教職員の私物スマートフォン(以下、私物スマホ)利用における情報漏洩リスクや盗撮などの不祥事等を受けて、私物スマホの全面禁止や利用制限を行っている教育委員会は多い。一方で公用スマホは約83%以上が未導入であり、私物スマホ利用の禁止・制限により教育活動や校務に支障をきたしているという声もある。そこで妹尾正敏教授(OCC教育テック大学院大学/一社・ライフ&ワーク代表理事)はSky株式会社との共同研究の一環で、公立学校教員370人(小・中・高)と教育委員会関係者109人を対象にWebアンケートを実施。今後必要となる対策・施策を検討する目的で私物スマホの利用状況や課題について調査を行い、その結果と考察について8月20日に報告した。

約65%の教職員が公用スマホ導入を希望
それによると小・中学校教員の約半数が私物スマホを全面禁止されている。一方でそのうち約4割が、全面禁止であってもやむを得ない事情で私物スマホを利用している。
なお、小・中・高あわせると私物スマホを教育活動時間に利用している教育は約60%。毎日利用している教員も34%いる。
利用内容は、教職員間の連絡や調べもの、校外学習時や緊急時対応など。
教職員間の連絡は校種問わず多いが、特に小学校では校外学習時の利用が、特別支援学校では緊急時の利用頻度が多いようだ。

私物スマホ利用の理由
一方で私物スマホの利用は、公私の区別があいまいになりがちな点、誤送浸等の情報漏洩リスク、利用時に誤解を受けやすいなどの課題など、教員の約7割が、何等かの課題や負担感を感じている。
また、小中学校教員の約半数が、私物スマホを利用しないことで業務に支障が出ると回答。また、小中校の約65%の教職員が、公用スマホを整備すべきと回答している。
教育委員会に対する調査では、私物スマホを全面禁止としているのは約17%。なお政令市では約39%が条件付きで認めている。
なお政令市の約22%が公用スマホの導入を検討している。
一方で約半数の教育委員会が、私物スマホの利用についての課題感を感じていない。教員の課題感を共有していない傾向がみられた。
教職員向け公用スマホソリューションを2025年12月から提供しているSkyによると、リリース以降の問合せは約270件。教育委員会より教職員からの問合せが多い。
既に大阪府大東市を始めとする7自治体に導入済で、導入検討のために実証中の自治体は鹿児島市を始めとして17自治体あるということだ。

私物スマホの業務負担感
妹尾氏は本調査結果を受け次のように分析している。
①私物スマホを利用せざるを得ない実態がある
私物スマホを制限する動きが広がる一方で、公立小中学校教員の2~3割は「明確なルールはない」と回答。
実際にルール(利用ポリシー等)がないのか、浸透していないだけなのかは不明だが、教育委員会向け調査
結果も併せて考察すると、市区町村の一部では、ルールすらなく、「放任」状態に近い可能性もある。
他方、私物スマホを全面禁止にするところは多いものの(小中の約半数が全面禁止)、公用スマホを支給・貸与できている自治体はわずかなため、業務上支障を感じている教員は多い。
公用スマホの教職員1人1台は約2%、学年等で共用でも約2%に過ぎない。
緊急時の対応リスクの高い学校・自治体も一部にある(内線連絡もできないなど)。
こうした結果として、全面禁止や条件付きに制限しても、私物スマホの利用は広がっているのが現実
(全面的に禁止されていても、約4割の教員が私物スマホを利用)。
つまり、ルールや利用制限のあるなしにかかわらず、公用スマホの整備がないなか、私物スマホによる犯罪や不祥事、情報漏洩に対して対策ができている学校、セキュアな環境にあると言える学校は非常に少ない。
② 禁止一辺倒では、緊急時対応の遅れなど致命的なリスクが高い
教育現場は、医療や福祉の現場と似ていて、イレギュラーなことや想定外の事故・トラブルが日常的に起こる。
しかも、教室のみならず、校庭や校外での学習も多い。子供の怪我や事故も教室外で多い。
大きな病院で看護師が通信手段を何ももたず、ナースステーションに戻らないと連絡できないような状態であったとしたら、患者はどう感じるだろうか?
予算上厳しいなどの実情は理解できるものの、学校は、あまりにも標準装備が貧弱ではないだろうか。
なおSky担当者によると、「共用スマホは契約内容が変わるため、共用利用での導入実績は今のところない」ということだ。
調査対象となった教職員は50~60代が多い。本調査に協力したMM総研によると、リスト登録者にはGIGA前から種々の調査に協力している教職員が中心であるということだ。

公用スマホの支給・貸与を求める声が多い