資料について詳しく知っているからこそであり、図書館員の専門性としてアピールできると思います。

「学校図書館ガイドライン」(2016)には、「教員の授業づくりや教材準備に関する支援や資料相談への対応」について書かれていますし、遡って、文科省・子どもの読書サポターズ会議「これからの学校図書館の活用の在り方について(報告)」(2009)でも、教員への支援は「猶予を許されない課題である」とされています。2024年となる現在まで、この「課題」に向き合ってきたかというとまだまだやるべきことがありますし、1人1台端末が定着し、児童生徒や教員が利用できる情報が増える中で、より求められていると思います。

※本文は、2月25日に開催された「第6回子どもの学び研修会」(主催:NPO法人学校図書館実践活動研究会)の庭井准教授の講演の一部を編集し加筆したものです。

春の学校図書館特集

教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載

 

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