一社・教育AI活用協会は5月8日、今年3月に実施した生成AIの教育活用に関する調査の結果を公表した。本調査は、全国の教育委員会・教育センターおよび学校(小・中・高)を対象に、生成AIの活用状況や課題、今後の展望についてアンケート形式で実施し、全国より288団体(教育委員会・教育センター164団体、学校124団体)の回答が得られた。
調査結果によると、9割近くが生成AIの活用に関心があるとしながら、導入が決定している・検討を進めている割合は4割に留まる。自由回答では「活用事例が知りたい」「どのような手続きをすればいいかを知りたい」「教育現場に与える影響が未知数」など、新しいツールに期待する声や不安視する声など様々な声が寄せられた。
生成AIの教育活用にどの程度関心があるか聞いたところ、回答者の89.9%が生成AIの教育活用に対して「関心がある」と回答(「とても関心がある」47.9%、「ある程度関心がある」42.0%)。自由記述では活用事例やガイドラインに関する研修など具体的な関心の声が多く寄せられた。
生成AIのガイドラインや活用方法に対する理解度に関しては、50.7%が基本的な理解があると回答(「よく理解している」7.3%、「ある程度理解している」43.4% )。調査を実施した時期は文部科学省より生成AIガイドライン(略称)Ver2.0が公表された直後だが、理解度は半数を超え、関心の高さがうかがえる。
活用実証を行う予定についての設問では「既に実施が決定している」は16.3%、「実施を検討している」は25.0%となり、41.3%が具体的に進行していることが分かった。残りの約6割は未定となっているが、関心度の高さから近く具体的な検討がされることが見込まれる。
前問で既に活用実証が決定している、検討していると回答した人に対し、使用する生成AIが決定しているかを聞くと、「すでに決定している」が39.5%となり、そのうち約7割が自由回答でChatGPTを活用すると回答した。またBingやGoogle Gemini(旧Bard)といった回答が目立ったほか、スクールAIやスタディポケット、tomoLinksなど教育特化型のAIサービスを挙げる回答もあった。
生成AIの実証や導入に際し利用できる制度が様々ある。実際にこれらの活用予定があるか、生成AIの活用実証予定があると回答した教育委員会・教育センターを対象に聞いた。
補助金・制度に関して活用予定があるとの回答は23.3%に留まり、残る8割弱に利用予定がないことが分かった。活用予定があるという回答者のうち最も多かったのは、文部科学省が先進的なデジタル技術を活用した教育のモデル校を支援する「リーディングDXスクール事業」、次いでAI技術を用いた英語の教育支援をする「AIの活用による英語教育強化事業」。補助金制度への理解不足や手続きの複雑さが利用ハードルにつながっているかもしれない。
自由回答では、生成AI導入に対する期待の声とともに、課題、懸念の声も多く寄せられた。
調査結果を受けて、同協会の佐藤雄太代表理事は次のように考察している。
「本調査は2025年3月に全国の教育委員会・教育センターおよび小中学校・高等学校の教員を対象に実施した調査です。この時期は、生成AIガイドライン(略称)Ver2.0が文部科学省から公表された直後であり、この時期の特徴が今回の結果に反映されるだろうと想定していた通り、高い関心と研修への意欲的な意見が多く見られました。これは、生成AIの活用によって大きな教育効果をもたらすことに現場が期待している表れと考えています。
教育委員会・教育センターに関しては、文部科学省からの通知を受けて自治体として動き出さなければならないという焦燥感もあると想像できます。この調査から、現場・行政ともに『専門知識を得るための研修』『活用事例を知るための研修』を提供していくことで、生成AIの教育活用を推進できると考えます。これらの考察を経て、当団体がやるべき施策としては次の3つ。
(1)生成AIガイドライン(略称)に関する研修
(2)生成AIの教育活用に関する研修
(3)生成AIアプリの活用・導入支援
以上の施策を通して、教育現場での生成AI活用を推進し、より深い学びの実現と協働的な学びを推進することができると期待しています。」
【調査概要】
調査名称:文部科学省「生成AIガイドライン(略称)」発表後の生成AIの教育活用に関する調査
実施期間:2025年3月5日〜3月31日
調査対象:全国の教育委員会・教育センターおよび学校(小・中・高)
有効回答数:288団体(教育委員会・教育センター:164団体、学校:124団体)
調査方法:インターネット、FAX
調査主体:一般社団法人教育AI活用協会