首都圏の県・市を中心に近年は協議会の退会が続いた(公社)日本PTA全国協議会(=日P)だが、改めてPTAの存在が問われる中、日P会長就任2年目を迎えた太田敬介氏は「体制の不備は改善し再出発しなければならない。今後は信頼に応えられるよう努力していく」と語る。開催間近の全国大会(石川県大会)やこれからのPTAはどうあるべきか、今後の抱負などを聞いた。
日本PTA全国協議会 太田敬介会長
-会長就任2年目となります。この一年間をどのようにふり返りますか
前年度から続いている不明朗な会計処理やハラスメント問題などの不祥事への対処に注力した長い一年だった。これらは日Pに対する信頼を裏切るものであり、その信頼を取り戻すため今後は当たり前のことを地道に努力しなければならないと思う。
-各地でPTA不要論も指摘され、首都圏を中心に日Pを退会する協議会が続きました
PTA離れは以前から見られたが、ではPTAは何のために誕生したのかという歴史をふり返ると、戦前・戦中の教育を反省し、子供たちのために民主的な教育を実現する目的で、保護者と教員が一緒になり立ち上がったことが原点。それから80年近くを経て、保護者は多忙で多様な価値観をもつようになり大きく変わった。にもかかわらず”みんなが”、”一緒に”取り組まなければならないという”ルール”だけが変わらずにある。
ルールを守ることが目的になっていないだろうか。実状に合わないルールは柔軟に見直されるべきだが、変えていくには時間と労力が必要。しかし多くのPTAで、役員は1年で変わるため前年踏襲で無難にやり過ごす、またはPTAの存在そのものをなくすという方向に進んでしまったのが今日だと思う。
しかしPTAが存在する原点は、ルールを守ることではなく子供たちの幸せの実現のためであり、様々な違いを超えて手をつなぎ協力、協働、助け合うことが求められる。大切なのは1人の100歩より100人の1歩だ。
-第73回全国大会が石川県で開催され、各地の分科会場をそのままサテライトとして全体会を行う。過去の形式を踏襲せず開催県の実情に合わせた実例ですね
石川県は昨年、震災・豪雨に見舞われ、大変な苦労をして復興に向けて取り組まれている途上にある。今大会を石川県で開催するのは、他県の方々にもその姿を知ってもらう機会となる。そんな中でもPTAの存在の原点にある”助け合い”の意義を改めて実感し、PTAがあって良かったと感じてもらえるのではないかと思う。
-これからの1年に向けての抱負は
日Pへの信頼を取り戻すため努力する。そのためPTAに求められている期待を受けとめ、役割を力強く果たしていきたい。
これまでの不祥事に対する日Pとしての今後の対応を「改善計画」にまとめ、今年1月内閣府に提出した。公益認定等委員会から是正の指摘を受けた、公益法人として当然整えるべき体制の不備を改善しなければならない。例えば事務局体制の立て直し、DXの導入による情報共有、規程の整備、支払・契約フローの明確化など、すべき事柄はたくさんある。
同計画は日Pが信頼を取り戻すために再出発するうえで、一つのきっかけを頂いたと考えている。そのうえで時間はかかるだろうが、退会した協議会がまた戻り共に活動できることを願っている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年8月11日号掲載