特定NPO法人日本語検定委員会は、第13回「日本語大賞」を実施。厳正なる審査の結果、小学生の部、中学生の部、高校生の部、一般の部ごとに文部科学大臣賞をはじめとする各賞が決定した。
■日本語の美しさや言葉の力を見つめ直す
日本語検定委員会は「日本語の大切さを社会全体に呼びかけること」を目的にしたNPO法人として、年2回の日本語検定を実施。あわせて日本語の美しさや言葉のもつ力を見つめ直したいという思いから「日本語大賞」を年1回実施している。
■全国から4856点の作品が寄せられた
日本語大賞は児童から大人まで広く作品を募集。小学生の部2234点、中学生の部567点、高校生の部1891点、一般の部164点の計4856点の作品が寄せられた。第一次審査、第二次審査を経て、10名の審査委員による最終審査が行われて各賞が決定した。
<審査委員長>
梶田叡一氏(聖ウルスラ学院理事長)
<審査委員>
梶原しげる氏(フリーアナウンサー・東京成徳大学経営学部客員教授)
蕪木豊氏(彩の国総合教育研究所理事・元埼玉県教育局指導部長)
境克彦氏(時事通信社代表取締役社長)
佐々木文彦氏(明海大学大学院応用言語学研究科・明海大学外国語学部日本語学科教授)
佐藤和彦氏(全国高等学校国語教育研究連合会会長・東京都立松原高等学校校長)
城重幸氏(豊岡短期大学教授)
山内純子氏(元全日本空輸取締役執行役員客室本部長)
吉元由美氏(作詞家・作家・淑徳大学人文学部客員教授・洗足学園音楽大学客員教授)
渡辺能理夫氏(東京書籍代表取締役社長)
<受賞作品>
【小学生の部】
文部科学大臣賞:向山凛(神奈川県)「私を変えた言葉」
優秀賞:
伊藤桃子(神奈川県)「感謝の気持ち」
岡田七海(埼玉県)「自分の命」
吉原颯一朗(千葉県)「がまんがまんの子であった」
佳作:
飯田悠月(神奈川県)「二年前のぼくへ」
岩佐葵(栃木県)「ほめ上手な祖母へ」
大串直生(神奈川県)「真っ直ぐ」
白井梨子(神奈川県)「祖母へ、ありがとう」
丸山夏生(愛媛県)「コンタクトレンズがくれた世界」
【中学生の部】
文部科学大臣賞:永野心深(大阪府)「地球に伝えたいこと」
優秀賞:
岸美優花(大阪府)「私の母」
皿海百花(兵庫県)「言の葉の薬」
本木和(東京都)「浪人生の兄に物申す」
佳作:
稻田詩(東京都)「君のおかげで」
指中直子(アメリカ)「私とワタシ」
長谷川友香(千葉県)「意味をなくさないように」
バレット瑠海(スイス)「コロナウィルスに伝えたいこと」
【高校生の部】
文部科学大臣賞:近藤千紗(東京都)「知らないでは済まされない問題」
優秀賞:
大河内彩和(東京都)「ありがとう、そして。」
木村春香(東京都)「人生は涙」
浪花小槙(東京都)「過去の私へ」
佳作:
エヴェレット璃莉杏(イギリス)「あの背の高い女の子」
小倉ゆい(東京都)「「ありがとう」を通して」
長谷川沙耶(東京都)「一人じゃない」
山田夏海(東京都)「私が部活を続けられた理由」
山門真弥(東京都)「伝えられなかったこと」
【一般の部】
文部科学大臣賞:菱川町子(愛知県)「母に伝えたい言葉 七年の眠りから覚めて」
優秀賞:
石川楓(愛知県)「おつかれ様でした」
立川花帆(愛知県)「先生ごめんなさい、そして」
野村徹(兵庫県)「ゆっくり休んでな」
見澤富子(埼玉県)「線を生きる」
佳作:
石本恵里香(福岡県)「母への気持ち」
小野浩司(神奈川県)「勉強が嫌いな君へ」
鈴木伸嘉(埼玉県)「改札口」
藤井そよか(兵庫県)「「後悔のない人生」を約束するよ」
<受賞のことば>※一部抜粋
小学生の部 文部科学大臣賞 向山凛さん(小6)
作文のテーマを聞いたときに、すぐに学校の先生のことが頭に浮かびました。6年生の初日の出来事でしたが、時が経っても私の心には強く残っていたからです。一歩踏み出し変化することは、すごく勇気のいることで大変なことも多いと思います。けれども、一歩踏み出すことで、自分の成長にもつながるし、いろいろな経験をすることによって世界が広がります。私の小学校生活最後の一年は、先生の言葉のお陰でとても有意義なものとなりました。これからも先生の言葉を忘れずに、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。
中学生の部 文部科学大臣賞 永野心深さん(中1)
「地球に伝えたいこと」というテーマで、暑さや雨の文句を書いていくつもりが、気がつけば「自分たちでなんとかしなきゃ」というような、なにか将来の私に影響しそうなことまで変化していました。今回の課題・日本語大賞のテーマは、そんなきっかけを私に与えてくれました。そして最後に名誉ある賞を頂くことができ、驚きと喜びでいっぱいです。これからも自分の心に正直に文を作っていければと思います。ありがとうございました。
高校生の部 文部科学大臣賞 近藤千紗さん(高1)
第13回日本語大賞について知ったのは、父の転勤でイギリスから帰国して数か月という頃でした。イギリスでの体験について何か書いてみたいと思い、何が印象深かったのか思いを巡らせました。私の場合は、一日の大半を過ごした現地校でのこと、特に日本とは内容の異なる授業科目についてが、そうでした。今回は「マナー」を知らなかった自分の失敗をもとに、伝えたいメッセージを書きました。このような立派な賞をいただけるとは、思ってもみませんでした。メッセージをくみ取って選出下さった審査委員の方々、現地校への転校初日に私の目を覚ましてくれた級友、そして、本作品を読んでくださる皆さまに感謝したいと思います。
一般の部 文部科学大臣賞 菱川町子さん
毎年発表されるテーマは、宝のありかを示す地図だ。テーマについて書くことは、視点を変え物事を見ることであり、そこには新しい発見がある。今まで見過ごしてきた場所を言葉というシャベルを使って掘り起こしていくと、あった、あった宝物が。何度落選しても応募をやめなかったのは、宝捜しが楽しくなったからだ。今回の栄誉ある受賞は身に余る光栄である。知らせを聞いた時は、信じることができなかった。このエッセイは四十数年前、母が私の娘にしてくれたことを思い出し書いたものである。母の孫娘に対する想い、喜びや悲しみに触れ、思わず呟いた言葉が今回のテーマと重なった。言葉というシャベルを使い、自らの人生を掘り起こす宝探しはまだまだ続くだろう。