大暑(たいしょ)はうだるような暑さの中、知恵と感性で自然の中に涼を求め、夏の食養生も考える頃。ほぼ7月23日~8月6日頃に当たり、容赦なく太陽が照り付ける暑さが続きます。汗を拭いてもすぐに汗だくになり耐えがたいほどです。
土潤溽暑(つち、うるおうてむしあつし)。熱気がまとわりつき蒸し暑さが増す頃で、草木は太陽の光をめいっぱい浴び、パワーを蓄えるように濃い緑色に色づくことを表しています。昔から軒先に風鈴を下げ、音色で涼を感じ、窓に葦簀(よしず)をかけて日差しを避け、夜には川に船を浮かべ風に当たるなど、納涼文化がありました。
もともと、神様の通り道を清める打ち水も、江戸時代には涼を求めるために行われるようになったそうです。現在でも隅田川から東京湾近辺に納涼船が運航され、花火大会等も夏の夜に涼を求める名残だと言えそうです。
夏の食養生として半夏生や土用といった雑節があります。今年の半夏生は7月1日で、スーパーの総菜売り場に蛸を使った炊き込みご飯が並んでいたりします。関西地方では蛸を食べる日とも言われているようです。
土用は本来、立春、立夏、立秋、立冬前の18日間を指していますが、一般的には夏の土用を示し、暑さに対処する時期にあたります。7月25日頃が土用の入りで鰻を食べる風習があり、夏痩せに良いと万葉集にもよまれていたそうです。
刻み鰻ごはん
梅塩漬け
この時期ならではの旬の食材は、スイカ、トウモロコシ、茄子、枝豆があり、水分補給やビタミンB群が豊富な食材が多く、魚介ではイサキや出世魚のスズキ、鰻が美味しくなります。鰻の蒲焼を手軽に食卓にのせるため、刻み鰻ごはんを作ってみました。
鰻蒲焼一尾を7㍉幅に刻み、フライパンに入れ、調味料(大さじ1杯の酒と蒲焼のタレ)を加え弱火で煮詰める。卵4個に大さじ1杯の上白糖を入れて溶きほぐし、炒り卵を作る。ご飯の上に煮た鰻と炒り卵をのせる。食材の高騰が続きますが、食べやすく手軽に作れます。
梅干し漬け込み
昨年製作の梅干し
土用の頃に塩漬けした梅を三日三晩、天日に干して梅干し作りをしますが、ここ数年、ジップ付き袋で塩漬けし、赤紫蘇を使わず作っています。仕上がり状態は昨年の梅干し=写真=で見てください。
【食育メモ】「土用の丑の日」というキャッチフレーズは平賀源内が馴染みの鰻屋に頼まれて夏に売れるように書いて店先に貼り紙をしたと言われています。暑さで体力が落ち、夏バテ気味の胃に少し負担がかかりそうですが、蜆(しじみ)や浅蜊(あさり)の味噌汁やお浸しを一緒に食べると良いでしょう。
【著者】フードディレクター・澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年7月21日号掲載