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万葉集の歌からインスピレーションを得た写真を全国から公募~「奈良万葉」写真コンテスト~中学3年の大山尚希さんの作品が最優秀賞を受賞~奈良大学

2026年3月24日

奈良大学は、奈良の風景を撮り続けた写真家・井上博道氏の想いを受け継ぐ井上博道記念館とともに、学校法人奈良大学創立100周年記念事業として、万葉集の歌からインスピレーションを得た写真を全国から募集する「奈良万葉」写真コンテストを実施。2025年12月1日から2026年1月31日まで公募し、厳正なる審査の結果、入賞10作品が決定した。最優秀賞には神奈川県横浜市の大山尚希さん(駒場東邦中学校3年)の作品が選ばれた。

 

■各地から162点の写真作品が寄せられる

万葉集には奈良をはじめ日本各地の風景や人々の想いが詠まれている。その舞台は全国に広がっており、自然や歴史、暮らしの情景が歌に込められている。「奈良万葉」写真コンテストでは、そんな万葉の歌にインスピレーションを得た写真作品を募集。奈良県をはじめ各地から15歳~82歳による162作品(109)の応募が寄せられた。

 

■入賞した10作品は井上博道記念館ギャラリーで展示

入賞作品は2026326()28()および42()4()6日間、奈良市の井上博道記念館ギャラリーで展示。また、奈良大学HPでも入賞作品を公開している。


<一般の部 入賞作品>
【最優秀賞】

神奈川県横浜市・大山尚希さん(駒場東邦中学校3年・15歳)

《万葉歌》

我がやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕(ゆふへ)かも

《歌への思い》

この歌は耳を澄まさなければ竹林の間を抜けていく風の音が聞こえないとして夕暮れの静けさを表現しています。ここでの静けさは単なる静けさだけでなく寂しさや孤独、一日が終わることへの安堵も表現していると思います。僕にこのような静けさを感じさせてくれるのは放課後、夕日の差し込んだ学校でした。


【優秀賞】

兵庫県神戸市・中本則昭さん(77歳)

《万葉歌》

泣沢(なきさは)の 神社(もり)に神酒(みわ)据ゑ 祈れども 我が大君は 高日知らしぬ

《歌への思い》

ちょうど参道の道すがらに神の遣いと光芒が神秘的な風景を創り出しました。


【井上博道記念館賞】

静岡県御殿場市・岩浅利泰さん(77歳)

《万葉歌》

田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺(たかね)に 雪は降りける

《歌への思い》

シラス漁で有名な田子の浦漁港、満月と富士山の感動的な一枚が撮れました。

 

奈良県奈良市・弓場妙恵さん(55歳)

《万葉歌》

沫雪の ほどろほどろに 降り敷けば 奈良の都し 思ほゆるかも

《歌への思い》

地元奈良は雪が珍しく、雪が降ると心が躍ります。上野誠著『万葉集で親しむ大和ごころ』に「万葉びとは雪が珍しく、雪が降るとおおはしゃぎ」とあり、親近感を覚えました。

写真は雪に心躍らせ若草山に登り、淡雪舞う御蓋山を撮ったものです。万葉びとも雪の平城京を眺めようと若草山におおはしゃぎで登ったのではないでしょうか。そして大伴旅人が太宰府で詠んだ淡雪の奈良は、そんな記憶の欠片だったのではないでしょうか。


【奈良大学賞】

京都府長岡京市・小和泉春男さん(75歳)

《万葉歌》

近江の海 夕波千鳥 汝()が鳴けば 心もしのに 古(いにしへ)思ほゆ

《歌への思い》

半世紀も前の若き頃、湖畔の夕暮れに二人して未来を語りあかした過去、昔を思い出し楽しき中にも切ないといった感情湧く今、老いて自分がここにある現在、これまで歩んできた人生を回想し再確認し懐かしむ。

 

奈良県奈良市・柴田こはるさん(奈良大学附属高等学校1年・15歳)

《万葉歌》

(いは)ろには 葦火焚(あしふた)けども 住み良けを 筑紫(つくし)に至りて 恋しけ思はも

《歌への思い》

歌の意味として、「貧しいため家では葦の火で焚いて暮らしていても住みよいのに,防人として筑波に来てからは、故郷が恋しく感じる。」である。この詩からは作者の故郷への思いや、季節が冬であり体が冷える季節を表していることがわかるため作者の苦労などが読み取れ、作者にとって火というものが唯一大きく変わった生活の中で変わらなかったものなのだと思いました。


<高校生の部 入賞作品>
【奈良大学学長賞】

奈良大学附属高等学校1年・石井佑典さん(15歳)

《万葉歌》

夕されば 小倉の山に 伏す鹿は 今夜(こよひ)は鳴かず 寝()ねにけらしも

《歌への思い》

写真に写る子鹿も選んだ歌のように声を上げることなく、草の上で静かに身を休めています。この鹿の姿は山の夜の静寂と、自然の中の安らぎを感じさせてくれます。この写真を通して動きがない一瞬であったとしても時間は確かに流れているということを伝えたいです。

 

奈良大学附属高等学校2年・島田理名さん(16歳)

《万葉歌》

飛ぶ鳥の 明日香の里を 置きて去()なば 君があたりは 見えずかもあらむ

《歌への思い》 この歌は、明日香を離れて奈良の都へ移ってしまえば、今そばにいる「君」の住む場所さえ見えなくなってしまうのではないか、という不安や寂しさを表していると感じた。都の移動によって生まれる、人と人との距離や心の隔たりへの思いが、率直な言葉で詠まれている。

 

愛媛県立三崎高等学校1年・山口琉花さん(16歳)

《万葉歌》

大き海の 水底とよみ 立つ波の 寄せむと思へる 磯のさやけさ

《歌への思い》

現代では波は風によって起こる重力波であることが知られていますが、この和歌を詠んだ昔の人は海底まで鳴り響かせて波は立つのだと表現しています。なんとも情緒に溢れた想像力だと思いました。この和歌によってより海が好きになりました。

 

神奈川県立足柄高等学校1年・吉田之仁さん(16歳)

《万葉歌》

うたがたも 言ひつつもあるか 我ならば 地(つち)には落ちず 空に消なまし

《歌への思い》

この歌の、私は恋を絶対叶えようとはせず、空に消えてしまうだろう、という意味に、儚くも美しいと感じました。それに似合う、空に消えてしまいそうなほど美しく、まるで恋愛模様を表すような桃色の空を写真に選びました。私は、この夕暮れで雲に隠れる太陽が、言えることのない作者の本心の恋心だったり、雲に隠されてしまうから空に消えたくなるほど辛いのかなというように見えて、この句と写真を選びました。


<審査員総評>(敬称略)

田中仁(写真家、日本写真芸術学会理事、元東京工芸大学教授)

万葉集がテーマとなる写真コンテストでしたが、趣旨を理解した作品が多く集まりました。歌をイメージした作品は、被写体や構成などの撮影技術だけではなく、万葉集の理解と想像力が必要です。今回は多彩な撮影地、多様な方々の応募が多くみられ、万葉集にふさわしい内容となりました。特に若い世代の想いと感性が生かされた作品に秀作が多く将来が楽しみです。

 

鈴木 喬 (奈良大学文学部国文学科准教授)

『万葉集』は奈良時代に成立した現存最古の歌集です。万葉人の言葉と令和に生きる我々の心とが重なり、万葉集の時代から我々の感性はあまり変わらないのだと感じさせられます。今回、多くの応募があり、万葉歌から、応募者それぞれの体験、感性にひきつけ、魅力的な作品として新たに作り上げていただきました。どれも素晴らしい作品でした。今後も、万葉集に関心をもっていただいたら幸いです。

 

「奈良万葉」写真コンテスト 入賞10作品を決定

奈良大学

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