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児童生徒のデータプライバシー協会、GIGAスクール端末の“適切なデータ消去方法”と“予算確保”を提言などを提言

2025年6月27日

一社・児童生徒のデータプライバシー協会は6月19日、メディア向けラウンドテーブルを開催した。

同協会は、GIGAスクール端末更新に伴い、適正な端末処分、適正なデータ消去を普及させることにより生徒のデータプライバシーを保護することを目的として今年1月に発足した団体。

当日は「教育委員会のGIGA端末処分の実態調査」をテーマに、横尾俊彦・佐賀県多久市長(全国ICT教育首長議会 会長)、同協会理事の佐原忠史、塚本幸治が出席し、端末処分に関する現状の課題を共有したほか、適切なデータ消去方法やそれに必要な費用に関する説明を実施。全国の教育委員会を対象に実施した最新の実態調査をもとに、処分・消去を担う事業者選定のポイントなどを紹介。児童生徒の個人情報を保護するための“適切なデータ消去と処分方法”、そして“自治体における予算確保の重要性”について提言した。

 

 

■「1件のデータ漏えいも起こさない」端末処分を、塚本理事がリスクと対応策を提示

冒頭、塚本理事は今年1月に設立した当協会について「“1件のデータ漏えいも起こさないGIGAスクール端末処分”の実現をするために設立。『端末の更新時に情報漏えいリスクがあること』『適切な処分/データ消去方法』の啓発をしており、事故につながらないデータ消去を実現するのが必要」と話した。

また、「政府が掲げる『GIGAスクール構想』で配備されたGIGAスクール端末は、2025~2027年にかけて約950万台が更新時期を迎えます。これは国内の新品パソコンの出荷台数に匹敵する数」として、端末に残されるデータは、情報漏えいを防ぐために万全の対策を講じるべきだと強調。「端末処分とデータ消去はセットで考えてほしい」との見解を示した。

そして、国のGIGA端末処分の方針について、23年10月に文部科学省・経済産業省・環境省の3省連盟事務連絡が全国都道府県教育委員会に発出され、小型家電リサイクル法等での処分、確実なデータ消去等の徹底等の方針を提示、24年4月には文部科学省が第二期端末整備計画における補助金要網の条件に、「端末の処分・データ消去方法を記載したリサイクル計画の策定・公表」を義務付け、同年5月には環境省が全国廃棄物行政主管部(局)に小型家電リサイクル法での処理を周知したことを説明。自治体では、条件を満たす事業者選定を実施する仕様書作成を進めているものの、国の方針をどこまで理解・実行していけるかはアンケート結果からも不透明である現状を報告した。

また、小学校の子供を持つ保護者へのアンケート調査では、「子供のデータ流出を不安に思う」と回答した割合が82%にのぼったことに触れ「実際に子供が使用したPCがどうデータ消去がされ使われていくのか、保護者に応えていく必要があり、何かあってからでは遅い」とコメント。また、24~25年にかけて教育現場の情報漏えい事件が多発している状況も報告した。

 

■「復元されない抹消」が新常識に、ガイドラインの進化と現状の課題を整理

続いて、佐原忠史理事が登壇し、安全なデータ消去方法について解説した。

まず、2020年以前の日本の主要なセキュリティガイドラインには、「データ抹消に関する記述は多いものの、技術的な裏付けに基づいた具体的な方法が示されていなかったため、各自治体や委託先によって対応にバラつきがあった」と指摘。実際に発生した自治体でのハードディスク流出事例にも触れ、リスクの実態を示した。その上で、2020年12月に総務省が発令した「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」について説明。「改定後は、データの機密性レベルを分類し、それに応じた消去方法を策定、いずれもデータ消去に関する責任はデータを持つ法人にあるとされ、GIGA端末処分の場合は自治体・教育委員会などがそれにあたる」と述べた。

さらに、データ消去レベルの解説として、米国国立標準技術研究所(NIST)の定義を紹介。

  1. NIST Clear(消去)=一般的に入手可能な復元ツールによっても復元が困難な抹消
  2. NIST Purge(除去)=研究所レベルの復元テクノロジーでも復元が困難な抹消
  3. NIST Destroy(破壊)=媒体の分解・粉砕・溶解・焼却・細断等による物理的な破壊

また、2025年3月に発令された「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」にも触れ、機器の廃棄等の方法は、「GIGA端末の場合はNIST Purgeに該当。抹消後に外部に出す際は、抹消処置を完了したというエビデンスも確認されなければいけない」と説明した。

一方、第1弾として全国の教育委員会を対象に調査した「GIGAスクール端末処分に関する実態調査」では、「12.5%が安全性が最も高いとされるソフトウェア消去を採用しているが、物理的破壊(20.2%)初期化・リセット(19.2%)もまだまだ多い」と危険性を指摘。続いてブランコ・ジャパン調べによる統計を挙げ、「日本では物理破壊による手法が多く採られているのが問題の1つでもある」と警鐘を鳴らした。National Security Agency、米国国家安全保障局において、2㎜角以下に粉砕しなければデータ復元の可能性が指摘され、また、IEEE(米国電気電子学会)では物理破壊に関する見解が進化しており、安易な破壊によって中古市場へ流出する恐れも指摘。

最後に「児童生徒のプライバシーを守るための最適なデータ消去方法」として、信頼できるソフトウェアでの消去、NISTの「Purge」レベルでの消去、その際に自動的に発行される消去証明書の取得と管理が「最も安全で安心なGIGAスクール端末の適切なデータ消去と処分方法です」と締めくくった。

 

■教育委員会の実態調査で見えた課題、処分方法の認識と予算確保にギャップ

その後、協会が実施した「教育委員会のGIGA端末処分の実態調査」の最新情報を発表。これによると、文科省推奨の処分を検討、準備しているのは、22.1%と3割以下となりました。また、処分方法として最も多かったのは「納品ベンダーまたは保守業者による処分・下取り」で、協会の算出によると、そのうち35%が「調達時点で処分もセット委託している」と判明。適切な処分、データ消去を実行する予算確保が十分に理解されておらず、予算確保も進んでいない状況が浮き彫りになった。

データ消去方法に関する設問では、「未検討」が最も多く、その他にも「物理破壊」「磁気消去」「OSの標準機能による削除」など、GIGAスクール端末処分において情報漏えいリスクの残る手法が多く挙がり、塚本理事は、「未検討ということ自体もリスクと捉えられるのでは」と指摘した。

また今回初めて調査結果を発表したGIGAスクール端末処分における「保護者への報告予定」については、「未検討」に次いで「問い合わせがあれば情報を提供する予定(or提供する必要があると考えている)」が多く、説明責任を果たす意味でも、データ消去エビデンスを残せる処理方法の選択もポイントとなる。最後に、「処分・データ消去に関する課題」については「課題はない」が最多であり、リスク認識が十分に浸透していない実態も浮かび上がった。

 

■横尾俊彦市長が自治体目線で見解示す

続いて、横尾俊彦市長が「自治体目線で考える、GIGAスクール端末の処分・データ消去」をテーマに次のように話した。

横尾市長が会長を務める全国ICT教育首長協議会は、2016年に立ち上げ、全国ICT教育首長サミットや日本ICTアワードなど様々な取り組みを行っており、「中でも全国ICT教育首長サミットでは、これまでICT環境整備の地方財政措置増額や児童生徒1人1台端末整備などを提言し、実現してきた」と説明。情報・データの取り扱いに注視する中、同協議会の自治体に向けた独自アンケートによると、「GIGA端末の購入形態」は64%が“買い取り”で、「処分方法を自治体で考える必要がある」と指摘。買い取り自治体のうち、「以前使っていた端末の処分」について約3割が「保管している」という。一方で「処分する」と答えた自治体のうち46%は「更新委託業者に依頼」と回答し、更新委託業者に依頼した後の処分内容を確認できていない自治体がある事もわかった。

このような調査結果を発表し「ポイントは、どうやって予算を確保するということかと、自治体トップならびに幹部がしっかりと状況を理解することでGIGAスクール端末処分に臨みたい」などと話した。

 

■現場の視点で考える「予算」と「処分」の現実的課題

最後に行われたトークセッションでは、横尾市長、佐原理事、塚本理事が登壇し、GIGA端末の「データ消去予算確保の必要性」について意見を交わしした。

<データ消去の必要性とそのコスト>

冒頭、塚本理事は、事業者の立場から「予算を確保するうえで、処分作業にどのような工程が含まれるのかを自治体担当者の皆様が深く理解することが重要」と指摘した。適切な処分をする上で、必要な予算確保、そして国の方針に則った信頼できる事業者への委託の重要性を語った。

佐原理事は、「データ消去ソフトのコストは、1台あたりするとそこまで高くない」とした上で、自治体の中にはそれでも「予算確保に慎重にならざるを得ない」現実があると指摘。「万が一データが漏洩すれば、首長の責任問題にもなる」として、自治体担当者の立場の難しさにも触れた。

一方で、「丁寧に説明すれば、予算を取ってもらえる環境は整いつつある。危機感を持って予算化の必要性を訴えることが重要」などと話し、ソフトでデータ消去をすれば自動的にレポートを取得・管理できるので「一度仕組みを整えれば運用も容易」と具体策を提示した。

<自治体の立場から見た「予算確保」とその壁>

横尾市長は、自治体における予算確保では「単年度予算なのか数年度単位なのか計画性が大事」としたうえで、「11月の首長査定でどう判断されるかが重要になる」と述べた。

また、端末の安全性に関して「生徒自身が分解を体験することで、端末にデータが残っているという認識を育む教育的側面もあるのでは」と提案。処分コストに関しても、「GIGAスクール構想の端末導入初期と同様に、国のサポートがあれば大変助かるのでは」との見解を示した。

特に、「生徒数の多い自治体ほど慎重にならざるを得ない」としたうえで、国や議会の理解と支援があってこそ、スムーズな処分と予算確保が実現できると強調した。

<協会の提言「目標は“1件のデータ漏洩も起こさないこと”」>

トークセッションの締めくくりとして、塚本理事は「データ漏洩は1件も起こしてはならないという強い意識を、自治体・現場の当事者一人ひとりが持つことが重要」と述べた。

さらに「こうした課題の裏には、“予算や手間”といった大人の都合が優先されがちな現実がある」と指摘。「1件の漏えいが起きた時、その端末を使っていた子供や家族がどれほど深く傷つくかを、大人こそ真剣に考えるべきだ」と語った。

続けて「ソフトウェアによる適切なデータ消去を確実に実施し、必要な予算は計画的に捻出していくべき」と提言。今後も「1件のデータ漏洩も起こさない」ことを目標に掲げ、継続的な啓発と予算確保の働きかけを行っていく考えを示した。

 

一般社団法人 児童生徒のデータプライバシー協会

 

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