高知県安芸郡北川村の共同調理場は2024年8月、更なる食の安全と調理時間短縮のため、郡内調理場では初の小型真空冷却機を導入。調理現場からは「確実に衛生的に冷却できるので、その間他の仕事に集中できて作業効率が上がった」と好評だという。導入までの経緯や実感する効果について、同村教育委員会や調理場の栄養教諭に聞いた。
高知県安芸郡北川村は県東部の室戸岬近くの森林に囲まれた林間地帯に位置し、人口1200人の村。柚子が特産品で、特に実生の柚子を使った柚子酢や、柚子を加工したポン酢、ジャム、ジュースなどが有名。小・中学校が各1校あり、学校給食は教員分含め約75食分を共同調理場方式で実施している。
ゆでた野菜も確実に冷却できる
同調理場のこれまでの冷却方法は、ゆでた野菜などを水道水で冷却、脱水機で水切りを行っていた。しかし水道水の水温が上がると冷却できないこと、水冷する場所が狭いため周囲への水跳ねの心配、調理師の作業負担が大きいなどが課題だった。そのような時、脱水機が故障し修理不能となり頭を悩ませていたところ、他地区の栄養士から真空冷却機の情報を聞き検討を始めたという。
その結果、導入したのはタカギ冷機の真空冷却機「THRD-20LC」。決め手となったのはシンプルな操作性、運転に給水や消耗品補充の手間が不要、電源だけで使用できるなどの簡便さ。さらに他社製品と比べてランニングコストが安く、塩など消耗品の管理の手間もなく、洗浄しやすく衛生面が安全な点もポイントになった。
真空冷却機「THRD-20LC」の正面
同調理場の栄養教諭は「真空冷却機の缶内に食材を入れて20分後に10℃まで冷却が確実に完了している安心感はとても大きい。冷却に対する心配や作業が減った分だけ他の調理に集中できる」と語る。同調理場では主に野菜、豆腐、春雨、ハム、わかめなどを冷却しているが、野菜類は約5分から10分程度で10℃まで冷却できる。
そのほかの効果として「調理時間が短縮され、少し手の込んだ献立メニューも取り入れやすくなった。これまでは食材の冷却が必要なメニューは夏場の提供が難しかったが、豆腐やじゃがいも等を使った冷菜を季節問わずに提供できるようになった。献立の幅が広がった分、栄養バランスを一層向上できた」と喜びを語った。
真空冷却した食材は味、色味、食感などへの影響は限りなく少ない。素材の旨味が詰まった水分がほどよく残ることも特長だ。給食メニューで人気のポテトサラダは、真空冷却機導入後ホクホク感が増し「更においしくなり、児童からのリクエストも増えてとてもうれしい」と語った。
同村は市内から遠隔地にあるため食材の輸送コストが多くかかるうえ、食材の安定的な仕入ルートを作りにくいなどの課題があるという。
そのようななかで、おいしい給食を安定して提供するために、日々、栄養教諭が栄養面を第一に地場産物を積極的に活用しながら、メニューを考え、児童生徒への食育の推進に取り組んでいる。
同機の導入で調理可能なメニューが増えたため、給食を生きた教材として活用し、さらに食育を充実させたいと意欲的だった。
◇ ◇ ◇
真空冷却機「THRD‐20LC」の詳細はこちら
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年7月21日号掲載